TOKYO BASEは、「グローバル旗艦店」と位置付けるインバウンド向け業態「ステュディオス トウキョウ(STUDIOS TOKYO)」の日本初となる店舗と、スーベニアショップの新業態「グッド エディッション(GOOD EDITION)」の1号店を、「ステュディオス(STUDIOUS)」原宿本店の向かいに3月1日にオープンする。
神宮前4丁目の一角には「ステュディオス」からカジュアルブランドを切り出した「ステュディオス セカンド(STUDIOS 2nd)」、ストリートブランドを集めた「ステュディオス サード(STUDIOS 3rd)」、ウィメンズ業態「ステュディオス ウィメンズ(STUDIOS WOMENS)」、昨年9月に始動した若年層に向け業態「コンズ(CONZ)」などの路面店が並ぶ。さらに今秋には「コンズ」のウィメンズ業態も出店する計画で、TOKYO BASE の計8店舗が数十メートルの範囲に集結する。谷正人最高経営責任者(CEO)に出店の狙いを聞いた。
「ステュディオス トウキョウ」はインバウンド比率70%を想定
WWD:「ステュディオス トウキョウ」はこれまで中国、香港、ニューヨークと海外での展開に力を入れてきた。今日本で出店する狙いは?
谷正人CEO(以下、谷):「ステュディオス トウキョウ」は、「ヨウジヤマモト(YOHJI YAMAMOTO)」や「アンダーカバー(UNDERCOVER)」など、日本が誇る老舗ブランドをセレクトしてきた。結果、海外での「ステュディオス トウキョウ」は30〜40代の富裕層に売れている。この層により響く商品を原宿でも強化しようと考えた。現在、原宿地域の店舗において、インバウンド比率は40〜50%程度。今回オープンする「ステュディオス トウキョウ」においては70%を想定する。
WWD:具体的にどのような商品ラインアップになる?
谷:世界で戦う日本ブランドのチャンピオンリーグのようなイメージ。「ヨウジヤマモト」や「アンダーカバー」「ホワイトマウンテニアリング(WHITE MOUNTAINEERING)」といった厳選した約10ブランドを並べる。バイイングは、海外の店舗を担当するチームに任せる。日本客向けの店舗は客層を思い浮かべながらセレクトする“マーケットイン“の考え方が軸だが、訪日客向けにはスタッフの見せたい商品に重きを置いた“プロダクトアウト型“で勝負する。店舗スタッフも中国語か英語が必ず話せる人員をそろえた。
WWD:TOKYO BASEはLINEを使った接客などをいち早く取り入れてきた。そうした接客で訪日客の顧客化も進んでいる?
谷:当社がLINEによる接客を始めた当時は、驚かれることもあったが、地方の店では当たり前に行われてきたこと。 そうしたスタッフとお客さまの強いつながりがあったからこそコロナ禍でも業績を大きく落とさずに済んだ。訪日客に対してもその接客スタイルは変わらず、ウィーチャット(微信、WeChat)などの海外アプリを使って顧客管理を徹底している。スタッフがお客さまのクローゼットの中身を把握した上で、より踏み込んだスタイリング提案などができている。
WWD:スーベニアショップ「グッドエディッション」の狙いは?
谷:日本ブランドのスニーカーやバッグ、アクセサリーといったファッション雑貨を中心にそろえる。大事にしているのは、東京らしさ。さまざまな年代や文化、テイストの入り混じったいい意味でカオスな品ぞろえにこだわる。仕入れブランドの中で小物が充実していても、服が主軸の既存の業態では扱えないことも多々あった。主な狙いは訪日客だが、東京に旅行に来た人や友人にプレゼントを探しに来た人などにも楽しんでもらえるはず。ターゲット層をあえて絞らず、間口を広げる役割もある。6月には京都にも出店予定だ。
創業地は売上高1億円から20億円稼ぐ場所に
WWD:「ステュディオス」原宿本店の通りには7店舗固めた理由は?
谷:参考にしているのは、地方の店。地方の面白い店は、普通の商店街にどんどんドミナント出店して、そこだけファッション好きが集まるような場所に変えてしまう。僕たちも世界の地方店のような感覚で、原宿でそれを体現したい。
WWD:路面店出店はリスクも大きい。
谷:自らの退路を断つ意味が大きい。それだけの意気込みを持って出店している。加えて僕たちが大事にしている、マニュアルではない人間味のある接客は路面店の方が生きてくる。社内的にもさまざまなメリットがある。路面店は離職率が圧倒的に低く、人材が育つ傾向にある。商業施設の中の店舗に比べて営業時間が短く、朝から晩まで同じチーム体制で運営できることも大きいだろう。近くに同じ条件で戦う同僚の店があることで、競争原理がうまく働いている。
WWD:原宿にこだわる理由は?
谷:僕は大学進学を機に静岡県の浜松から上京した。そのときの原宿の衝撃がやっぱり忘れない。藤原ヒロシさんやNIGO®さんたちが作っていた裏原のコミュニティーがファッションを好きになったきっかけで、ストリートから生まれるファッションのかっこよさに感化された。以来、僕にとって原宿は特別な場所。原宿で商売を始めて20年近く経つが、これからもファッションやカルチャーが生まれる街としての原宿の発信力は廃れないと信じている。
「ステュディオス」が今の場所に1号店を出したのは、2007年4月。当時自分はバイイングや店長も務めながら、看板を持って外に出て、汗だくになりながら客の呼び込みもやっていた。原宿店の営業が終わった後に、スタッフみんなに「この通りをうちの店舗で全部埋めてやるから」と冗談のつもりで話していた。当時の売り上げは頑張って年間1億円。それが今や原宿本店だけで4億円を売る店になった。周辺の店舗も合わせればこれから20億円を超えていく。もちろん本気で全部埋めるにはまだまだ時間がかかるが、あのときの言霊があるから、挑戦を続ける使命感がある。