アトモスの創業者・本明秀文さんの独自の目線と経験から、商売のヒントを探る連載。輸出ビジネスにおける「消費税還付」は、ファッション業界でも馴染みのある仕組みだろう。国内のみならず、海外との取引が身近になった昨今、この制度を理解しているかどうかでビジネスの見え方は大きく変わる。転売市場と隣り合わせのスニーカーも、かつては海外に輸出されてきたが、今、その対象はiPhone、そしてゴールドだ。今回はキャリアの原点が貿易商にある本明さんが語る、ゴールドの裏側。(この記事は「WWDJAPAN」2026年2月16日号からの抜粋です)
本明秀文(以下、本明):上野と羽田で起きた巨額現金強盗(未遂)事件は、背景に金取引や金の密輸グループの存在が取り沙汰されているよね。これについてはさまざまな見方があるけど、僕は輸出の消費税還付の仕組みが関係しているんじゃないかと考えている。まず前提として、輸出した商品には消費税がかからない(輸出免税)。その商品を国内で仕入れた場合は消費税がかかっているから、その消費税分が還付される構造。この還付金の上位には自動車メーカーが多くて、試算ではトヨタが1位、次いでホンダとされている。輸出ビジネスにとって消費税還付は、資金繰りに大きな影響を与える大事な要素になっているんだよね。
──自動車産業は、輸出比率が高く、仕入れ額も大きいですからね。
本明:そう。だけど、これと似たことを今、転売ヤーたちがやっている。朝からApple Storeに並んで、iPhoneを何台も買っている人たちがいるでしょ。あれは、iPhoneを日本で仕入れてドバイなんかの中東に流している。例えば、1台20万円のiPhoneを国内で税込22万円で買った場合、それを中東のディーラーに22万円で売るじゃん。輸出証明書を出したり正規に手続きを踏まないといけないけど、iPhoneを税込22万円で仕入れているわけだから、消費税分の2万円が還付されて、それが転売の利益になる。かつてはスニーカーも転売されていたけど、スニーカーだとかさばる。だけど、iPhoneなら小さくて、単価が高いから効率がいい。その最も効率のいい“小さくて高い”ものが金。で、今回の金の話だけど、これは日本から金を海外に売ったときの消費税還付で儲けているんじゃないかと僕は思っている。例えば、まず日本で会社を作ったAさんが、国内で税込110万円で仕入れた“馬”の形をした金を、海外にいるBさんに110万円で売ったとしよう。BさんがAさんに額面通り110万円を支払えば、商売は成立。Aさんは仕入れにかかった消費税分の還付金を受け取れる。で、Bさんが海外からその馬の金を持って日本に入国する。このとき、本来は税関で消費税を申告・納税しなければならないけど、これをせずに密輸する。で、持ち込んだ金をAさんに110万円で売って、溶かして“羊”の形に変える。で、またBさんに110万円で売り、Aさんは還付金を受け取る……といった具合で、これを何度も繰り返して儲ける。実際には帳簿やインボイスの要件も絡むからどうやって会計処理をしているのか、僕には分からないけど、全員グルの可能性もあるよね。金(かね)の流れが分からないように現金でやりとりしているから、その現金を持ち運んでいるのが噂になって、襲われたってことも十分考えられる。
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