久保嘉男デザイナーによる「ヨシオクボ(YOSHIOKUBO)」は3月17日、2025-26年秋冬コレクションを日本最古の遊園地である「浅草花やしき」で発表した。前シーズンはブランド20周年で吉本新喜劇とコラボレーションし、「おもろいショー」を追求。まるで久保デザイナーの集大成のような気合いの入りようだったが、今回のショーでは「おもろい」をあっさり更新してしまった。
トリッキーな“傑作”の数々
会場にはスワンが点在し、メリーゴーランドがイルミネーションを点滅させながら回転するレトロなムード。入り組んだランウエイに登場したのは、「ヨシオクボ」最新の“超絶技巧”を詰め込んだウエアの数々だ。“傑作”というテーマのもとで披露したのは、細かなギャザーが胸元とアーム部分を装飾するシャツや、テーラードジャケットに異素材のメッシュベストをレイヤードしたトップス、ひねったようにボタンを走らせたアシンメトリーのキルティングベスト、大小さまざまかつ見た目も多様なメッシュポケットをあちこちに配したボンバージャケットなど。
直線と曲線が入り組んだパターンワークをさらに際立てたのが、多彩な素材使いだ。自他ともに認める化繊好きの久保デザイナーは、光を受けて輝いたり、透けるほど薄かったりするナイロンや、ヨットの帆に用いるポリエステル、レザーとビニールの中間のように光沢を放つファブリックなど、軽やかなテキスタイルと重やかな加工生地を自在に組み合わせた。
「いかついやつ作らないと」
「ヨシオクボ」の真骨頂とも言うべき複雑な衣服の構造について、久保デザイナーは「20年間、究極のパターンやテクニックをどう作るか?を追求してきた。僕がやらないといけないのは誰も思いつかない、誰にもレシピが分からない凝った服を作ること」と話す。
久保デザイナーは、ゲストを驚かせるためにデザインのあらゆる可能性を探求する。雪山で男性がスノーボードをする緻密な柄をジャカード織りで表現したり、男性モデルの背中からはみ出るほど巨大なヤク型のバックパックを3カ月かけて制作したりし、「いかついやつ作らないとおもんないから」と笑う。
フィナーレにはジェットコースターに乗って観客の頭上に現れ、「ありがとうございました〜」と叫びながら手を振った。