ファッション
特集 ミラノ・コレクション2025-26年秋冬

「ディースクエアード」は“やり過ぎ”で逮捕! リアルなロマンティックブランドを発見 25-26年秋冬ミラノ日記Vol.1

2025-26年秋冬ミラノ・ファッション・ウィークが現地時間の2月25日に開幕しました。初日からサバト・デ・サルノ(Sabato De Sarno)=元クリエイティブ・ディレクターが去ったばかりの「グッチ(GUCCI)」や、30周年を迎えた 「ディースクエアード(DSQUARED2)」などがショーを開催。フルスロットで取材スタートです。

デザインチーム体制の「グッチ」で開幕

村上要編集長(以下、村上):2025-26年秋冬のミラノ・ファッション・ウイークは、「グッチ(GUCCI)」から。デザインチーム体制のコレクションについては、こちらをご覧ください。

「マックス アンド コー」の
ユーモラスなメッセージにほっこり

木村和花記者(以下、木村):私はその間、「マックス アンド コー(MAX&CO.)」とアーティストのピエトロ・テルツィーニ(Pietro Terzini)とのコラボ・カプセルコレクションの展示会へ。テルツィーニはミラノを拠点に活動するイタリア人アーティストで、ユーモラスかつ鋭いキャッチーフレーズを用いた作品で知られています。同ブランドとのコラボは2024年に続く2回目です。

1990年代生まれの彼はMTV世代で、若い頃はヒップホップカルチャーの中で育ったそう。今回のコレクションは、そんな彼のルーツに立ち返り、アメカジアイテムで構成しました。“I’D RATHER STAY HOME(むしろ家にいたい)“と書いたフーディー、“I WAS RIGHT(私は正しかったでしょう)”と記したTシャツ、“NOT TODAY(今日は無理)”と書かれたチビTなどなど、アイテムとフレーズの組み合わせが秀逸です。

テルツィーニに聞くと、こうしたフレーズは、彼が日々人間観察をする中で思いつくと言います。「周りの人の会話を聞いていると、みんな似たような悩みを持っていることに気付く。どうやったら少ない言葉で、みんなが抱える共通問題や気持ちに寄り添うことができるかを考えるんだ」とテルティーニ。

今回は、「マックス アンド コー」のチームとより密にコミュニケーションを取りながら、みんなでフレーズを考えて作り上げたそう。着る人にどんな気持ちになってほしいか聞くと、「人生いろいろあるけど、心配しすぎないで、気楽に生きようよと伝えたい」と語ってくれました。ちなみに彼のお気に入りは、“I HOPE YOUR EMAIL WON’T FIND ME(あなたのメールが私に届かないことを祈ります)”のピンストライプスーツだそうです。どこに行っても仕事のメールに追われ続けてうんざりしちゃう時、きっとみんなありますからね。

「アイスバーグ」はストリートスタイルを封印か?

木村:アイスバーグ(ICEBERG)」は、久しぶりにミラノの公式スケジュールでショーを開催。同ブランドはサンフレールが取り扱いを開始し、これから日本での知名度を復活させようというフェーズですね。

会場には同ブランドのクロップド丈のロゴニットやキャッチーなキャラクターをプリントしたブルゾンにローウエストのデニムといった、イタリアらしいストリートスタイルの若者たちが集まっていました。今回のコレクションもきっとポップなY2Kだろうと予想ていましたが、登場したのはグレーのニットワンピースやハンサムなスラックスに合わせるニットトップ、ボーダーのオーバーサイズカーディガン、ロングコートといった落ち着いた印象。柄もボーダーとチェック柄といった、秋冬の日常着コレクションでした。

「リボンが大きくなっちゃった!」ら
可愛さと強さが同居した「N21」

村上:大体のことを「え⁉︎別に」とか、「え、知らんし」で片付けられる女の子というイメージを勝手に持っている「ヌメロ ヴェントゥーノ(N21)」は今回、リボンがキーポイントですね。本人曰く、テーマは「侵食するリボン」。最初はバックストラップのパンプスにあしらっていたくらいのリボンが、だんだん大きくなって、結ぶから面白いドレープが生まれることまで楽しみました。マギー審司さん「おっきくなっちゃったー!」って言って欲しいくらいの大きさです(笑)。

リボンはベアトップのドレスには胸元に、スカートなら“おはしょり“のように、ドカン!とあしらいます。「大きすぎない?」とか「邪魔じゃない?」と聞かれたら、「え、別に」って答えてくれそう(笑)。「カワイイディテールが好きだから、それを思いっきり楽しんで何が悪いの⁉︎」という、可愛らしさと自分を貫く強さの双方を感じます。

そしてこのあたりから、英国調を筆頭に、シャギーな素材感、オーバーサイズのアウターとしてのカーディガン、ファーコートなど、2025-26年秋冬のトレンドも気になってきました。

