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α・Z世代男子の「脱毛意識」 スキンケア以上に悩みは深い!? 

α・Z世代の男性にスキンケアの話を聞く中で、思いがけず、本題以上に盛り上がったのが「脱毛」に関する話題である。Z世代に限らず、あらゆる世代において「男性心理」の裏側が垣間見えるムダ毛事情。今後拡大が予想される「メンズ脱毛」について考えたい。

近年はサウナの影響も?
男性の間で高まる「脱毛」への関心

仕事柄、友人から美容相談を受ける機会がある。ここ4~5年で目に見えて増えたのが、「思春期の息子がムダ毛に悩んでいて、家庭用脱毛器が知りたい」という相談だ。中学生~高校生の男子は、除毛クリームや剃刀でムダ毛の処理にいそしんでいるというから、最初の頃は驚いてしまった。

「鈴木ハーブ研究所」が20~40代の男性300人に行ったアンケート調査によると、「これまで体毛を処理した経験がある人」は全世代で41%を占め、最も多い20代は半数超えの54%だった。「体毛を処理する際に気にするポイント」としては「家庭で気軽にできること」が圧倒的1位を占め、全世代の49.6%、20代では実に61.1%が家庭で気軽にできることを重視していた。

「ヤーマン(YA-MAN)」の島田京代 ブランド戦略本部PR担当によると、「ここ数年家庭用の光美容器への関心が高まっています。現在、当社で人気があるのはパワーが強く、処理スピードが早い『高機能な機種』です。Z世代の美肌志向・美容意識の高まりに加え、テレワークの浸透やサウナの流行もあって、ムダ毛を意識する男性が増えているのかもしれません」と話す。

光美容器に限らずではあるが、「ヤーマン」の顧客の一定数は男性が占めているという。2018年に登場した“メディリフト”シリーズは約20%、最新の“レイボーテ”シリーズは約30%が男性の顧客だ。

Z世代男子が語る「ムダ毛意識」とリアルな脱毛事情

脱毛に関して20代前半のZ世代男子はどう感じているのだろうか。スキンケアの取材中に盛り上がった内容を紹介したい。

登場するのは前回と同じく、一般企業の営業職のウタさん(23歳、学生時代は特別ファッションや美容に関心なし)、一般企業のリサーチ部門に所属する二郎さん(23歳、学生時代はファッションサークルで活動)、服飾系の大学に在籍中のヒデキさん(22歳、ファッションにも美容にも関心が高い)という、美容に対して感度の異なる3人である。

ウタ:僕はスキンケアより、断然脱毛が気になります。

二郎:僕も興味ある。今は特に何もしてないですけど。

ヒデキ:僕は時々、除毛クリームを使っています。「ムダ毛は一切いらない」と思っているので、たまに家にある脱毛器を使ったりしますね。

―――同世代の友人で、脱毛している人はいる?

ウタ:剃ってる人は、まあまあいますね。3割くらい…?

二郎:半数までいかないけど、います。サウナに行くと「除毛クリーム使ってるな」とか「剃刀のあとが伸びてるな」とか分かるんです。

ヒデキ:同じく半数までいかないけど、一定数います。ヒゲ脱毛している子もいる。

彼らの話を聞いていると「やるか、やらないか」は別にして、同世代の多くが脱毛に関心を持っている様子がうかがえた。スキンケアや美容には一切関心がなく、客観的に「剛毛ではないのでは?」というウタさんが、脱毛に関して言及していたのも印象的だった。

