
2025-26年秋冬シーズンのミラノは、装飾主義が広がりを欠き、クワイエット・ラグジュアリーの流れが底堅く、洗練された美しさを追求している。シルエットは、オーバーサイズ一辺倒からシャープなラインが復活の兆し。新鮮さを演出するのは、柔らかな動きを生むアイテムで、直線的なフォルムと流れるような曲線の対比を際立たせるアプローチだ。ウールとサテンといった異なる質感の組み合わせ、首元に垂れるケープ、大胆なフリンジのアクセントが目立つ。ブラックやグレーといった単色で統一したスタイリングも、素材の質感の違いを強調し、奥行きを生み出している。(この記事は「WWDJAPAN」2025年3月17日号からの抜粋です)
「フェラガモ(FERRAGAMO)」
DESIGNER/マクシミリアン・デイヴィス(Maximilian Davis)
バレエダンサー、ピナ・バウシュ(Pina Bausch)の装いに着想を得た。装飾を排したボディースーツに羽織るテーラードジャケットやコートは、ジャージー仕立て。温かみのある柔らかな素材を用いた、マスキュリンとコンフォートが共存するバランス感覚が現代的だ。単色で統一したスタイリングには、サテンで艶やかな質感を加え、動きを取り入れた。ランウエイに敷き詰めた真紅の花びらがロマンチックに舞い、ミニマルな洗練美をより一層際立たせた。
「ジル サンダー(JIL SANDER)」
DESIGNER/ルーシー&ルーク・メイヤー(Lucie & Luke Meier)
ルーシー&ルーク・メイヤーによる最後のショーは、異素材の組み合わせときらびやかな装飾で、闇の中から希望の光を見いだすメッセージを表現した。ダークトーンのルックに映えるのは、流れるようなシルクサテンのドレープ。さらに長いスパンコールやフェザー、スタッズを施したアクセサリーが、生き生きとした輝きを添える。グラデーションを描く繊細な小花柄は、闇から照らし出されるように浮かび上がらせ、詩的なムードを演出した。
「トッズ(TOD'S)」
DESIGNER/マッテオ・タンブリーニ(Matteo Tamburini)
ロング&リーンのシルエットを中心に、ソフトな素材使いでメゾンの職人技を際立たせた。上質なレザーがドレープを描くトレンチコートが象徴的だ。ボディーラインにフィットするチューブトップのワンピースは、スカート部分のレザーが緩やかなバルーン状に。ミリタリー調のコートには、レザーのトリムをアクセントに加えたケープを重ねて動きを出した。
「エムエム6 メゾン マルジェラ(MM6 MAISON MARGIELA)」
DESIGNER/デザインチーム
ブラウン、グレー、ブラックの落ち着いたパレットを土台にした定番アイテム群は、不均衡なシルエットで違和感を残す。テーマは「拡張」と「縮小」。コートの背面に生地を足したり、ポロシャツに中綿を詰めたりしてウエアを「拡張」。または極端なパワーショルダーで、体のラインそのものを変化させた。ドレスはメッシュニットに生地を押し込むようにして「縮小」し、定番アイテムの見慣れないフォルムを成形した。