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マスクを外さない女性たち、日本特有の心理とマスク後に向けた美容意識とは

 5月20日に厚生労働大臣から「屋外で2m以上距離が確保され、会話が少ない場面では、マスクを着用しなくても良い」という見解が示された。6月末より異例の猛暑が続いていることもあり、街中(特に屋外)では、マスクを外している人をちらほら見かけるようになった。

 8月1日現在、新型コロナウイルスの流行第7波が猛威をふるうさなかではあるけれど、猛暑の影響もあってか、屋外でマスクを外している人は一定数見受けられるように思う。

 2年以上の長きに渡るマスク着用生活を経て、「人と会う機会」「社会活動」が以前のような状況に戻りつつある現在。女性たちの間では、マスク着用や美容に関して、何らかの意識の変化はみられるのだろうか? アットコスメの口コミや美容クリニックの現状から垣間見る「日本特有のマスク事情」と「美容意識」をご紹介したい。

欧米に比べ「マスクを外す」
動きはゆるやか

 新型コロナウイルスの流行初年である20年度以降、アットコスメの口コミにおいては常に「コロナ禍」というワードが上昇傾向にあった。しかし22年上半期は、初めて前年同時期に比べて13%減少に転じたという。

 「政府発表直後の5月23日に実施したアンケートでは“以前よりメイクをする機会が増えた”という回答が38%、“外に出たいと感じるようになった”という回答は58%でした。2年に渡るコロナ禍を経て、ようやく日常生活が戻りつつある気配を感じます」と語るのは、アイスタイルで口コミや投稿の分析を担当する原田彩子リサーチプランナーだ。

 ただし、予想したほど「状況が一気に変化する」ことはなかったという。欧米ではマスク着用が緩和されたのち、一斉に人々がマスクを外し、口紅の売れ行きが上昇する現象がみられた。しかし、日本はまだそのような状況には至っていない。

 「口コミやアンケートにおいても“コロナ禍が収束したら化粧品を買いたい”“収束したら美容にお金をかけたい”という表現が目立ちます。今すぐ変わらないけれど、マスク後の世界を想像し始めている状態と言えそうです」

 マスク着用に関しては、「マスクを外す機会が増えた」という回答が10代では27.3%、20代では24.4%。以降は消極的な姿勢が目立ち、30代は17.9%、40代は11.6%、50代以上は10.7%に留まった。「通勤電車やオフィスなど人目がある場所では、マスクを外しにくい状況にあるのでしょう。5月末時点の調査ですので、暑さが増したり、感染者が増えた現在は、少々状況が違うかもしれません」。

「進化型ベストセラー」に
「A反応」
スキンケアは「守りと攻め」の
両極化が進む

 原宿駅前の総合コスメショップ「アットコスメトーキョー」の売り上げは、コロナ禍以前の状態を越えるほど回復している。特に好調なのがメイクアップ製品で、アイブロウは前年同期比209%、アイシャドウは同173%、リップは同167%の伸張を記録した。

 「スキンケアに関しては、コロナ禍中と同じく“進化したベストセラー”の人気が継続しています。今年6月に進化を遂げた『アルビオン(ALBION)』の “薬用スキンコンディショナー エッセンシャル N”や、昨年9月発売の「コスメデコルテ(DECORTE)」“リポソーム アドバンスト リペアセラム”等、手堅い選択が目立ちました。先行き不透明な世の中において、買い物に失敗したくないという心理が働いているようです」。

 興味深いのは、これら「長年支持されるベストセラー」の一方で「効果実感のある攻めのケア」に興味を示す人も増えていることだ。その象徴ともいえるのが「塗るハイフ」や「A反応」というワードの出現である。

 「“塗るハイフ”とは、韓国コスメの“BIO HEAL BOHプロバイオダーム リフティングクリーム”を指すワードです。“A反応”とは、レチノールを配合したコスメで一時的に刺激を感じたり、皮むけしたりするような状態を指します。マスクで敏感に傾いた肌を、やさしくケアすることが重視される一方で、これら“攻めのコスメ”にも関心があるんですね。このような両極端のケアを、1人の人が支持しているケースも少なくありません」。

 一見矛盾するようだが「食品分野で低糖質なオートミールが流行する傍ら、バターたっぷりの背徳グルメが注目されたようなものではないか」と、原田リサーチプランナーは分析する。長きに渡りいろいろな物事に制限を強いられた結果、現状の肌に対応する一方で、欲望にも忠実でありたいという、まさに今を象徴する美容意識といえそうだ。

美容クリニックへの駆け込み需要はあったのか?

