
オンワード樫山の「アンフィーロ(UNFILO)」が急成長を続けている。2026年2月期で通期売上高100億円を突破する見通しで、今春には初となるブランド単独店を出店する。これまで公式ECとオンワードブランドの複合ストアを中心に展開してきたが、27年2月期をブランドの「第2章」と位置づけ、直営店戦略を次なる成長のドライブとする構えだ。
「アンフィーロ」は21年秋、“機能美”をコンセプトにスタート。買いやすい適正価格と機能性、合理的なデザインを打ち出し、代表商品の美脚パンツ“最愛ジョグパン”のヒットを契機に、働く女性の間で認知を拡大。立ち上げ当初は自社EC専売だったが、その後同社のブランド複合型のSC中心業態「オンワード・クローゼット・セレクト(以下、OCS)」での展開も開始した。
ECとSCの強化が育てた虎の子
百貨店婦人服フロアの客離れにより、多くの大手アパレルが次なる収益の確立を目指している現状。なぜオンワードは「アンフィーロ」の業績を短い期間に大きく伸ばし、同社の主力ブランドに比肩する規模に育てることができたのか。そこには、オンワードが全社を挙げて注力してきた「ECの成長」と「SC戦略の強化」が両輪で機能した背景がある。
オンワードはコロナ禍以前から自社EC「オンワード・クローゼット」へ集中的に投資しており、17年2月期に約150億円だった同社のEC売上高は、25年2月期には約516億円へと3倍以上に拡大した。
さらにSC販路の戦略的強化を主眼に21年に開発したOCSでは、オンラインストアの商品を実店舗に取り寄せて試着できるシステム「クリック&トライ」を導入。これにより地方客のニーズを的確に取り込み、ECと実店舗の相乗効果を生み出した。OCSは25年2月期末には166店舗まで拡大し、売上高は前期比18%増。アンフィーロはこの新しいビジネスモデルの中心ブランドとして大きく成長を遂げた。
結果、オンワード樫山の26年2月期上半期(25年3〜8月期)の売上高構成はSCが36.3%、百貨店が約34.3%、ECが約24.3%と、販路がバランスよく3分化するまでになった。アンフィーロは、ECとSCの成功をまさに象徴する存在と言えるだろう。
2つの“パ”
販路戦略だけでなく「アンフィーロ」というブランド自体のコンセプトが、合理性を求める現代の消費者の志向に深く刺さった部分も大きい。そのキーワードとなるのが「タイパ(タイムパフォーマンス)」と「コスパ(コストパフォーマンス)」だ。
服選びの「タイパ」とは何か。「アンフィーロ」の最大の武器は「吸水速乾」や「UVカット」といった日常生活で役立つ機能性を備えた素材にある。そして「アンフィーロ」のMDの特徴は、人気の素材をジャケット、ブルゾン、トップス、ボトムスなど多彩なバリエーションで横展開している点にある。これにより「あの素材でこの形なら間違いない」と消費者にロジカルに伝わり、メリットが刷り込まれることで、スムーズなリピート買いを誘発。結果的に服選びに悩む時間を短縮し、「この素材のこの形が良かった」という説得力のある口コミが広がった。
今春オープンする単独店1号店(約50坪)では、このストロングポイントを明確に伝える。OCS既存店の販売区画(15〜25坪程度)と比較すると、フルラインアップを見せられる一方で、大型化による買い回りの効率性は落ちる懸念がある。その分、店舗では機能性が一目でわかる動画や、印象的なキャッチコピーのPOPを散りばめる。「服を情報として飲み込みやすくする」ことで、タイパを重視する客が直感的に買い物を楽しめる設計を目指す。
そしてもう一つが、物価高に寄り添う「コスパ」。原価高騰が続くアパレル業界において、買いやすい価格設定は支持の大きな要因だ。ただし「ユニクロ」や「無印良品」などコスパ軸では強力な競合もひしめく中で、カーブ、スリムフィット、フレア、ワイドなどシルエットが豊富で、さらにストレッチと撥水防汚の機能まで備わったデニムシリーズや、水性の汚れに強いラッシュガード素材の新シリーズなど、独自性のある商品提案が光る。それでいて、価格は数千円から1万円台に収まるものも多い。ロングセラーの“ジョグパン”は今季、センタープレスが洗濯で取れない加工を施しアップデートさせながら、価格は従来通りに据え置いた。
価格維持の努力について、山本洋輔事業部長は次のように語る。「事業拡大による素材調達のスケールメリットの恩恵ももちろん受けているが、プライスを抑えるために本当に大切なのは地道な努力。外部委託してきた検品作業を工場内で内製化したり、取引先とは逐次説明会を開いて目線合わせをしたりと、あらゆるコストを分解して品質と価格を維持してきた。ただ僕らには、コストやプライスに無理やり『はめる』ため、品質を妥協する考えはない。満足いくものを10点満点で作った上で、どう工夫して価格に抑えるか?を考えている」。
オンワードのECとSCを両輪で強化した経営戦略と、機能と価格を妥協なくバランスさせる「アンフィーロ」のブランド戦略。双方が噛み合った結果、スタートから4年あまりで100億円という売上高につながった。山本部長は「ブランドの次なる大きな一歩である単独ストアを、絶対に成功させたい」と前を向く。