「WWDJAPAN」のソーシャルエディターは毎日、TwitterやFacebook、Instagram、そしてTikTokをパトロールして、バズった投稿や炎上、注目のトレンドをキャッチしている。この連載では、ソーシャルエディターが気になるSNSトレンドを投げかけ、業界をパトロールする記者とディスカッション。業界を動かす“かもしれない”SNSトレンドの影響力や、投稿がバズったり炎上してしまったりに至った背景を探る。今、SNSでは何が起こっているのか?そして、どう向き合うべきなのか?日々のコミュニケーションのヒントにしたい。
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ソーシャルエディター浅野:ファッションにしろビューティにしろ、時代ごとにアイコンとなる人物が登場してトレンドを生み出し、業界を動かしています。最近では田中みな実さんが注目を集めましたよね。特にビューティ業界では人気絶大で、田中みな実さんが紹介した製品は即完売、SNSでは「田中みな実の愛用製品まとめ」などの投稿が大きくバズりました。「カネボウ(KANEBO)」の“クリーム イン デイ”や「クレ・ド・ポー ボーテ(CLE DE PEAU BEAUTE)」の“ル・セラム”などは、“田中みな実売れ”の代表格です。どちらも高額ですが、かなり売れているとのこと。田中みな実さんの「売る力」のすごさを象徴していると思います。彼女の影響はまだまだ絶大ですが、ことSNSはアイコンとなるスターを常に求め、各企業もアンテナを張っているでしょう。私もソーシャルエディターという立場上、最近業界の人に会うとほぼ100%の確率で「次のスターはだれ?」と聞かれます。しかし、結論として「パワーインフルエンサーレベルはそこそこいるが、マス層を巻き込むほどのスターは不在」です。現れるのを待つのか、発掘するのか、あるいは育成するのか……。メディアとして色々と考えますが、村上さんは今「売る力」を持っているのはどんな人物だと思いますか?
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記者村上:大きなポテンシャルを有している1つのコミュニティーは、インスタ界隈でも影響力のある富裕層でしょうか?「WWDJAPAN」が追いかけている若手富裕層の平山美春さんは、インスタグラムのフォロワー数が3.8万。先日のパリコレで初めてお会いしましたが、とても良い方でした。記事を掲載するようになって以来インスタグラムをフォローしていますが、さすがは富裕層。「ディオール(DIOR)」「ドルチェ&ガッバーナ(DOLCE&GABBANA)」「グラフ(GRAFF)」など、お好きなブランドを中心に、知識がハンパじゃありません。ブランドの魅力をちゃんと文字にしてアップしてくれるキレイな写真&動画という投稿は、フォロワーはもちろん、実際リアルでも繋がっている富裕層の友人にも影響力があるのではないでしょうか?
コスメでは「イプサ(IPSA)」「エトヴォス(ETVOS)」から「オルビス(ORBIS)」「メイベリン(MAYBELLINE)」までを愛用コスメとして紹介しています。「富裕層なのに『オルビス』」です。3万8000人に「あぁ、『オルビス』って、きっと本当にいいんだなぁ」って伝わりますよね(笑)。忖度のない、本当にいいモノとして受け止められるから、結果「売る力」が備わった発信になっているのではないでしょうか?
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浅野:タレントやインフルエンサーばかり追っていましたが、確かに富裕層は情報の発信者としてパワーがありますね。平山さんの記事はSNSでも反響が大きかったです。最近はタレントもインフルエンサーも親近感を大切にする傾向にあるので、“非日常感”を楽しめる富裕層の発信は、かなりのインパクトもありますね。エンタメとして楽しめるというか……。
今は、ファッションにしろビューティにしろ、必要な情報ってSNSの一般ユーザーの発信で十分に足りているんです。そんな中でタレントやインフルエンサーに求めるものって、やっぱり一般消費者にはない華やかさが魅力なんですよね。マーケティングは共感の時代と言われていますが、新たなムーブメントを生み出すには富裕層のインパクトがかなり効果的かもしれません。
村上:インパクトはもちろん、富裕層が次なるインフルエンサーとして有力なのは、ストーリーテラーになれるからだと思います。ブランドや商品の魅力を咀嚼し、独自の視点で発信する人が「売る力」を備えるという点では、長らく活躍するインスタグラマーも、田中みな実さんも、平山さんのような富裕層も、一般のSNSユーザーも変わらないと思います。どうも一部ラグジュアリーやビューティのプレステージブランドには、「華やかなら、バズって売れるんでしょ?」という誤解があるような気がしています。
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ファッションやビューティブランドが続々起用しているアンバサダーやフレンドにも、着せられたり、タッチアップを施されたりの後のビジュアルだけじゃなく、独自のストーリーテリングを期待したいですね。今、そこまでの役割を務めることができるインフルエンサーって、誰なんだろう?私は、少なくともビューティの世界では、小田切ヒロさんとか神崎恵さんのようなプロは、その役割を立派に務めていると思います。先日、サロンスタイリスト向け「ヘア&メイクセミナー」で小田切さんをゲストに招きましたが、やっぱり独自の意見が面白かったですよ。
次回は、「Ye(カニエ・ウェスト)の言動で、SNSが大荒れ!各ブランドとのパートナーシップも、次々に解消か?」をお届けします。
