ファッション

トレンドの宝庫「アットコスメトーキョー」を視察!トレンドの見つけ方を探る

「WWDJAPAN」は10月、2日間にわたりワークショップ「トレンドの見つけ方講座」を開催した。1日目は、村上要「WWDJAPAN」編集長がファッションショーを題材に、社会とファッションの関係性やファッションショーの読み解き方を解説した。2日目は、昨今のビューティトレンドの振り返りとトレンドのキャッチ術を伝授。さらに、「アットコスメトーキョー(@cosme TOKYO)」の店舗視察で得た気付きをディスカッションした。

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視聴期限:2025年11月28日(金)23:59 まで
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1限目
ネクストトレンドの宝庫、ファッションショーの読み解き方
デザイナーの「問いかけ」を受け止めよう

1限目は村上編集長が登壇し、今の時代を読み解くためのファッションショーのひもとき方を伝授した。村上編集長は自身のバックグラウンドと経験から「社会はファッションを変え、ファッションは社会を変えうる」と考えている。その事例として、「景気が悪くなるとニューバランスが売れる」という通説、2008年のリーマンショックがクリエイションの起点になった5カ月後の「ボッテガ・ヴェネタ(BOTTEGA VENETA)」09-10年秋冬メンズ・コレクションを紹介した。このシーズンの「ボッテガ・ヴェネタ」はオーバーサイズやコクーンシルエットを基調に、ジャージーとニットを多用したコレクションを発表。当時のクリエイティブ・ディレクターだったトーマス・マイヤー(Tomas Maier)は、リーマンショックを経てストレスフルな日々を過ごす顧客に自分たちが何を提供すべきか思考した結果、安心感を与える着心地の良いシルエットや素材の選択につながったと話したという。トーマス・マイヤーが打ち出したスタイルは共感を呼んでマーケットに広がり、「メンズファッションのオンオフが曖昧になるなど、社会が変化していくきっかけとなった」と村上編集長は振り返る。

また、「ファッションショーは、デザイナーから社会への問いかけである」(村上編集長)とし、その代表格として18年に黒人として初めて「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」のメンズ・アーティスティック・ディレクターに就任したヴァージル・アブロー(Virgil Abloh)を紹介した。彼は、ガーナ系の移民で黒人というバックグラウンドからマイノリティであることを意識してファッション業界でキャリアを歩んでいた。そんな彼による初の「ルイ・ヴィトン」、19年春夏メンズを題材に、彼のダイバーシティやインクルージョンという主張がどう表現されているかを解説した。「招待客に序列をつけたくないという考えから、長いランウエイを用意して全員を1列目に案内した」など、服やモデル、会場、来場者といった要素からひもといた。

改めて、トレンドとは「デザイナーやブランドがショーを通して社会に投げかけるものの共通点である」と村上編集長は総括。村上編集長が25年春夏のミラノ、パリ・コレクションで見つけた共通点を列挙し、傾向を解説した。近年は、一つのトレンドが絶大な影響力を持つことは少なくなり、あらゆる場所でさまざまなトレンドが局地的に発生している流れにも言及。トレンドが伝播する流れを説明し、トレンドが流行る理由や流行らない理由を想像してビジネスへの影響を考える重要性を伝えた。

2限目
注目ブランドのファッションショーを一緒にチェック
アナタは「問いかけ」を受け止められる?

1限目の実践編として、2限目はファッションショーを鑑賞してデザイナーの問いかけを読み解く練習をした。題材は、22年リゾートの「グッチ(GUCCI)」と25年春夏の「プラダ(PRADA)」。コレクションが開かれた会場や当時の世界情勢、デザイナーの思想などの説明を踏まえ、ショーを鑑賞した。「グッチ」に対して、ある参加者は「戦争に対するアンチテーゼを表現していると感じた。服のモチーフに多用された星には、『戦争などが起きる暗い状況にも光はある』という思いが込められているのでは?透け素材には、『裸になったら皆、同じ人間』というメッセージが込められていると思う」とコメントした。村上編集長は当時、多くのデザイナーがウクライナ侵攻を憂いてウクライナの国旗をモチーフとして使用したりカーゴパンツをあえて打ち出したりするなどのブランドが散見されたことを添え、参加者の意見に同調。そのほか、象徴的なサングラスに対しては「エイリアンを表現して、地球以外に住む生命体ももはや地球に降り立って我々と変わらないような生活を営んでいるという思いを込めているのでは?」と推測するなど、それぞれの視点から2つのファッションショーをひもといた。

