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銀座に時空を超える新種のグルメスポット 伝説のコーヒーハウス「バシャ コーヒー」が提唱する“コーヒーガストロノミー”とは

マラケシュ発コーヒー「バシャ. コーヒー(BACHA COFFEE)」(以下、バシャ)が12月、日本に上陸した。私はどちらかというと紅茶派だが、銀座・すずらん通りのシャッターに「バシャ」上陸の表示がされて以来、オープンを待ち望んでいた。マラケシュの宮殿で誕生したという歴史をはじめ、世界各地から集めたコーヒー約200種類そろえる専門性、エキゾチックでレトロなブランドの世界観から、ずっと試してみたいと思っていた。「バシャ」は、いわば、同じ通りに銀座本店を構える紅茶ブランド「マリアージュ フレール(MARIAGE FRERES)」のコーヒー版のような存在。19年には、イエローのパッケージで知られる「TWGティー」を手掛けるシンガポールのV3グルメが買収し、中東やアジアを中心に出店を加速している。日本では、「TWGティー」などを輸入販売する東急フロントグルメが手掛ける。ここでは、「バシャ」のブランドの歩みや同ブランドが提唱する“コーヒーガストロノミー”について紹介する。

政治家や文化人の社交場“伝説のコーヒーハウス”が復活

モロッコで一般的に飲まれるのは甘いミントティー。スーク(市場)では、店主たちがフレッシュなミントで淹れたミントティーを片手に語り合う風景が日常的に見られる。モロッコはイスラム圏ということもあり、ミントティーを先住民族ベルベル人のビール”と呼ぶこともある。そのためか、モロッコではコーヒーは嗜好品というイメージが強い。もちろん、カフェのメニューにはあるが、現地の人が飲んでいるのはミントティーだ。ところが、モロッコとコーヒーのつながりは、約600年前に遡るという。当時のモロッコの学者アブー・アル=ハサン・アル=シャーディリーがエチオピアでコーヒーを見つけ、世界中にコーヒー文化が広まったという説があるようだ。

「バシャ」のルーツは、1910年にマラケシュのメディナ(旧市街)のダール・エル・バシャ宮殿で誕生したコーヒーハウス。20世紀始めには、当時の米大統領フランクリン・ルーズベルト(Franklin Roosevelt)や英首相ウィンストン・チャーチル(Winston Churchil)などの政治家をはじめ、チャーリー・チャップリン(Charlie Chaplin)、ジョゼフィン・ベーカー(Josephine Baker)、モーリス・ラヴェル(Maurice Ravel)などの文化人が集う社交場として賑わったという。彼らは、市松模様の大理石の床に色彩豊かなゼリージュ(モロッコの伝統的モザイク)の柱が調和した優雅な回廊で、淹れたての“アラビアコーヒー(アラビカコーヒー)”を味わいながら語り合っていたそうだ。

そのような輝かしい時代を経て「バシャ」は第二次大戦後に閉店。2010年から宮殿の修復が始まりダール・エル・バシャ コンフルエンス博物館がオープンした際に博物館内のカフェとして再開が決定し、伝説のコーヒーハウスとして復活した。マラケシュ本店は、社交場として栄えた当時の雰囲気を再現するために時代背景に忠実に再現されているという。古き良き時代にタイムスリップしたような空間で味わうコーヒーは格別だろう。どこか、パリ・ヴァンドーム広場の「リッツ パリ(RITZ PARIS)」内にあるヘミングウェイバーとイメージが重なるということもあってか、「バシャ」は23年、同ホテル内に店舗をオープンしている。

“コーヒーガストロノミー”を象徴する洗練された新感覚の味わい

“コーヒーガストロノミー”を提供するというだけあり、「バシャ」のコーヒーは、“最高のものを、妥協なく”という哲学に基づいている。世界各地の生産者から直接にアラビカ豆を仕入れ、手仕事で厳選し、伝統的なスローロースト製法で焙煎。提供するのは、世界35カ国から調達された最高級のシングルオリジンやブレンド、フレーバーコーヒー、デカフェなどさまざまだ。200種類以上もあるので、いろいろ試して味わいを比較するのも楽しいだろう。

コーヒールームでは、ゴールドのポットに丁寧にハンドドリップされたコーヒーが提供される。シグニチャーの“1910”はベリーのフルーティさとクリームのまろやかさが融合。人気の“セヴィル オレンジ”は、オレンジの酸味とチョコレートの甘い香りがバランスよくお互いを引き立てている。いずれも、雑味が全くなく、苦味も控えめ、すっきりとした味わいだ。素材の香りと味を感じられ、非常に洗練されていて美味しい。コーヒー豆とは、コーヒーノキに実る果実コーヒーチェリーを焙煎したもの。「バシャ」のコーヒーは、コーヒーチェリーそのものが持つフルーティな旨みを抽出している。

ついつい豪華なパッケージに気を取られがちだが、「バシャ」のコーヒーには、ストレートに香りや旨みを感じるピュアさがあり、単に「美味しい」ではなく、味に向き合い吟味したくなる。このような感覚こそが、“コーヒーガストロノミー”の意図するところだろう。

銀座の異国情緒漂う空間で新種のヌン活体験

「バシャ」銀座店は、1階はブティック&テイクアウトコーナー、2~3階がコーヒールームになっていて、軽食や食事を楽しむことができる。アフタヌーンコーヒーのメニューもあるので、コーヒー好きにはピッタリだ。1階のブティックは、サフランカラーで彩られた煌びやかな空間。世界35カ国から集められたコーヒー豆の缶やギフト用のコーヒー、オリジナルのコーヒーカップやポットなどが並べられており、正に“映える”空間だ。1階奥のカウンターでは、コーヒーやクロワッサンなどをテイクアウトできるので、気軽に「バシャ」の味わいを試すことができる。コーヒーが1200円、ペストリー類が450円〜。カジュアルにテイクアウトでも楽しめるのは二重丸だ。

2〜3階のコーヒールームは、コロニアルなムード漂うサロンで、ゆったりとコーヒーや食事、スイーツを味わえる。食事のメニューは、モロッコ伝統のケフタ(ミートボール)細切りフライドポテト添えをはじめ、サンドイッチやオムレツ、リゾットなど本格的なものから、ミルフィーユやケーキ、ティラミスなど。クロワッサンやヴィエノワズリーも提供する。コーヒーだけでなく、シャンパンやモクテルなどドリンクメニューも豊富だ。アフタヌーンコーヒーのメニューは3種類から選べる。料金は、コーヒーが1800円〜、料理が2500円〜、ペストリー・デザートが1250円〜、アフタヌーンコーヒーが、6500円〜7500円。銀座の異国情緒溢れる空間で、新種の”ヌン活”や“コーヒーガストロノミー”体験をしてみてはいかがだろう。

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