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モデル経験から得た妥協なきクリエイティビティー 韓国発フレグランス「ナフ」のディレクターが描く香りの世界

PROFILE: イ・セハン

イ・セハン
PROFILE: 「ナフ」クリエイティブディレクター、モデル 韓国を拠点に活動。モデルとしてラグジュアリーブランドのコレクションにも出演し、ファッションシーンでキャリアを築きながら、ニューヨーク滞在中に現代美術や表現活動への関心を深める。“匂い”をテーマにした展示をきっかけに香りによる表現を追求し、2025年にフレグランスブランド「ナフ(NAHES)」を設立  PHOTO:TAMEKI OSHIRO

韓国発のフレグランスブランド「ナフ(NAHES)」が今夏、日本に上陸した。同ブランドを手がけるのは、世界を舞台にモデルとして活動するイ・セハン(Lee Sehan)=クリエイティブディレクターだ。2025年10月にローンチし、洗練されたラグジュアリーや完成された美しさではなく、人が本来持つ本能や感情、言葉では説明しきれない魅力に焦点を当て、“RAW SENSUALITY(ありのままのセクシーさ)”をテーマに香りを生み出している。独自の世界観を落とし込んだキービジュアルなど、多彩なアプローチで香りを表現するクリエイティビティーの源をセハン氏に聞いた。

WWD:「ナフ」立ち上げたきっかけは?

イ・セハン=クリエイティブディレクター(以下、セハン):モデルとして12年ほど活動しており、20代後半はアメリカ・ニューヨークで3年ほど活動していました。 世界的なトップモデルを目指してニューヨークへ渡りましたが、なかなか思うようにはいきませんでした。生活面でも苦しい時期があり、年齢のことや韓国に帰ってからのキャリアに悩んでいた中で、俳優の道を考えました。そこで、自分自身が出演する映像作品を作ることにしました。やれることは限られていましたが、友人たちと作品を作っていく中で、映像や展示表現などのメディアアートに興味を持ち、最初の個展を開くに至りました。そして、 “匂い”をテーマにした2度目の個展を開催する際に、映像とその空間に合う香りが必要になりました。韓国の調香師やメーカーに相談したのですが、納得のいく香りを作ってくれるところがなく、「だったら、自分で作ろう」と思ったのがきっかけです。

 しかし、フレグランスを作る過程がこれだけ大変だとは想像もしていませんでした。 自分の理想と現実的な問題のギャップを埋めることが本当に大変でした。クオリティーだけは譲れず、ローンチまで4年ほどかかりました

WWD:プロダクトを作る過程で大変だったことは?

セハン:例えば他社ブランドはフレグランスのボトルを作る時、既成のモールド(金型の一種)を使うことが多いのですが、「ナフ」はガラスの比率や透明度など、自分の理想をかなえるためにモールドから作りました。そこに想像以上に費用や時間がかかりました。当時は資金も少なかったので、まずはモールドに投資をし、モデルの活動で収益が入ってきたらまた次のステップと、とても時間がかかりましたね。これだけ資金が必要だとわかっていたら、やらなかったかもしれません(笑)。

「アイデアは経験から生まれる」

WWD:ストーリーやメッセージ性の強いプロダクトが多い。

セハン:モデル活動や旅行で感じたことなど、アイデアは全て私自身の経験から生まれました。“プア バット セクシー”という香りは、 モデルの仕事で訪れたベルリンから着想を得ました。ベルリンの街の風景やそこに暮らす人たちのファッション性を表現したいと思い、調べていく中で見つけたのが“POOR BUT SEXY(貧しいけれど魅力的)”という言葉です。2000年代初頭、ベルリンには多くの若いアーティストたちが集まり、自由に表現し、活動していました。そんな彼らが掲げたスローガンだったんです。「ナフ」や、自分のこれまでの活動を代弁してくれるような言葉だと思い、香りで表現しました。

WWD:思い入れのある香りは?

セハン:“チャイルド オブ ザ ナインティーズ”の香りです。“90年代の子供たち”という意味ですが、90年代のムード、その時代のコンテンツからインスピレーションを受け、自分自身も過ごしたあの時代の思い出を表現しました。同じように90年代を懐かしく思う人たちに手に取ってもらいたい香りです。

モデルの経験から得たクリエイティブへの情熱

WWD:キービジュアルも非常に印象的だ。

セハン:まずは自分が表現したい理想のイメージの参考資料をたくさん集めて、スタッフたちとじっくり話し合います。 常に意識しているのは、「ナフ」のテーマである“RAW SENSUALITY(ありのままのセクシーさ)”をしっかりと表現できているか。納得いくまで何度も話し合います。

また、モデルの仕事で世界のトップブランドと接する機会に恵まれました。 世界的に活躍するフォトグラファーやクリエイター、映像ディレクター、エディターと仕事をする中で、多くのことを学びました。人に響くクリエイティブがどういったものなのか、その基準を明確にすることができました。

WWD:特に気に入っているビジュアルは?

セハン:“エスオーサーティシックス”のビジュアルです。ベルリンにあるクラブから名前を取りました。ガラスの透明感と底の厚みにこだわったフレグランスのボトルが、ウイスキーのボトルのように見えて。クラブのムードと、ウイスキーを飲んでいるシーンをイメージしながら構図やライティングを試行錯誤しました。

“チャイルド オブ ザ ナインティーズ”のイメージムービーも大好きです。 90年代のビンテージなムードを表現しました。90年代の自由なファッションや音楽を表現するためビンテージカメラを使用したのですが、モデルの自由な表現が私の中のイメージにぴったりとはまりました。

WWD:今後チャレンジしたいことや、構想していることは?

セハン:既存のフレグランスブランドにはないアプローチをしたいと思っています。 新しい香りを生み出しながら、映像やストーリー性の表現など、常に何ができるかを考えています。 ファッション的なアプローチ、空間表現など、どうやって香りを表現するか、さまざまなことにチャレンジしたいです。

WWD:おすすめしたい香りは?

セハン:7月に伊勢丹新宿本店のメンズ館で開催された「香水夏市 curated by ISETAN MEN’S」に出展した際は、“フィービー”という香りが1番人気で、多くの方に購入いただきました。ジャスミンとムスクを軸にした清潔感のある柔らかな香りなので、ぜひこの香りを試していただきたいです。あと、私が1番好きな“プア バット セクシー”は、レザーやスパイスのユニークな組み合わせの香りなので、実際に体験してほしいです。

WWD:「ナフ」をどんなブランドに育てていきたい?

セハン:まずは、より多くの人に知っていただき、好きになってもらえるブランドに育てていきたいです。ニッチフレグランスという枠にとらわれることなく、映像やビジュアルなどのアプローチを含めて、ファッショナブルなフレグランスブランドとしてポジショニングしていきたいです。

◾️「ナフ」ポップアップ
期間:8月7日〜9月6日
場所:「バーニーズ ニューヨーク」銀座本店、神⼾店、福岡店

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