閉店後の「アットコスメトーキョー」を視察

講座終了後、2日目のビューティパートに向けて、「アットコスメトーキョー」を運営するアイスタイルの西原羽衣子リサーチプランナーと原田彩子リサーチプランナーが登壇し、同社の説明や昨今の「アットコスメトーキョー」ベストコスメのランキングから読み取る消費者動向を解説。「1万円を超える通称“諭吉コスメ”が動いたのは、物価高騰などによって財布の紐がキツくなっているからこそ厳選した結果では?」といった分析を共有した。そのような日々のリサーチを活かした店舗設計を体感すべく、閉店後の「アットコスメトーキョー」を視察した。ブランドフォーカスコーナー、データをベースにランキング形式で陳列するコーナー、店頭提案型コーナーなどで構成した店舗を回遊。あえて雑多な雰囲気の店舗を作る理由やカテゴリー配置の意図などを説明した。「国外のブランドはカラー、スキン、ヘアという流れで消費者に受け入れられていく」「一般化した美容医療を想起させる言葉づかいを冠したアイテムが増えた」など、最近の美容トレンドや消費者動向にも言及した。

3限目
社会の変化から生まれるビューティトレンドを読み解く力

DAY2はビューティ会で、3限目は牧田英子「WWDJAPAN」副編集長が登壇。日々参加する新商品発表会と、そこで出合う新商品から「WWDJAPAN」はどのようなビューティトレンドを見出しているのかにフォーカスした。村上編集長と牧田副編集長が着目する社会の変化と、そこから生まれるトレンドを解説。たとえば、女性の半分が50歳以上という状況下で、コロナ禍以降はマット肌から艶肌への回帰が鮮明になっているという。年齢を重ねると、マットは「乾燥が気になる」「シワが目立つ」という声もあり、市場ニーズは「マスクにつかない」から「キレイに仕上がる」に変化。特に国産メーカーは、スキンケアとベースメイクの開発に注力している。さらに、特にマチュア世代から高齢者の間で「ビューティ=健康」という考え方が顕著になり、各社は食品会社などとの業務提携やM&Aを通じて飲食やサプリメントに挑戦している。

また「メノポーズ」という言葉の普及により、さまざまな商品やサービスとともに市場が活性化する兆しをみせている。一方で、若い世代はメンタルヘルスに注目。それに対応するビューティの売り場や商品も登場している。平均寿命と健康寿命には10年ほどの差があり、各社は「ウェルビーイング」という言葉を掲げて新たな商品開発に取り組んでいる。

4限目
クチコミ傾向が示すビューティトレンドと店舗視察発表会

4限目はDAY1にも登壇した、アイスタイルの西原リサーチプランナーと原田リサーチプランナーが再度登壇し、「アットコスメベストアワード 2024 上半期新作ベストコスメ」の結果から読み解くビューティトレンドを解説した。集計対象クチコミ件数が前年比1.07倍だったのに対し、集計対象アイテム数が同1.02倍だったことからは人気商品にクチコミが集中していることがうかがえ、消費者の「買い物で失敗したくない」ニーズが表れていると分析。全体傾向としては上位10商品中7つがスキンケアで、中価格帯はなくプチプラかデパコスの二極化が進んでいることが浮き彫りになった。一方で、「ミドルコスメ」と称する中価格帯コスメのクチコミワード出現傾向は前年比3.6倍と逆襲の兆しも。消費者からは、「価格と品質のバランスが良い」「高級化粧品と似た成分や技術を搭載している化粧品がある」などの評価を得ている。

後半では、DAY1の「アットコスメトーキョー」店舗視察を経てディスカッションを行った。参加者から「“成分推し”や美容医療着想の商品は今やありふれているが、どのように差別化を図っていく?」と問われると西原リサーチプランナーは、「感度の高い層はすでにキャッチしていても、トレンドが一般化するには10年かかるといわれている。若年層はどんどん新商品に目移りしていくが、情報収集力が比較的低い50歳以上に届くまで密度高くやっていかないと市場は形成されない。“成分推し”はエイジングケアとも相性が良いので、高年齢層によりアプローチできると思う」と回答。ビューティトレンドがファッションや社会とどう関わり、交わっているのかについて幅広く考察した。セミナー終了後にはコミュニケーションの場として、登壇者も参加するミートアップを開催した。

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