口にはしないけど、潜在的なニーズが大きい「ムダ毛問題」

個人的に驚いたのは、今回「家庭用脱毛器」の使用経験者が3人中2人だったことだ。

ウタ:男性は毛が濃いので、剃ると逆に目立つじゃないですか。だったら脱毛器のほうがいいかなと。でも、結局効果が分らなくてやめてしまった。

二郎:分かる。僕は剛毛なので、脱毛は「やり続けるか、やらないか」の二択。すねはずっと剃ると大変だし不自然だから、脱毛器は興味ある。

ウタ:すねもそうだけど、僕は服で見えない部分が気になるんですよ。お腹とか胸とか、正直他人は気にしないと思う。でも「自分的にすごく嫌」というか……。

ヒデキ:「自分的にすごく嫌」ってあるよね。僕は体毛もヒゲもまばらに生えるのがコンプレックスで、「全部なくしたい」と思うようになった。

二郎:普段こんな話しはしないから知りようもないけど、自分も含めて、実は体毛に悩んでいる男性は多いんじゃないかと思った。

確かに、男性同士でムダ毛について深く語り合う機会は、少ないだろう。実際に言葉にしてみると、非常にパーソナルな美意識に基づいており、部位も悩みの質も個人によってそれぞれ異なる。そしてこの悩みは、年代を問わず、男性が密かに抱えているのではないかと思う。

30代男性の約2割が「ヒゲ脱毛」の経験あり

Z世代の彼らは、レーザー脱毛に関してもとっくにリサーチ済みだった。

ウタ:男性のレーザー脱毛って高いんだよね。

ヒデキ:そうそう、女性は30万円くらいなのに、男性は50万円とか。

ウタ:パーツが細かく分かれて、部位ごとに加算されてく感じ。だったら家庭用脱毛器を試してみようという気になる。

二郎:僕は体毛より「ヒゲ脱毛」に興味があるかな。手間を省きたいし、肌が弱いから剃るより絶対いい。社会人になってボーナスが出たら考えたいなと。

前述の鈴木ハーブ研究所の調査によると「ヒゲ脱毛に興味はありますか」という問いに対して「興味がない」と回答した男性は全世代では53.3%。逆にいうと46.7%は興味を抱いていることになる。

特筆すべきは「ヒゲ脱毛経験のある男性」が、30代で19%にのぼったことだ。可処分所得が増える30代男性のすでに約2割が経験しているということは、今後Z世代が年齢を重ねた時に、ヒゲ脱毛経験者はより増加するのではないだろうか。

クリニックでも増える、若年層の脱毛患者

実際にクリニックに来院する脱毛患者の傾向は変わっているのか。アヴェニュー六本木クリニックの寺島洋一院長は、「男性の脱毛は年々増加傾向にあり、当院では現在若い人が多数を占めます。10代~20代でクリニックに来院する男性は、ムダ毛に対して『清潔感が低下する』『女性からの印象が良くない』と感じているようです」と話す。

まだ成長期であるティーンの頃に、レーザー脱毛をすることに問題はないのだろうか?「医療行為としては問題ありません。皮膚の観点からすると、カミソリや毛抜きを使ってご自身で脱毛するより、肌にダメージを与えにくい面があるでしょう。医療用のレーザー脱毛と、エステや家庭用脱毛器の違いは『照射の出力』です。不可逆的な効果、つまり照射後にムダ毛が生えてこないのは、医療用レーザーのみ。逆にパワーが弱いと『硬毛化』のリスクがあります」。

硬毛化とは、レーザー脱毛時にまれに発生する症状で、体毛がかえって硬く濃く変成してしまうこと。メカニズムはまだよく分かっていないが、医療用のレーザー脱毛を続けることで、最終的には減毛していくという。

ヒゲにおいても体毛においても、根本的な脱毛を希望するなら、やはり医師のもとで行う医療用レーザー脱毛が、安全かつ確実な方法といえそうだ。しかし、費用の面や居住地によっては、近くに通えるクリニックが少ないなど、現時点ではハードルも存在している。

その一方で、中高生の時点ですでに、脱毛に関心を持つ男性が増加しているのは、紛れもない事実。今後Z世代やα世代が年齢を重ねた時に、脱毛や除毛コスメを取り巻く状況はどう変化するだろう? 少なくとも脱毛は、今後メンズ美容を語る上で欠かせない存在であり、間違いなく拡大していくことを実感した取材だった。

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