ファッション

コスプレ上等! スーツさえ非日常化する中、わが道をいくメンズブランドが10周年

 コスプレ上等!――そう言い切るのが2011年デビューの日本ブランド「アジャスタブル・コスチューム(ADJUSTABLE COSTUME)」だ。ファストファッションの隆盛(と衰退)、ECの定着、ジェンダーレスやサステナビリティといったキーワードの台頭など、ファッションを取り巻く環境はこの10年も激動だった。その中にあって、スタイルを貫徹するのが同ブランドだ。小高一樹デザイナーに10年の歩みについて聞いた。

WWD:10年の間に客層に変化はあった?

小高一樹「アジャスタブル・コスチューム」デザイナー(以下、小高):ブランドデビュー時、僕は37歳で、顧客は僕より少し上の世代(40~50代)が中心だった。「アジャスタブル・コスチューム」は特異なブランドであると自認しており、“らしさ”を出すためにはトータルでお買い求めいただく必要がある。となると、総額は15万~20万円ほど。経済的な余裕があることも、結果として顧客の条件だった。それがこの2、3年は20代前半の顧客が増えている。

WWD:その要因は?

小高:ひとえにSNSによるものだ。“1920~40年代の、男が格好良かったころの服”を標ぼうする「アジャスタブル・コスチューム」が、同じくアメリカンクラシックを愛する理美容師の間で受け入れられ始めた。カリスマ的な人気を持つ彼らがSNSで発信してくれ、フォロワーが服装を真似するようになった。芸能人などではない、「それ、どこの服?」と店頭やDMで気軽に聞ける距離感も奏功し、ブランド認知度が高まった。SNSでの広がりは国内にとどまらず、海外のマニアなコミュニティーにも拡散していった。

WWD:それに合わせて販路も海外に拡大した?

小高:その通りだ。現在、国内外の売り上げ比率は4:6ほど。台湾、香港、中国(上海、北京)、韓国、タイ、ドイツ、スウェーデン、スイスなどに卸している。アメリカや英国の店舗とも交渉中だ。

WWD:クリエイションの着想源について教えてほしい。

小高:映画や、そのもとになった小説が多い。その後で史実を調べたり、資料や写真を集めたりする。古着やアンティーク生地から物語を創造することもある。例えば、今季のイチ押し素材であるオリジナルの“ワイルドスパンツイード”は、1900年代のフランスの貴族層がアウトドアレジャー用に作らせたフロックコートから着想し、糸から作った。これを着てどこへ出掛けたのか?、そのときの足元(靴)は?とイメージを膨らませる。

WWD:ニューノーマル下でスーツさえ非日常化するなか、「アジャスタブル・コスチューム」は次の10年もわが道をいく?

小高:そもそも「アジャスタブル・コスチューム」は、“非日常を表現しよう”とスタートした。名は体を表すではないが、ブランド名も「(アジャスタブル・)ウエア」や「(アジャスタブル・)クロージング」ではなく、「(アジャスタブル・)コスチューム」とした。コスプレの“コス”だ。つまりコスプレに対してポジティブであり、“コスプレでなにが悪いの?”“自分の気持ちを高めるためのファッション(コスプレ)でしょ?”という立場。それを各々アジャスタブル(調整)して取り入れてほしいと、服を作り続けている。

 例えば、ヒットアイテムに“サイレンスーツ”というものがある。これは英国首相を務めたウィンストン・チャーチル(Winston Churchill)が発案したと言われる、スーツ生地のつなぎだ。「アジャスタブル・コスチューム」のファン、つまりコスプレ好きな方は本物志向も強い。一方で、“サイレンスーツ”はビンテージ市場でも出回らない幻の逸品だ。そこで「アジャスタブル・コスチューム」は資料や写真を徹底分析して、それに応えるものを作った。8万5800円と決して安くはないが、多くの方に満足いただいている。

 これからも自信を持ってコスプレを楽しんでほしい!

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