
ネット通販やライブコマース、スマホ決済、ゲームなど、次々と世界最先端のテクノロジーやサービスが生まれている中国。その最新コマース事情を、ファッション&ビューティと小売りの視点で中国専門ジャーナリストの高口康太さんが分かりやすくお届けします。今回のテーマは、「AIエージェント」。日本でも徐々に話題になっていますが、中国ではすでにバイトダンスの「ドウバオ(豆包)2.0」、アリババの「クウェン(Qwen)3.5」を筆頭に、ECや旅行分野などで導入が進んでいます。AIエージェントの登場は、何を変えつつあるのか。実際の体験リポートも含めてお届けします。(この記事は「WWDJAPAN」2026年3月16日号の転載です)
今年の旧正月、最大の話題は
AIエージェントのアリババ「クウェン」&バイトダンス「ドウバオ」に
「AIエージェントの転換点が到来した」―AIチップメーカー「エヌビディア」を率いるジェンスン・ファンCEOは2月に行った決算説明会で高らかに宣言した。これまでのAIはユーザーの指示に対して返答を返すという一問一答式だったが、AIエージェントは与えられた指示を達成するために、AI自らが計画を立て、ブラウザを操作して情報収集し、ドキュメントやグラフの作成といった成果物を作り出す。AIエージェントはさまざまな分野で活用が見込まれているが、中国における小売や旅行で注目されているのがデバイスシフト。AIに指示するだけでネット購入、旅行予約が完了するようになれば、これまでのマーケティングがひっくり返る。AIエージェントはどこまでその未来に近づいているのか、最新モデルを検証した。
中国の旧正月休みはテック・マーケティングの繁忙期だ。休みを使って新しいサービスを使ってみよう、帰省した子どもに便利なアプリの使い方を教えてもらおう。こうしたニーズをあてこんで、各社は新サービスを発表し、大々的な宣伝を展開する。2015年にはモバイル決済「ウィーチャットペイ」が中国版紅白と呼ばれる大みそかのテレビ特番で電子マネーのお年玉を配り、先行するアリペイに追いつく起点となった。18年には抖音(ドウイン、中国版TikTok)がインフルエンサー・マーケで一気にユーザー数を増やした。
今年はロボットとAIの宣伝が乱舞する、例年以上のハイテク旧正月となった。もちろん、AIエージェントも登場している。「ティックトック」のバイトダンスの「ドウバオ(豆包)2.0」、アリババの「クウェン(Qwen)3.5」だ。
現在、中国で主流の販売チャネルはライブコマース(動画配信とネットショッピングの融合)だ。その要点は「サーチコスト」の軽減にある。ネットショッピングは難しい。実物を見ずに、いくつかの商品を比較して、必要な商品を探し出さなければならない。その上で、どこで買うのが一番リーズナブルかを調べる必要もある。有名インフルエンサーが扱っている商品ならば、偽物や粗悪品はないはず。しかも「全網最低」(ネットで一番安い価格)を保証してくれて、理由を問わず7日間の返品を受け付けることが一般的だ。何も考えずに、有名インフルエンサーのライブ販売で商品を買えば、損はしないというわけだ。インフルエンサーは話芸を駆使して楽しい配信をやっているが、内容は一切無視して、販売されている商品をさくっと注文してアプリを閉じるといった消費者も多い。
旅行予約でもサーチコスト軽減のニーズが強い。航空便やホテル、観光地など決めるべき要素が多いのでライブコマースでは難しい部分があるため、幅を利かすのが「攻略」と呼ばれる情報サイトである。だが、AIエージェントはこうした既存の販売チャネルを塗り替える可能性がある。
AIエージェントを試してみた
定期購読についてはこちらからご確認ください。
購⼊済みの⽅、有料会員(定期購読者)の⽅は、ログインしてください。
