ファッション

古き良き“町服屋”であの頃にタイムスリップ 京都に“帰る”理由01

かつて月に1度は京都を訪れていた。それが行動制限などもあり、数年も空いてしまった。その期間はSNSがもたらす情報だけが光明で、あれこれ見ていて、“いつか”と思っていた店にようやく行くことができた。まずは、古き良き“町服屋”を紹介しよう。

“なんてことない、だけど飽きない”を伝えるアメリカ衣料品店

1軒目は、京都市東部の山科にある「東(あずま)商店」。京都駅からは電車と徒歩で20分ほど。40〜50代にとって“うちの地元にもこんな店があった!”と思わせる、町のアメリカ衣料品店だ。東健一オーナー(49歳)は脱サラして、2015年に同店をオープンした。山科は東オーナーが生まれ育った土地だ。

店内には「チャンピオン(CHAMPION)」や「ヘインズ(HANES)」の新品のスエットやTシャツ、「エル・エル・ビーン(L.L.BEAN)」「フィルソン(FILSON)」「バーバリアン(BARBARIAN)」などの古着、東オーナーの「中学生のころからの趣味」という釣りにまつわる服や道具が所狭しと並ぶ。「山科にも30年くらい前までは、アメリカ衣料品店が数軒あった」という。

東商店の客層はオーナーと同じ40代男性が中心だが、上は70代まで。一方で高校生も来店し、「アメカジ好きの母親に勧められたそうで、アメリカブランド『プロファイブ(PRO5)』のベースボールシャツを買ってくれた。これからも彼らの頼れる存在でありたい」と話す。

東オーナーの信条は、“自分が着て、良いと思ったものだけを販売する”こと。「僕はもともとファッション業界の人間ではなく、文字通りゼロからのスタートだった。だから、せめて正直に商いしたいと思った。結果として、店には“シンプルでトレンドに流されないもの”が集まった」と述べる。

ちなみにこの日の東オーナーの服装は、「ブルックス ブラザーズ(BROOKS BROTHERS)」のボタンダウンシャツにアメリカブランド「オービス(ORVIS)」の魚柄ネクタイを合わせ、トップスは「J.プレス(J.PRESS)」の紺ブレというアメリカントラッドなもの。同ジャンルも東商店を語る上で欠かせない要素だ。2タックのチノパンはサスペンダーで釣り、足元は革靴が王道なところを、「スペリー トップサイダー(SPERRY TOP-SIDER)」のスニーカーにして抜け感を出した。

【初訪問を終えて】愚直だからこそ応援したい、それが“町服屋”

東オーナーのやり方が、2023年のファッションビジネス的に長けているとか言うつもりはない。だけど、東商店は古き良き洋服文化を地元で次世代に継承している。そして、その“教え”を頼りにする人がいる。なんだかそれって、とても健全な気がした。なにより取材と言いつつ、気が付くと買い物モードになってしまっている自分がいた(笑)。初めて知るオーセンティックブランドも多く、アメカジ・アメトラの奥深さも感じた。京都に“帰る”理由が、またできた。

■東商店
時間:12:00〜19:00
定休日:水曜日
住所:京都府京都市山科区音羽乙出町1-5

※「オンリーワンなビンテージミリタリースーツとは? 京都に“帰る”理由02」は以下をクリック!

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