ファッション

「ジェンダーレス」とは? “めんどくさい”新米2人によるポッドキャスト連載:考えたい言葉 vol.4

 「WWDJAPAN」ポッドキャストシリーズの新連載「考えたい言葉」は、2週間に1回、同期の若手2人がファッション&ビューティ業界で当たり前に使われている言葉について対話します。担当する2人は普段から“当たり前”について疑問を持ち、深く考え、先輩たちからはきっと「めんどうくさい」と思われているだろうな……とビビりつつも、それでも「メディアでは、より良い社会のための言葉を使っていきたい」と思考を続けます。第4弾は、【ジェンダーレス(Genderless)】をテーマに語り合いました。関連する単語である「ジェンダーニュートラル(Gender-neutral)」「ジェンダーファッキング(Genderfucking)」「ジェンダーフルイド(Gender-fluid)」などとも比較しながら意味を探ります。「WWDJAPAN.com」では、2人が対話して見出した言葉の意味を、あくまで1つの考えとして紹介します。

ポッドキャスト配信者

佐立武士(さだち・たけし):He/Him。入社2年目、ソーシャルエディター。幼少期をアメリカ・コネチカット州で過ごし、その後は日本とアメリカの高校に通う。早稲田大学国際教養学部を卒業し、新卒でINFASパブリケーションズに入社。在学中はジェンダーとポストコロニアリズムに焦点を置き、ロンドン大学・東洋アフリカ研究学院に留学。学業の傍ら、当事者としてLGBTQ+ウエブメディアでライターをしていた。現在は「WWDJAPAN」のソーシャルメディアとユース向けのコンテンツに注力する。ニックネームはディラン

ソーンマヤ:She/Her。入社2年目の翻訳担当。日本の高校を卒業後、オランダのライデン大学に進学して考古学を主専攻に、アムステルダム大学でジェンダー学を副専攻する。今ある社会のあり方を探求すべく勉強を開始したものの、「そもそもこれまで習ってきた歴史観は、どの視点から語られているものなのだろう?」と疑問を持ち、ジェンダー考古学をテーマに研究を進めた。「WWDJAPAN」では翻訳をメインに、メディアの力を通して物事を見る視点を増やせるような記事づくりに励む

若手2人が考える【ジェンダーレス】と関連する単語

 「ジェンダーレス」と数ある関連した単語は、大まかに既存のジェンダー観に捉われないアイデンティティやファッション、ビューティなどのライフスタイルを意味する。日本のファッション&ビューティ業界において、「ジェンダーレス」は、自身の性と社会的に“逆”とされる要素を取り入れることでジェンダーを“打ち消す”印象を与えているケースが多い。自身の性に結び付けられたルールに従わず、メイクを楽しむ男性やメンズアイテムをまとう女性を“ジェンダーレス男子/女子”と呼ぶ風潮が見られる。実際、現状として“ジェンダーレス男子”がしていることを女性がした場合や“ジェンダーレス女子”のファッションを男性がした場合は「ジェンダーレス」ではなく世間的にも“普通”になることがほとんどである。

英語圏で多用される【ジェンダーニュートラル】

 対して英語圏でより頻繁に用いられる「ジェンダーニュートラル」は中立という言葉の通り、保守的なジェンダー観においてどの性の人が取り入れても“違和感”のないことを指す。そのため、「ジェンダーレス」がメンズ・ウィメンズにカテゴリー化された既存のアイテムを自由に使用するスタイルを指すのに対し、「ジェンダーニュートラル」はジェンダーのレッテルを意図的に外したアイテムを指すことが多い。しかし、「ジェンダーニュートラル」なアイテムはスカートやハイヒールなどではなく、オーバーサイズのTシャツやジーンズなどが主流。男女のカップルが“お揃いコーデ”をする際にウィメンズではなく、メンズ売り場にいくことが多いように、“中立”はメンズに傾いているのが現状だ。

攻めの姿勢を指す【ジェンダーファッキング】

 近年、英語圏で「ジェンダーファッキング」というパワフルな言葉がメディアで台頭。“ジェンダーなんかクソ食らえ”というニュアンスを持つこの言葉は、本質的に上記のスタイルと違うわけではなく、その当事者の“攻めの姿勢”を表す。ハリー・スタイルズ(Harry Styles)は「ヴォーグ(VOGUE)」の表紙でドレスを着用するなど印象的なファッションで知られ、自身のジェンダー観や多様性・包括性のトピックに関しても多く発言していることから「ジェンダーファッキング」のメンタリティが感じられる。一方で、ハリーはロックスターのようなスーツにオールバックヘアを合わせたスタイルを好むことでも知られ、伝統的なメンズファッションを楽しんでいることからスタイルは流動的とも言える。

流動性を表す【ジェンダーフルイド】

 ハリーのスーツが象徴するように、ジェンダー的に“逆”のことをしていないと、必ずしもその人がジェンダー観に捉われているというわけではない。そのような考えは「ジェンダーフルイド」という言葉で表される。元々は自身の性を定義せず、その時々によってさまざまなジェンダーを流動的に行き来するという考え。ファッションやビューティでは、ジェンダー的に幅広いスタイルをその時々に楽しむことを主に意味する。加えて、そもそもファッションなどが自身の性に関係あるものとして結びつけられていることに疑問を持ち、その固定を流動化したいという考えも含まれている。時にファッションは自身のジェンダーを表現する重要なツールでもあるが、ファッションとジェンダーの関連を切り離して考えようとする風潮も広がっているのだ。

どの言葉も根底には「自由」への思い

 「ジェンダーレス」「ジェンダーニュートラル」「ジェンダーファッキング」「ジェンダーフルイド」など表現の多様さに圧倒されてしまうかもしれないが、ジェンダーの解釈によるアプローチとメンタリティの違いであり、根底にあるのはより自由にファッションやビューティを楽しみたい思いだ。

【ポッドキャスト】

「WWDJAPAN」ポッドキャストシリーズはSpotifyやApple Podcastsでもお聞きいただけます。

WWDJAPAN PODCAST
WWDJAPAN PODCAST
「ジェンダーレス」とは? “めんどくさい”新米2人によるポッドキャスト連載:考えたい言葉 vol.4
/

最新号紹介

WWDJAPAN Weekly

盛り上がる”スピリチュアル消費“を分析 「心に寄り添ってほしい」ニーズに向き合う

「WWDJAPAN」10月25日号は、“スピリチュアル消費”特集です。ここ1〜2年、財布の開運プロモーションや星座と連動したコスメやジュエリーの打ち出しがますます目立つようになっています。それらに取り組むファッション&ビューティ企業と、その背景にある生活者の心理を取材しました。 スピリチュアルと聞くとやや怪しさがありますが、取材を通して見えてきたのは「心に寄り添ってほしい」という女性たちの普遍的な…

詳細/購入はこちら