新生「フェレッティ」はリアルな
オケージョンウエア

木村:アルベルタ フェレッティ(ALBERTA FERRETTI)」は、創業デザイナーの後任のロレンツォ・セラフィニ(Lorenzo Serafini)によるデビューショーです。コレクションタイトルは、「Progressive Romantics」。訳すなら「漸進するロマンチック」でしょうか。

タイトルの通り、セラフィニが提案するドレスは、「ロマンチック」を現代的に解釈した、とてもリアリティーのあるオケージョンウエアです。細かなプリーツが入った透け感のあるキャミソールドレスは、甘くロマンチック。上に羽織ったブラックのオーバーサイズコートで辛さが加わります。ふくらはぎあたり丈感のドレスにスリッポンも意外性があり、これまでのドレスアップスタイルを更新しています。ティアードのミニドレスとシアーなロングパンツの合わせ、体に沿うコンパクトなトップ部分に対して裾にかけてボリュームを持たせたドレスなど、エアリーなだけでは終わらせないバランス感覚が冴えています。白地のサテンドレスに黒い花のアートをプリントしたハイネックのワンピースは、モード感も兼ね備えています。

ショー後はわれわれ口をそろえて、「この人、センスいい!」でしたね。

村上:創業デザイナー、アルベルタ・フェレッティの母親は、ドレスメーカーだったんです。そのせいか彼女が生み出すレースやチュールをたっぷり使ったコレクションは、優雅だけど贅沢過ぎて、日本人には「どこに着ていけば?」という印象でした。時々ミリタリーやワーク、ボヘミアンなテイストを加えるけれど、それもまた唐突だったり、トレンドに流されていたイメージです。

でもロレンツォは引き算が上手。結果、日本人にも「着るシーン、あるかも⁉︎」と思わせるようなスタイルがありましたね。シフォンのドレスは片方のストラップをフリフリに、カシュクールニットも前合わせに同素材のニットを飾って、それぞれコサージュで彩っているようでした。個人的ベストは、淡いピンクのベロアのドレス。スパゲティストラップですごくシンプルなのに、素材に洗いをかけたのか、体を優しく撫でる上に可憐なだけじゃ終わらない印象でした。ヘリンボーンのラップジャケットと同素材のスカートのように、もっと短丈のアイテムを見てみたいですね。

30周年の「ディースクエアード」は
なんでも“やり過ぎ“でデザイナー逮捕⁉︎

村上:「ディースクエアード(DSQUARED2)」は、30周年を祝う2025-26年秋冬メンズ&ウィメンズ・コレクションでしたね。このブランドのクリエイションは、大別して2つ。まず1つは、生まれ育ったカナダの自然にインスパイアされたアウトドアスタイル。そしてもう1つは、なんでもセクシーかつゴージャスに昇華したロックなスタイル。30周年の記念コレクションは後者を選びながら、「やり過ぎ!」と笑い飛ばしたくなるほどセクシー&ゴジャース“てんこ盛り“に仕上げました。

例えば、従前から大きなMA-1は“デカ過ぎる“し、そんなアウターにあしらったファーのトリミングも“大き過ぎる“。インナーはと言えば、タンクトップは胸元を“えぐり過ぎて“るからおっぱいが見えそう。デニムはクリスタルの装飾で“ピカピカ過ぎる“し、フレアシルエットは“膨らみすぎる“うえ、時にはお尻が“見え過ぎる“。カフタンのようなドレスはサイドラインを縫い合わせていないから横から覗けば確実に裸が見えて“セクシー過ぎる“し、メンズ&ウィメンズで連発したクリスタルのプラットフォームブーツは“高過ぎ“です。バッグのフリンジは“長すぎる“し、そして、そんな洋服やアイテムを纏ったモデルたちは“キメ過ぎ“で、皆ランウエイの中央でポーズをとりながら、時にはクルッと回ってみたり、ローラーブレードで爆走したり、観客に歓声を求めたりと“楽し過ぎる“。そんな人たちを本来なら取り締まるはずの警官は、パテントレザーの制服で“フェティッシュ過ぎる“(笑)。改めて「ディースクエアード」とは、自己表現の楽しさを提供してくれるブランドなんだと体感したコレクションでした。

木村:会場はニューヨークのクラブ街をイメージ。そこにモデルを乗せた車が次々と登場するという演出でした。車を降りたモデルは、「私が一番セクシーに決まっているでしょ」と言わんばかりに、広い会場を歩き、周りのモデルたちが煽りまくる。「自分って最高!」なアティチュードを共有するコミュニティーこそ、同ブランドを象徴するのだと受け取りました。

そして最後にパトカーに乗って出てきたのは、手錠をかけられたデザイナーのディーン・ケイティン(Dean Caten)とダン・ケイティン(Dan Caten)兄弟。ちょっとやり過ぎちゃった自覚があったのかもしれませんね(笑)。フィナーレはグラミー賞受賞したばかりのラッパーのドーチやJTによるパフォーマンスで、大盛り上がりでした。

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