ファッション

ランニングコンセプトストア「ディスタンス」創業者が語る“ランを文化にする”新リテール像

3月26日、ランニングセレクトショップ「ディスタンス 東京」が渋谷・神宮前にオープンした。2018年、フランス・リヨンでの創業からヨーロッパを拠点に展開する同店にとってはアジア初の進出となる。創業者のギヨーム・ポンティエとザヴィエ・タハーに、出店の背景からブランド戦略、プロダクト開発まで詳しく聞いた。

WWD:日本・渋谷をアジア初出店の地に選んだ理由は?

ギヨーム・ポンティエ(以下、ギヨーム):前提として、私たちは最初からフランスの外に出ていくことを考えていた。実際にコペンハーゲンのようにフランスから比較的近い都市で展開を試みたり、ケニアのようなランニングカルチャーが強い場所にも出店している。その流れの中で、ニューヨークや東京といったグローバルシティは常に意識していた。東京を選んだ理由はいくつかあるが、最も大きいのはランニングがすでに文化として根付いている点。日本には駅伝や部活動の文化があり、「走ること」が日常の一部になっている。これは世界的に見ても非常にユニークで強い土壌だ。「ディスタンス」が目指している方向性と非常に親和性が高いと感じた。

ザヴィエ・タハー(以下、ザヴィエ):加えて、個人的なネットワークがあったことも重要だ。ビジネスはもちろんだが、人とのつながりをベースに広げていくことを大切にしているので、日本でのコネクションがあったことは大きな後押しになった。最終的にはロジックだけでなく、「今ここでやるべきだ」というフィーリングも大切にしている。

WWD:「ディスタンス」の強みや大切にしている価値観は?

ギヨーム:私たちが常に意識しているのは“オーセンティシティー”と“コミュニティー”。ランナーとの距離を近く保ち、彼らの声を聞き続けること。コミュニティーの中に入り、そのバイブスやリアルな感覚を理解することが何より重要だと考えている。単にプロダクトを販売するだけでなく、ランナー同士がつながり、刺激し合える場をつくること。それがディスタンスの存在意義。だからこそ「正しいことをする」という姿勢を大切にしている。新しいアプローチを取り入れながらも、常にランニングとパフォーマンスを軸に据える。このバランスが重要。

ザヴィエ:また、私たちはランニングそのものへの愛情を非常に重視している。優れたシューズやウエアを提供するのはもちろんだが、それ以上にコミュニティーを盛り上げること、ランニングの楽しさを共有することが本質だと考える。

WWD:店名「ディスタンス」に込めた意味は?

ザヴィエ:「ディスタンス」という言葉はフランス語と英語で同じ意味を持ち、非常にユニバーサル。ランニングにおいても距離は重要な概念であり、短距離から長距離まであらゆる文脈に当てはまる。さらに、私たちは単なるリテールではなくブランドとしての展開も視野に入れているため、その両方に適した名前であることも重要視した。響きの良さも含めて、非常にバランスの取れた名前だと思っている。

WWD:ターゲットとするランナー像は?

ギヨーム:「For all runners(全てのランナーのために)」という考え方を掲げていて、特定の層に限定することはない。ビギナーからサブスリーを目指すランナー、さらにはプロアスリートまで、すべてのランナーに向けた存在でありたいと考えている。多くの競合ショップはエリート向け、もしくは初心者向けのどちらかに特化しているが、「ディスタンス」はその両方をつなぐ存在でありたい。

ザヴィエ:例えば、5〜6時間かけてフルマラソンの完走を目指す人もいれば、日常的にトレイルで数十キロを走る人もいる。そのすべてを包含するのが私たちのスタンスだ。重要なのはレベルではなく、「走ることを愛しているかどうか」。その情熱さえあれば、誰でもコミュニティーの一員になれるという考え方だ。

WWD:ファッション性も重視してみえるが、アパレルの展開については?