 マスクを外す機会の増加局面において、もう1つ気になるのが「美容クリニック」の現状である。シロノクリニックの藤垣貴子広報戦略室長に、この2年間の患者の動向を尋ねてみた。

 「コロナ禍ではインバウンドの患者さまが減少する一方で、国内の患者さまは緊急事態宣言の影響を受けつつも、定期的に通って頂いた印象です。実はダウンタイムがある施術の場合“マスク着用がプラスに働いた”側面もあります」。

 美容医療の場合「やろうか、どうしようか」と迷う患者は少なくない。たとえ施術を希望していても、仕事や人と会うタイミング上、すぐに受けられない場合もある。

 「医師からカウンセリングを受けたのち、実際に施術を受けるまでに半年~1年近くかかるケースもあります。マスクで顔が隠れている状態は、施術の決定率という意味で、後押しになりました。加えて“マスクの擦れで肝斑が目立つ”という声も増え、肝斑治療のレーザーに興味を抱く方が増えた印象です」。
 
 マスクの下で以前より表情を動かさなくなり、ほうれい線やたるみを気にする人も増えたという。このように美容医療に対してプラスに働く面もある一方で、新たな肌悩みを生じさせたマスク習慣。着用基準が緩んだタイミングで、施術への駆け込み需要はあったのだろうか?

 「4月後半くらいから、初診の患者さまが増加しています。コロナ禍中はリピートの方が多かったので、初診が右肩上がりで増えているのはポジティブな変化といえるでしょう。施術内容では、コロナ禍中ニーズが減少した“眉のアートメイク”が復調傾向にあります」。

たとえコロナ禍でも変わらない、
女性の永遠の悩みは
「シミ」「たるみ」

 とはいえ、取材時の6月時点では、「爆発的に患者数が増えた」という状況ではないという。このあたりは化粧品の場合と同じく、日本人らしい「マスク後へのゆるやかな移行」といえそうだ。藤垣広報戦略室長の話で興味深かったのは「コロナ禍以前、自粛期間中、この22年上半期を通して“過去10年間人気の施術は変わらない”」という事実である。

 「売り上げベースで見ると、肌全体のトーンを明るく保つ“フォトシルクプラス”、肝斑を対象とした“メドライト”、たるみ治療の“サーマクール”、同じくたるみ治療の“ウルセラ”、コロナ禍中に導入した“ハイフLTV”、この5台の機械が常に上位を占めています。この傾向は過去10年変わらず、シミとたるみは女性の永遠のお悩みであると改めて認識しました」。

 この5台のマシンの次に、シワ対策の施術であるボトックスやヒアルロン酸、眉のアートメイクが入れ替わりでランクインするという。コロナ禍中に減少したアートメイクが、ここにきて何故復調したかというと……?「患者さまの来院数は、上半期のピークが3~4月、下半期が11~12月です。ともにイベントが集中し、人と会う機会が増えるためですね。4月以降アートメイクの復調が見られたのは、具体的に“人と会うシーン”を想像される方が増えたからではないかと思います」。

美顔器のニーズが
さらに高まる可能性は?

 「おうち時間」の増加とともに、この2年間好調だった美顔器だが、マスク後の未来に向けて、注目度はさらに高まっているのだろうか?「緊急事態宣言中は、自宅で過ごす時間の増加とともに、美顔器も注目されました。社会生活が戻るにつれ、これまで以上に“忙しさ”を感じる人は確実に増加します。じっくり肌と向き合うというより“限られた時間の中で効果的にケアできる”多機能な美顔器に目が向くのではないでしょうか」と、原田リサーチプランナーは予測する。

 忙しさに加え、今後は交際費や服飾費などに所得が分散されることも予想され「コロナ初期のようなブームには至らないのではと感じています。一方で美顔器は“ジェンダーを越えて興味がある分野”でもあります。男性の場合ガジェット的な興味から入るケースがありますし、最近は“夫と一緒に使っている”という口コミも増えています」。このようなケースでは、家族とシェアする高額な美顔器を購入という、女性側のメリットもある。この上半期は、ジェンダーを問わずに使えるデザインや、小型で多機能な美容デバイスが続々登場し、今後注目されそうだ。

 欧米のように、誰もが一斉に外すことにはならなかった、日本特有のマスク事情。現在、猛威をふるう第7波が収束に向かうとしたら、その後状況は変わっていくだろうか。まだしばらく、マスクとのつき合いは続きそうだが、女性の美容意識はどのように変化していくのか、そしていつかマスクを手放す時に何が求められるのか、大変興味深く思っている。

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