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AIが分析したビジュアルで消費者の心をつかめ LV親会社も利用するソフトウエア会社が提言

 人々が思うように外出できない状況が続く中、集客や売り上げ維持に悩むブランドや小売店も多いだろう。顧客を引き付ける手段としてソーシャルメディアが有効だと分かっていても、うまく活用できていないケースも少なくないと専門家は言う。

 画像解析AI(人工知能)を核としたビジュアル・マーケティング・ソフトウエアを開発するダッシュ・ハドソン(DASH HUDSON)のミシェル・ベルシック(Michelle Belcic)=ブランドストラテジー担当バイス・プレジデントは、「コロナ禍の影響が大きい地域ほど、フェイスブック(FACEBOOK)、インスタグラム(Instagram)、ワッツアップ(WhatsApp)などの利用者数が増えており、ツイッター(Twitter)は前年同期と比べて23%増加した。また米国の成人が一日にソーシャルメディアに費やす時間は平均で82分も増加している。自由に出かけられず、リアルでのイベントもあまり行えない状況下で、ソーシャルメディアは消費者との数少ない接点だ。そうしたプラットフォーム上で顧客の心をつかむような魅力的なビジュアルを展開できるかどうかが成功へのカギとなる」と語った。

 ダッシュ・ハドソンは、「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」「ディオール(DIOR)」「フェンディ(FENDI)」などを擁するLVMH モエ ヘネシー・ルイ ヴィトン(LVMH MOET HENNESSY LOUIS VUITTON)や、「コーチ(COACH)」「ケイト・スペード ニューヨーク(KATE SPADE NEW YORK)」「スチュアート・ワイツマン(STUART WEITZMAN)」を擁するタペストリー(TAPESTRY)、そして米百貨店ノードストローム(NORDSTROM)などにソフトウエアを提供している。

 ベルシック(Michelle Belcic)=バイス・プレジデントによれば、実店舗での売り上げがコロナ禍以前のレベルに戻るには5年程度かかると予想される一方で、2020年におけるECの売り上げは前年比18%増が見込まれている。「新型コロナウイルスの影響で小売り環境は急激に変化した。ECの強化に乗り出す企業が多く、ナイキ(NIKE)は21年末には売り上げの30%がECとなる見込みだが、いずれはこれを50%にまで引き上げたいとしている。また『ザラ(ZARA)』などを擁するインディテックス(INDITEX)は21年までに1000~1200の店舗を閉じ、今後3年間でECの強化に10億ドル(約1050億円)を費やすと発表している」と述べた。

 ソーシャルメディアには毎日膨大な量のコンテンツが投稿されているが、消費者の目に留まるにはどうすればいいのだろうか。ベルシック=バイス・プレジデントは、「人間の脳に伝達される情報の90%は視覚によるもので、画像や動画はテキストの6万倍の速さで処理されるといわれている。つまりソーシャルメディア戦略ではビジュアルが非常に重要となるが、どのようなコンテンツが消費者に“刺さる”かを考えるには、固定客などコミュニティーの意見に耳を傾けることが大切だ。現在業績を伸ばしている企業の多くは、コミュニティーとの対話から得たデータに基づいてビジュアルを作成している」と説明する。

 その好例が、ロンドンを拠点にラグジュアリーECサイトを手掛けるマッチズファッション(MATCHESFASHION)だという。「同社はコミュニティーの意見を取り入れたコンテンツを作成し、それをウェブサイトやメール広告などで使用している。顧客はブランド側が自分を理解し、大切にしてくれていると感じるので、売上増へとつながる」。

 同氏はまた、より大規模にデータを収集する方法としてAIの活用が有効だとしている。「当社のビジョン(Vision)というソフトウエアは、マシンラーニングとコンピュータービジョン技術を組み合わせたもので、膨大な量の“ビジュアルキュー(視覚的な手がかり)”を分析してビジュアルの特性や、ソーシャルメディア上でのパフォーマンス予測を行う。こうして解析されたブランド独自のアルゴリズムに基づいて、クリエイティブ戦略を効率的に策定できるようになる」と話す。

 オーストラリアのアパレルチェーン、コットンオン(COTTON ON)もビジョンを導入している企業の一つだ。同社でソーシャルコマース(SNS上での商品販売)用の画像を選択する際、ビジョンのデータを活用して選んだものは、そうでないものと比べてクリックスルー率(広告をクリックして広告主のコンテンツに移動した率)や商品購入のコンバージョン率が一貫して高いという。

 これらに加えて、さまざまなソーシャルメディアの特性を理解することも重要だ。ベルシック=バイス・プレジデントは、「何かを買おうと思っている消費者が多く集まるSNSとして、ピンタレスト(Pinterest)が挙げられる。同ユーザーの84%は購入を計画する段階でピンタレストを見ており、98%のユーザーはピンタレストを見ているうちに購買意欲が刺激されて商品を購入したと答えている。こうしたデータを踏まえて、『アンソロポロジー(ANTHROPOLOGIE)』が手掛けるブライダルブランドの『ビーホールディン(BHLDN)』は、ピンタレスト上で画像や動画をまとめておけるボード機能を使い、取り扱っているウェディングドレスや小物類のビジュアルコレクションを作成した。そこでオフショルダードレスの人気が非常に高いことや、好まれるビジュアルイメージの傾向などが分かったので、そうした情報を提携ブランドと共有して売り上げを伸ばしている」と述べた。

 ベルシック=バイス・プレジデントは、「ウェブ広告では、クリエイティブの質が売り上げを直接左右する。もうすぐホリデー商戦の時期だが、AIのサポートなしに挑もうとしているのであれば、大きな機会損失となる可能性がある」と締めくくった。

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