アシックスのファッションスニーカー「スポーツスタイル」が急成長中だ。このほど発表した2026年1〜6月期(上期)決算で、売上高は前年同期比83%増の1231億円。同じファッションスニーカーの「オニツカタイガー」の同35%増・895億円を大きく上回った。欧州と北米と急成長によって、26年12月期(通期)では71%増の2420億円(期初予想に比べて345億円増)で着地する見通しだ。
同社は14日に通期業績予想を1兆500億円(期初予想は9500億円)に上方修正した。これに最も貢献したのが、上期だけで558億円も増収した「スポーツスタイル」だった。
「スポーツスタイル」は1990年代から2010年代にかけて販売した競技用シューズをファッション向けに刷新したカテゴリーのこと。“ゲルカヤノ14”が代表的なモデルとして知られ、セレクトショップやスニーカーショップへの卸売が中心となる。一方「オニツカタイガー」は1950〜70年代のモデルを着想源にしたブランドで、直営店と公式ECに特化して売られている。
売れている地域も異なる。「オニツカタイガー」の売上高が約7割が日本およびアジアであるのに対し、「スポーツスタイル」は約7割が欧州および北米である。
欧州・北米で拡大する
先週、米国出張した廣田康人アシックス会長は、ニューヨークのセントラルパークで朝にランニングする人々の姿を見て「『アシックス』は目視で2割ほどのシェア」と手応えを感じた。一方で「街中に出ると『スポーツスタイル』を履く人はまだ少ない。伸び代がある」と感じたという。ランニングシューズで築いたブランド力を、「スポーツスタイル」を通じて都市生活者へどう広げていくかが、次の成長テーマとなる。
「本物感のあるスニーカー」が支持される理由
なぜ「スポーツスタイル」に人気が集まるのか、決算説明会で問われた廣田会長は、現在特に売れている商品として“ゲル-カヤノ 14”“ゲル-NYC”“ゲル-1130”の3シリーズを挙げた。地域によって人気には違いがあり、欧州では“ゲル-カヤノ 14”、北米では“ゲル-1130”の動きが良いという。スポーツテックを背景にした「本物感のあるスニーカー」であることが支持につながっていると分析する。
単純に過去のランニングシューズのデザインを復刻しているのではなく、実際のスポーツシューズとして培ってきた技術や構造を背景に持つ。そのスポーツテックそのものが、ファッションスニーカーとしての価値になっている。価格帯についても「お客さまが買える」「一番買いたいゾーン」に入っていることが市場でのバリューにつながっていると分析。テクノロジーを感じさせるデザイン、履き心地、そして手が届きやすい価格。この組み合わせが、スポーツスタイルの成長を支えている。
欧州4割増、米国5倍増 27年春夏の受注も好調
売上高だけではなく、次シーズンの受注状況についても述べられた。27年春夏シーズンの「スポーツスタイル」の受注は、欧州が約4割増、米国が約5倍増だという。現時点では大きなトレンド変化は見えておらず、現在のラインアップを軸に勝負していく方針だ。“ゲル-カヤノ 14”などのヒットモデルを持ちながら、複数の商品群へと成長ドライバーを広げていく。
卸売り拡大でも「値引きしない」戦略
一方で、成長の規模が大きくなるほど課題になるのが、在庫と値引きのコントロールだ。「スポーツスタイル」は卸売り比率が高く、今回の決算では卸売り比率の上昇が連結の粗利益率に0.3ポイントのマイナス影響を与えた。ただし卸売りはD2Cに比べて粗利益率は低い一方、店舗などの固定費負担が小さいため、営業利益率は同水準になる。アシックスは2010年代に米国で過剰在庫に苦しんだ経験がある。廣田会長は「二度とあってはならない」とし、現在は供給量をかなり調整していると説明した。
直営店と販路拡大へ
今後は販売チャネルも広げる。現在の「スポーツスタイル」は卸売り中心だが、日本では7月にオープンした新宿の旗艦店「アシックス フラッグシップ 新宿」の1階に売り場を設けた。今後は「スポーツスタイル」の直営店を展開する可能性にも言及する。北米では、スポーツ用品大手のディックス・スポーティング・グッズなどとの商談を進めており、販路拡大への引き合いも強いという。ディックス傘下となったフットロッカーでの販売も視野に入れるなど、卸売りを中心にしながらも、ブランド価値と供給量をコントロールしつつ販売網を広げる考えだ。