中国でメガヒット！アリババの地図アプリ「AMAP」がフェイク口コミを「ビッグデータ×AI」で駆逐

ネット通販やライブコマース、スマホ決済、ゲームなど、次々と世界最先端のテクノロジーやサービスが生まれている中国。その最新コマース事情を、ファッション＆ビューティと小売りの視点で中国専門ジャーナリストの高口康太さんが分かりやすくお届けします。今回はアリババの地図アプリ「AMAP（以下、Aマップ）」の新機能を取り上げます。中国では口コミが悪意や嫌がらせに加え、AIボットによる汚染や商業主義の行き過ぎなどで汚染され、信用が急低下し、問題になってきました。そこで「Aマップ」が打ち出したのが、ビッグデータと掛け合わせた「新しい口コミ評価」。9月にリリースするや、爆発的な評価とユーザー数を獲得しています。いったいどんなものなのか。その内実とは？（この記事は「WWDJAPAN」2025年10月20日号の転載です）

AIボットが口コミを汚染

口コミは死んだのか。ウェブサービスの台頭とともに普及したのがユーザーによる口コミ・レビューと点数評価だ。日本でもグーグルマップの「口コミ」を参考にしている人は多いだろう。居酒屋やカフェといった飲食店やアパレルショップはもちろん、医療機関、塾まで、雑誌やガイドブックよりも多種多様なカテゴリーを網羅し、しかも“生の声”を見ることができる。革命的なサービスだったが、今となっては嫌がらせのようなレビューや口コミ、あるいはヤラセなどがSNSで常に話題となっている。特に中国ではAIボットにより低コストかつ大量に作られたフェイクレビューが、これらの口コミを汚染。さらに口コミ・レビューが掲載されるウェブサービスの商業主義も問題になっている。広告費を支払ったサイトがランキングの上位に表示される、酷評レビューが消されるのは極端な事例としても、レビューの表示順はブラックボックス化したアルゴリズムによって決められることが多い。かつては“生の声”だったはずの口コミ・レビューが、今ではフェイクと広告によって汚染され、怪しげな代物に成り下がってしまった。おそらく誰もが痛感している現実だが、代替案が見つからない中で使われ続けているのが現状だ。

ところがここにきて、ユニークなオルタナティブが提示された。仕掛け人は中国EC（電子商取引）の巨人アリババグループ。フェイクレビューと広告から切り離した、消費者の真実の評価をAIの力によって探り出す「Aマップ ストリートランキング」が今、爆発的なヒットとなっている。

Aマップ（高徳地図）はアリババ傘下の地図・カーナビアプリだ。MAU（月間アクティブユーザー数）は8億9000万人と、中国地図アプリでトップシェアを誇る。マップから店を探せるだけではなく、割引きクーポン配布や店の予約、配車アプリ呼び出しなど豊富な機能を誇る。そのAマップが9月10日、新機能「Aマップ ストリートランキング（高徳掃街榜）」を発表した。飲食店やホテル、観光地などで5点満点の評価がつけられランキングを見ることができる……という点は従来と同じなのだが、変わったのは点数のつけ方だ。従来はユーザーレビューによって評価が決まっていたが、新機能では「行動データ」と「信用スコアによる補正をかけたユーザー評価」によって算出する。

行動データは「ナビを使って訪問した人数」「目的地訪問までの移動距離数」「リピーター数」「検索回数」「お気に入り登録数」から算出。実際に現地を訪問したかどうか、何回店に行ったのかといったリアルなデータから点数を算出する。