米国パントン・カラー・インスティテュート(PANTONE COLOR INSTITUTE)が発表した2025年の色は、暖かみを帯びたブラウン“モカ・ムース(Mocha Mousse : Pantone 17-1230)”でしたが、日本流行色協会(JAFCA)は25年の色に“ホライゾングリーン(Horizon Green)”を選びました。24年の少しさめた青“ハロー!ブルー”より緑が強まった類似色です。今回は、国内ブランドの25年春夏コレクションから、“ホライゾングリーン”に近い色のルックをご案内します。
青みを帯びた濃いグリーンには、深い森の樹木、豊かな海など自然を重んじる意識がうかがえます。一方、ブルーに託されたのは、“混沌とした時代を冷静に読むまなざし”や、その先にある“希望”のイメージ。“ホライゾングリーン”は海、空、森などを連想しやすい色だけに、装いにナチュラルさを盛り込めるメリットがありそうです。冷静さや知性的な印象を与えられるので、オフィスルックにも役立つ期待が持てます。
濃いブルーやグリーンは一見扱いが難しそうに見えますが、トーンを落としてアレンジすれば取り入れやすいです。例えば、「マメ クロゴウチ(MAME KUROGOUCHI)」がその好例。クチュールテイストのニットジャケットが涼やかな印象の一方、ドレープたっぷりの白いチュールを重ねたスカートでフェアリーさもまとわせました。
凜々しさを優しくトーンダウン
ブルー&グリーン系のカラーは、ボリュームをスッキリ見せる効果があります。布のボリュームが多いウエアでも、ライトブルーやグリーンと交わらせれば、重く見えません。タフさやマニッシュさをやわらげる効果も期待できます。
「ミューラル(MURRAL)」は、布を贅沢に使ったロングコートドレスを披露しました。トレンチ風の凜々しさを、淡いグリーンが優しくトーンダウンさせています。おそろいのショート丈のボトムスとの長短レイヤードでめりはりあるスタイリングに。フレアスカートのようなシルエットも、強さとたおやかさを好バランスに整えています。
アートモチーフが引き立つ洗練さ
“ホライゾングリーン”は空や海に通じる色合いだけに、ダイナミックな柄との組み合わせにも向いています。ナチュラルムードのブルーやグリーンは、大胆なモチーフも穏やかに受け止めてくれそうです。
「テルマ(TELMA)」は、コートドレスに水彩画のようなフラワーモチーフをあしらいました。爽やかなグリーントーンがナチュラルな雰囲気を醸し出す一方、アートモチーフも引き立てる色合いです。両袖の内側を白で切り替えたスタイリッシュな縦長シルエットが、大人のムードを演出。アートをまとった洗練された装いです。
黒とのコンビで気品とリュクスが両立
クールな雰囲気や上品なテイストを薫らせやすいのもこの色のよさです。シックな黒とも好相性。バイカラーでまとえば、パーティーシーンにもなじみます。
「タエ アシダ(TAE ASHIDA)」は、流れ落ちるような仕立てのドレス全体に、きらきらのスパンコールをちりばめました。グリーンとグリッターが調和した“グリ×グリ”のたたずまい。裾にはフリンジを配して動きを高めています。所々に取り入れた黒が、グリーンを引き立てる効果を発揮。気品とリュクスが同居する装いに整いました。
涼やかなサマーレイヤード
シアー素材と組み合わせると、涼やかな空気が漂います。人気が続くバレエコアやサマーレイヤードにもマッチ。カラートーンをずらして重層的に見せるスタイリングが効果的です。
薄手ニットウエアの重ね着を打ち出したのは「ピリングス(PILLINGS)」。シアーニットとハイゲージニットのレイヤードによるグリーンの濃淡で、奥行きを深めました。落ち感を帯びたエフォートレスなシルエットが羽衣のようにはかなげで、繊細な風情を醸し出しています。
セットアップで凜々しさ倍増
強さや二面性を秘めた装いが、トレンドに浮上してきました。クールな印象のブルー&グリーン系は、セットアップで着ると凜々しさがアップします。
「ディウカ(DIVKA)」は、ほんのりスモーキーがかったブルー&グリーンカラーののノースリーブセットアップを披露。ハーレムパンツ風のドレープパンツが優雅なシルエットを描いています。トップスとの組み合わせはオールインワンのような見え具合で、冷ややかな色合いがクールな印象を引き立てています。
“ホライゾングリーン”は、色調や濃淡次第できれいめにも凛とした印象にもアレンジしやすいユーティリティーカラーです。着こなしのポイントは、素材の組み合わせ。シアー素材は着心地面でもメリット大。今回紹介した日本ブランドは、いずれもテキスタイルに定評があり、素材感の良さが色の持ち味を一段と引き立てています。6つの先取りルックを参考に、“ホライゾングリーン”を自分好みに取り入れてみてください。