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マイケル・コースのCEO、親会社の買収に関する裁判で“正直すぎる”発言を連発

現在、「コーチ(COACH)」「ケイト・スペード ニューヨーク(KATE SPADE NEW YORK)」「スチュアート・ワイツマン(STUART WEITZMAN)」を傘下に持つタペストリー(TAPESTRY)による、「マイケル・コース(MICHAEL KORS)」「ヴェルサーチェ(VERSACE)」「ジミー チュウ(JIMMY CHOO)」の親会社カプリ ホールディングス(CAPRI HOLDINGS以下、カプリ)の買収に関する裁判が進行中だ。結論が出るのはまだ先のことと思われるが、裁判の過程で詳らかになったカプリや「マイケル・コース」の実情が、業界関係者の間で話題となっている。

タペストリーは2023年8月、カプリを85億ドル(約1兆2155億円)で買収することに合意。24年末までに取引が完了する予定だったが、両社が保有するブランド間の競争がなくなることで独占状態になるとし、米連邦取引委員会(FTC)は本件を停止する仮処分を求めて4月に提訴した。9月9日に開廷した同裁判では、“アクセシブル ラグジュアリー(Accessible luxury)”市場の独占に関する懸念が大きな争点となっており、これまでにジョン・アイドル(John Idol)=カプリ会長兼最高経営責任者(CEO)や、ジョアン・クレヴォイセラ(Joanne Crevoiserat)=タペストリーCEOらが出廷している。

マイケル・コースのCEOによる赤裸々な証言

しかし、業界や市場関係者の耳目を最も集めたのは、12日に出廷したセドリック・ウィルモット(Cedric Wilmotte)=マイケル・コースCEOの証言だろう。

22年3月に退任したジョシュア・シュルマン(Joshua Schulman)前CEO(現バーバリーCEO)の後任として、23年4月にヴェルサーチェの最高執行責任者から現職に就いたウィルモットCEOは、「『マイケル・コース』は、当時から苦境に陥っていた」とコメント。法廷には、同氏が妻に送付したメールが提出されたが、そこには「(カプリと『マイケル・コース』の)米国市場は悲惨な状態だが、これは全て“JI”が売り上げを伸ばそうとして値引きばかりして、ブランド強化に力を入れないせいだ」と歯に衣を着せぬ文言が並ぶ。この“JI”は、アイドル会長兼CEOを指しているという。

なお、カプリの24年3月期決算は、売上高が前期比8.0%減の51億7000万ドル(約7393億円)、営業損益は前年の6億7900万ドル(約970億円)の黒字から2億4100万ドル(約344億円)の赤字に、純損益も6億1900万ドル(約885億円)の黒字から2億2900万ドル(約327億円)の赤字となっている。ブランド別に見ると、特にアジア太平洋地域や南北アメリカで不調だった「マイケル・コース」の売上高は同9.2%減の35億2200万ドル(約5036億円)だった。

マイケル・コースの業績悪化の要因とは?

法廷には、さまざまな内部資料も提出された。それには、マイケル・コースの業績悪化の要因として、値引きによるブランド毀損、希少性の低さ、類似した価格帯のブランドとの熾烈な競争、二次流通市場の隆盛に加えて、店舗のリニューアルを怠ったことによる“時代遅れ感”、「マイケル・コース コレクション(MICHAEL KORS COLLECTION)」と「マイケル マイケル・コース(MICHAEL MICHAEL KORS)」の差別化不足、社員やスタッフの間に徒労感が蔓延している恐れがあることなど、数多くの問題点が挙げられている。

こうした事態を受け、ウィルモットCEOは、「マイケル・コース」のリブランディング、デザインや商品開発の強化、店舗のリニューアル、“手が届く価格帯”の中での高級化、“どこでも売っている”状況を脱するための販売網の見直しなどの戦略を打ち出したが、「実行できているとは言い難い」と説明。「設備投資やマーケティングの予算が大幅にカットされたこともあり、多くの施策が停滞している。当社の変革は、タペストリーに委ねたほうがいいように思う。消費者のデータ分析など、さまざまな面で彼らは私たちの何光年も先を行っている」と心情を吐露した。

今回の証言が裁判の行方に与える影響は未知数だが、9月30日(現地時間)に本セクションの最終弁論が行われる予定だ。

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