ギヨーム:私たちは“ファッション性”という言葉はあえて使わない。もちろん見た目の良さやスタイルは重要だが、本質はあくまでランニングにある。大切なのは「どう機能するか」、そして「どう生活に溶け込むか」。ランニングは特別な行為ではなく、日常の延長線上にあるものだと考えている。だからこそ、スポーツと日常生活の境界をなくしたい。ランニングウエアを着たまま一日を過ごせるようなスタイルを提案している。今日はレースの日、今日は仕事の日、といった区別をなくし、すべてをシームレスにつなげていくイメージだ。その架け橋として、ランニングカルチャーをルーツに持つ日常で着られるファッションアイテムは展開していく。現時点ではフーディーやソックス、キャップ、コットンTシャツなどが中心だが、これはあくまでスタート段階。今後はよりパフォーマンスに特化したテクニカルアパレルも展開する予定だ。

WWD:セレクトしているブランドの基準は?

ザヴィエ:大きく分けて「人」と「プロダクト」の2つ。まず、そのブランドの背景にいる人々との関係性。どのようなビジョンを持ち、どこに向かっているのか。その方向性が私たちと一致するかどうかを重視している。実際に一緒に時間を過ごし、対話を重ねる中で判断していく。もう一つはプロダクトの質とレンジ。単に良い製品であるだけでなく、ビギナーから上級者まで幅広いランナーに対応できるラインアップがあるかどうかが重要。例えば「ナイキ(NIKE)」や「アシックス(ASICS)」のように、多様なニーズをカバーできるブランドは魅力的だ。逆に、人としての相性が良くてもパフォーマンスに特化しているなど、プロダクトが十分でなければ取り扱わないし、その逆も同様。最終的にはこの2つが揃って初めて一緒に仕事をすることになる。

WWD:2人が個人的に注目しているシューズは?

ギヨーム:私が最近気に入っているのは「ナイキ」の“ボメロ プラス”。履き心地もいいが、デザインが好きでランナーにもファッションから入る人にもおすすめできる。コラボレーションもする予定だ。

ザヴィエ:私は「アシックス」“スーパーブラスト3”。平行線になったデザインの良さと、オケージョンを選ばない使用感がいい。

ギヨーム:また、「サッカニー(SAUCONY)」の“エンドルフィン スピード 5”もオープニングコラボレーションとして用意した。こちらも日本の店舗ではここだけでしか手に入らないアイテムなので注目してほしい。

WWD:オリジナルプロダクトの展開は?

ザヴィエ:私たちはいきなり大きなコレクションを作るのではなく、まずコミュニティーを育てることから始めた。その一環としてソックスなどの小さなプロダクトを展開し、ブランドへの共感を高めてきたが、今後は本格的にプロダクトラインを拡張していく。4月にはTシャツやショーツ、ロングスリーブなどのベーシックなテクニカルアパレルを発売し、9月にはさらにクリエイティブで幅広いコレクションを展開する予定だ。私たちは多くのブランドと日々接しているため、どの製品が機能していて、何が市場に足りていないのかを理解している。その知見を生かし、「理想的なTシャツ」や「理想的なショーツ」を作ることができる。また、カラーやデザインにおいても、既存市場にないものを提案していきたいと考えている。

WWD:来店客にはどのように楽しんでほしい?

ギヨーム:オープン初日には、観光客、トップランナー、ビギナー、フォトグラファー、アーティスト、マーケターなど、本当にさまざまな人々が集まった。その多様性こそが私たちの理想だ。この場所には、レベルや職業に関係なく誰でも来てほしい。まずは気軽に立ち寄り、空間やコミュニティーを体験してほしいと思っている。ランニングを軸にしながらも、それ以上の広がりを持つ場所として機能していくことを期待している。

■店舗概要
店舗名:©DISTANCE TOKYO(ディスタンス 東京)
住所:東京都渋谷区神宮前6-18-12
電話番号:03-6419-7507
営業時間:11:00~20:00(不定休)

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