ファッション
連載 齊藤孝浩の業界のミカタ 第70回

過剰生産にメスを入れ、工場と共存共栄へ シーインの進化を続けるサプライチェーン

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企業が期ごとに発表する決算書には、その企業を知る上で重要な数字やメッセージが記されている。企業分析を続けるプロは、どこに目を付け、そこから何を読み取るのか。この連載では「ユニクロ対ZARA」「アパレル・サバイバル」(共に日本経済新聞出版社)の著者でもある齊藤孝浩ディマンドワークス代表が、企業の決算書やリポートなどを読む際にどこに注目し、どう解釈するかを明かしていく。今回は中国・広州の工場取材で明らかになったシーインのエコシステムを2回に分けて紹介する。(この記事は「WWDJAPAN」2025年2月10日号からの抜粋です。)

1月下旬に中国へ行ってきました。今回は中国・広州でのシーインを取り巻くサプライチェーンの取材についてお話しします。

前回訪れたのは2023年5月。シーインが小ロット短サイクルでできるのはなぜか。それを確かめにシーインの複数の取引先メーカーを取材し、卸市場や素材市場を見に行きました。

そこで分かったのは、シーインは、メーカーが取り組みやすい仕組み作りをしたり、納品状況に対する評価によって支払いを早めたりすることで、小ロット生産を可能にし、リードタイム短縮を実現しているということでした。同じエリアに素材や付属品の在庫を持つ巨大な市場もあるので、原材料調達も即座にできます。低価格ではありますが、シーインはアパレルメーカーのキャッシュフローを助けることによって共存共栄しているというわけです。その時の模様は 連載第50回でまとめています。

それから1年半余り。今、中国を訪れると、リストラや失業の話や、閉まっている店も多く、景気の低迷を感じます。そこで一番耳にしたワードが「出海」、つまり「海外で売る」です。ですから、越境ECにはすごく関心が高かったです。日本のECモールへの出店にも興味があるようでした。

今回はFOB(委託加工)、OEM、ODMを請け負うメーカー2社を取材しました。FOBとは、型紙、生地、デザイン等、全てシーインからの供給のもと、工賃仕事で生産を請け負う取引形態です。前回も取材した企業1社を再度訪れ、比較のために、少し規模の小さい工場も訪問。社長や現場責任者にヒアリングすることで、以前と変わった点を2つ見つけました。

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