オンワード樫山がSC販路拡大にアクセルを踏む。今秋、SC向けのウィメンズ業態「エニィ スィス(ANY SIS)」とファミリー業態「エニィ ファム(ANY FAM)」を統合し、「エニィ(ANY)」として新たにスタートを切る。すでに主力ブランドに成長しつつある「アンフィーロ(UNFILO)」との2本柱でシェア拡大を目論む。
「エニィ」の傘の下に、カジュアルウエアの“エニィ”(トップス2990円〜、ボトムス4990円〜)、よりファッション性やトレンドを意識した“エニィ スィス”(トップス5990円〜、ボトムス8990円〜)、子供服の“エニィ キッズ”(トップス1990円、ボトムス3500円)の3レーベルを展開する。現在のリアルの販売拠点は約200店舗(複合業態含む)あるが、既存の「エニィ ファム」と「エニィ スィス」の店舗は、新業態の「エニィ ストア」もしくは複合業態「オンワード・クローゼットセレクト(OCS)」などへ順次転換する。
「エニィ ファム」が誕生した1999年以降、SC向け低価格カジュアルウエア市場は、ファストファッションの進出もあり、競争が激化している。そうした中、越智大輔オンワード樫山執行役員 第三カンパニー 副カンパニー長は、「これまでブランドが持っていた価値を十分に伝えきれていなかった」と課題を語る。「エニィ ファム」や「エニィ スィス」は商品企画において自社でパターンを引き、技術指導済みの提携工場で生産してきた。「これは品質にこだわってきた私たちならではの価値。それだけのクオリティーを、あの価格で実現してきた事実を、もっと正面から発信すべきだと感じている」。
そのような考えのもと、“手に届く、高品質を、この価格で。”を新たなブランドキャッチコピーに据えた。「これまでオンワードのブランドは世界観やムードを謳うことはあれど、“価格”のお得感をここまでハッキリと伝えるのは初めて」という。商品名も“使えるコンフォータブルブラウス”や“使えるビューティパンツ”といった、価値がダイレクトに伝わるものに刷新。店頭POPでも「1. 美脚見えシルエット」「2. センタープレスできれい見え」「3. お手入れ簡単」といった具合に、商品ごとのストロングポイントを3つ明記する形式を徹底する。さらに、SNSでの話題作りを狙った雑貨・アクセサリーの展開や、キャラクターIPとのコラボレーションなども積極的に打ち出していく。
百貨店の構造的不況の中、SC拡大に注力
オンワードは近年、地方百貨店の閉店や婦人服の客離れなどにより、従来の主力だった百貨店販路は縮小傾向にある。そうした中でSC販売は相対的に拡大しており、2025年2月期におけるSC構成比は35.0%(前年同期比+1.5pt)と、百貨店の36.3%(同-1.7pt)とほぼ並んだ。成長ドライバーとなっているのが、複合業態「OCS」だ。
OCSは、店舗にないアイテムをEC上で取り寄せできる「クリック&トライ」などOMO施策を導入し、百貨店空白地帯のユーザーや、効率的な買い物を重視する層を獲得。25年2月期末には166店舗まで拡大し、売上高は前年同期比で18%増となった。
こうしたハード面の整備に加え、ソフト面でも成果を挙げているが21年秋立ち上げの「アンフィーロ(UNFILO)」だ。直近の25年2月期の売上高も前期比93.1%増と勢いよく成長しており、年間売上高100億円もすでに射程。「OCS」ではすでに中核ブランドとなっており、単独店の出店も視野に入る。
「アンフィーロ」は、EC起点でユーザーの声を迅速に商品開発に反映し、「シーズンレス」「多機能」「快適性」といったニーズを、こなれた価格と丁寧な設計で具現化。“最愛ジョグパン”など、働く女性から支持されるヒット商品を生み出している。その企画手法や合理的なものづくり、価値を届ける手法は「エニィ」にも応用していく方針だ。