「WWDJAPAN」は、ファッション&ビューティ企業やブランドを対象に、それぞれの課題やニーズの解決につながるカスタマイズセミナーを開催している。今回は、大手アパレル企業・ワールドの企画開発に携わる社員に向け、商品力の向上に焦点を当てたセミナーを実施した。
同セミナーのゲストにはなんと、ライバル企業であるTSIのグループ会社・アルページュから野口麻衣子社長を招へい。野口社長は、2020年からTSIの主力婦人服ブランド「ナチュラルビューティベーシック(NATURAL BEAUTY BASIC 以下、NBB)」のリブランディングを主導し、ブランドを再建へと導いている。ワールドもキャリア向けブランドを多く抱えるため、学べることが多いと見込んでの大胆な人選だ。
オフィスカジュアル服を提案してきた「NBB」は、働く女性の服装の変化に伴い、ブランドの立て直しを迫られた。野口社長は「“キャリアブランド”を再定義する必要があった。“通勤着”の固定観念を壊し、メインターゲットである20〜30代に響くよう仕掛けていった」と振り返る。とはいえ、20年以上続くブランドのため、頭ごなしに方向性を変えても良い結果は望めない。「今までのビジネスを生かしつつ、時代に合わせたブランドにアップデートする。それが私の使命だった」。
組織改革や重要店舗の見直し、ECサイトで使用するビジュアルの刷新などを行っていく中で、やはり一番の課題は商品だった。「当時の『NBB』は、前年踏襲型のデザインが多く、『この商品を作り続けなければいけない』という思い込みがあった。しかし、企画に必要なのは“マスト”より“ウォント”。『私はこれを着たい』という等身大の感覚が、売れる服を作る原動力になる」(野口社長)。一方、商品の大幅な軌道修正は既存顧客の離反を招くリスクもあったはずだ。野口社長は、「定番アイテムを進化させる感覚で、シルエットやカラー展開に少しずつバリエーションを加えていった。このさじ加減は、5%くらいがベスト。そうすれば長年のファンを驚かせず、今リアルに着たいデザインになる」と語る。長年そのままだった着丈や身幅など寸法も細かく見直し、徹底的に“欲しい服”作りに向き合った。国内のウィメンズブランドを取材する本橋涼介「WWDJAPAN」シニアエディターは「『NBB』の成功要因は、社内外に目指すブランドの方向性をはっきりさせたこと。社員にも顧客に対しても丁寧なリブランディングだった」と述べた。
セミナーの後には、社員同士でディスカッションを実施。「前年踏襲型のデザインとの向き合い方を見直したい」「『私だったら』という視点を入れ商品企画していきたい」などセミナーからの学びを話し合った。野口社長は「歴史ある会社が存続できるよう、ときに新しいことにも挑戦しなければならない。第一人者になるのは難しいかもしれないが、賛同者であってほしい」とエールを送った。
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