
「サステナビリティを理由に商品を購入する消費者はまだまだ少ない」という声も多く聞くが、そんな消費者に気付きのきっかけを与えるのも店舗の大事な役割だろう。ここでは、店頭でできる具体的なアクションを集めた。1つ1つのインパクトは小さいかもしれないが、どれも消費者の意識を変える大事なタッチポイントになるはずだ。(この特集は「WWDJAPAN」2023年5月29日号からの抜粋です)
店舗設計
アルマーニ(ARMANI)
循環性を考慮し 廃材を多用

3月30日にオープンした国内最大店舗、「アルマーニ(ARMANI)」 神戸三田プレミアムアウトレット店は、循環性を考慮した「グリーン コンセプト」を採用している。壁面パネルや棚板には廃棄された家具や木材チップを100%再利用しリサイクルウッドを、フィッティングルームのカーテンには再生ポリエステル100%の生地を、カーペットにはリサイクルナイロンの「エコニール」を使用した。アクセサリーや小物をディスプレイする什器の側面はリサイクル紙で、接着には天然の接着剤を使用した。随所にリサイクル材を取り入れながら、高級感のある店舗に仕上げた。
パタゴニア(PATAGONIA)
地元資材を活用し地域建築を活性化

4月に開店した「パタゴニア(PATAGONIA)」軽井沢は、当初鉄骨造を想定していたが木造に変更。自然環境と共生するようにデザインした。カラマツ、クリ、古木、鉄平石、浅間石などの長野県産の資材を使用することで地域の環境建築の活性化を目指した。ファサード看板は、古民家を解体した時に発生した松の古木を採用している。
パトゥ(PATOU)
環境配慮素材を随所に 廃材の分別徹底も

「パトゥ(PATOU)」は表参道店に続き、3月にオープンした松坂屋名古屋店で建築家の小野寺匠吾と協業。パリのメゾンの内装と同様に、木や紙といった素材を用いている。たとえば木材由来の中質繊維板を什器に、再生素材をカーテンに活用するなど店舗の随所に環境配慮素材を採用した。工事期間中には、排出する廃材を徹底分別しリサイクル率が高まるように配慮。
フリークスストア(FREAK’S STORE)
廃棄衣料のリサイクルボードを大いに活用

フリークスストア(FREAK’S STORE)」は最も導入が進んでいるブランドだ。全9店舗でレジカウンターやテーブルなど、規模の大きな什器に採用。新作のカラフルな色合いの「パネコ」なども活用する。4月にリニューアルしたららぽーと富士見店では、店頭で回収した古着を「パネコ」に用いる取り組みも始まった。
トレーサビリティの開示
ココ(CO×CO)
作り手のイラスト付きで背景のストーリーを伝える

一般社団法人ディアミーが手がける「ココ(CO×CO)」は、「服のかたちをしたメディア」を掲げ、ファッションを通じた社会課題の解決を目指すブランド。服の裏側に付属するQRを読み込むと、QRからしか閲覧できない専用ページが登場。そこでは、作り手の顔イラスト付きで生産過程や商品の背景などのストーリーを読むことができる。
ロンハーマン(RON HERMAN)×三井物産
消費者が支援内容を選択、つながりを感じる仕掛け
1 / 2
「ロンハーマン(RON HERMAN)」は、三井物産が提供するプラットホーム「ファーマーズ 360°リンク」を活用した商品を企画した。商品に付随するQR コードと専用アプリを連動させ、アプリを通じてザンビアの小規模零細綿花農家の支援につなげるというもの。支援内容は購入者が自分で選択でき、その後の現地での変化などもアプリを通じて知ることができる。4月に第一弾の商品を発売したところ、店頭からは「取り組みが購入の後押しにつながった」「自主的に募金などの行動を起こす事は難しいが、商品の購入がSDGs活動の一環になる事をとても喜んでいただけた印象」といった声があがったという。
古着の回収
イオン
10日間実施し、126店舗から35tを回収

イオンモールは4月14日から23日まで、衣料品廃棄ロスをテーマに行政機関や地域団体、パートナー企業と連携し、不要な衣料品を回収しリユースする取り組み「幸服リレー」を開催した。126店舗が各1、2日ずつ実施し、合わせて35tを回収。繊維製品の回収および循環再生事業を行うビーピーラボと連携し、繊維製品分別処理工場と再資源化工場を経てペレットなどの原料や、ウエスや吸着マットなどの資材へリサイクルする。なお、ポイントなどのインセティブ付与は今年から行っていない。
H2O
川西市と提携し、廃棄衣類で緑化など

兵庫県川西市とエイチ・ツー・オー リテイリングは3月17日、包括連携協定を締結した。具体的な取組みとして、「廃棄衣類を回収し、加工。プランターとして再生させ地域緑化を推進するグリーンアップサイクルⓇプロジェクト」など複数のプロジェクトを予定している。
H&M
古着回収10周年 世界累計15万6千t
1 / 2
H&Mは4月17~23日、古着回収サービスの特典が2倍になるキャンペーンを開催した。同サービスは2013年に始め、今年10周年。世界では累計約15万6000tの衣類を回収した。日本では累計で約7835tを回収し、これはTシャツ(1枚=500g)に換算すると約156万7000枚に相当するという。5月にオープンした銀座店では「パネコ」製の回収ボックスを設置している。