ファッション

米国小売業のダイナミズムを描く「アマゾンVSウォルマート」

 WWDJAPAN.comの「鈴木敏仁USリポート」でおなじみのロサンザルス在住の著者が、米国小売業を代表する2社に肉薄した「アマゾンVSウォルマート」(ダイヤモンド社)は、ファッションやビューティにかかわる業界人にとっても必読の一冊だ。まったく出自の異なる2社を比較することで、その思想と戦略を浮き彫りにする。そして意外な共通点も見えてくる。

 全産業を対象にした米国企業売上高ランキング(2020年)によると、ウォルマートが5591億ドルで1位、アマゾンが3860億ドルで2位だった。過去20年で売上高を倍増させたウォルマートを、2ケタ成長のアマゾンが猛追する。米国の小売業界は、2社を軸に動いているといっても過言ではない。そして両社の動向は、人々の暮らしを変える影響力を持っている。

 本書はメディアで断片的に報じられてきた両社の動きを、時系列に、筋立てて、ディテール豊かに分析することで、小売業の現在地を示す。水先案内の書である。

 鈴木氏がアマゾンを理解するきっかけになった元幹部の「アマゾンはEC企業ではない、データ企業だ」という言葉の意味を、たくさんの事例を通して追体験できる。そして大型店舗を持つウォルマートのDX(デジタルトランスフォーメーション)の成功が、半世紀前から脈々と続くテクノロジー経営の延長線上にあることに驚くだろう。「小売業は変化対応業」という格言があるが、この2社はそれを体現してきた。

 鈴木氏はエピローグでこうつづる。「日本の自動車業界のように、どこの国にも世界に誇ることができる業界があるもので、アメリカにとっては小売業界がそれにあたるのだろう」

 シリコンバレーのIT業界にばかりに目を奪われがちだが、アメリカはいつの時代も革新的な小売業のガリバーを生み出してきた。日本の高度経済成長期にダイエー、イトーヨーカ堂、ジャスコはチェーンストア理論の先駆者であるシアーズを、1980年代以降のアパレル各社もSPA(製造小売り)を生み出したギャップを徹底的に研究した。
 
 本書には、ECの枠を超えて世界の人々の生活を変える存在になったアマゾン、老舗小売業でありながらDXの先端を走るウォルマートの事例を通じて、小売業を考えるヒントが散りばめられている。

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