「雪山でつちかったアイディアを街へ」を掲げて源馬大輔がディレクションする「フェニックス(PHENIX)」が2026年春夏シーズン、「トーガ(TOGA)」とのコラボコレクションを発表した。「フェニックス」の“機能を極める知恵”と、「トーガ」が探求する“構造を再編集する美学”を融合し、アウトドア由来の発想を都市のスタイルに再解釈。黄色と緑の抽象柄は岩肌のミネラルや森に差す光、自然のノイズを表現して、プリーツやタックの動きが“流動する地層”のような立体感を生む。「フェニックス」のクリエイティブ・ディレクターを務める源馬と、「トーガ」のデザイナーを務める古田泰子にコラボレーションについて聞いた。
異常なくらいシルエットにこだわる
デザイナーと春夏は取り組みたかった
WWD:スキーウエアに始まり「雪山でつちかったアイディアを街へ」をコンセプトに掲げる「フェニックス」のみならず、アウター発祥もしくは専業のブランドにとって、春夏シーズンは難しい。秋冬ではなく、春夏シーズンに「トーガ」とコラボレーションする理由は?
源馬大輔「フェニックス」クリエイティブ・ディレクター(以下、源馬):その通り、こういうアウターをメーンとするブランドの春夏は難しい。他のブランドでも、有名なロゴを胸元にあしらったポロシャツがヒットするなどして以降、ようやく春夏シーズンのビジネスが大きくなったりしている。だから、実力のある人と一緒に取り組みたかった。デザイナーとして尊敬するのは、異常なくらいシルエットにこだわっている人。古田さんは、3層構造の生地を使っても、シルエットが美しい。ボリュームをスポーツウエアならではの機能性と共に表現できるから、サンプルを見ても納得。街中ではオーバースペックかもしれないけれど、印象的なボリュームによってアウトドア由来の発想が都市のスタイルに再解釈される取り組みは、ずっと挑戦したいと思っていた。
古田泰子「トーガ」デザイナー(以下、古田):「トーガ」もスポーツウエアにインスピレーションを得ているので、今回のプロジェクトは楽しかった。街でも着られるスポーツウエアは「フェニックス」の得意分野だし、3層構造の生地は(ハリがあるので)ボリュームを表現するのに適している。考えたのは、「トーガ」のどこを切り取るか?“らしい”と言われるメタルづかいを取り入れることもできたけれど、源馬くんから「ボリューム」という“お題”をもらっていたので、ロンドンで発表しているコレクションに通じるボリューム感を追求した。シグニチャーとも言えるメタル使いは減らし、飾りではなく、ボリュームを調整するためのファスナーのスライダーにあしらうなどしている。
源馬:ありきたりのアノラックなんて全然目新しくないし、(「チカ キサダ(CHIKA KISADA)」や「ナゴンスタンス(NAGONSTANS)」とコラボレーションしたファースト・コレクションを踏まえ)名前を載せ替えただけの取り組みにはしたくなかった。となるとやはり、ウィメンズが得意で、独自のシルエットを持っている人がよかった。
重たくないドレスは、
ストレスなくドレスアップできる
古田:「トーガ」でも3層構造の生地から洋服を作ることはできるけれど、「フェニックス」との取り組みのように軽く仕上げるのは難しい。一方今回の洋服は、ラッフルなどで生地をそれなりにたくさん使っているが、重たくない。重くないドレスは、女性がストレスを感じずドレスアップできるアイテム。昨今通年で大事になっている「軽さ」や「保温性」「通気性」などの機能をあらためて意識できて楽しかった。
源馬:逆にダウンがないので、さらに軽やかに表現できている。男性デザイナーだとオーバースペックになりがちだが、今回は引き算が生きた。
古田:「トーガ」自体は装飾性が高いときも多いが、特に最近ロンドンで発表しているコレクションについては、削ぎ落とすことに興味を持っている。時々後ろ髪は引かれるけれど、「ここはデザインを削ぎ落とした方がわかりやすい」のように、デザイン性を盛り込むところはかなり意識して選択している。一方、抽象的な柄はオリジナル。街でもフィットする柄を作ってもらった。
源馬:正直今回は、僕の仕事なんて何にもなかった(笑)。
WWD:そもそもスキーはする?
古田:再開したら、また好きになった。大人になってから雪山に登ったら、あらためて白の美しさに感動した。汚いものを全て隠したり、消し去ったりしてくれる感じがした。そこからみんなのスキーウエアはチェックしているが、「フェニックス」の着用率は高いと思う。
源馬:スキーウエアでは、スウェーデンのナショナルチームのサプライヤーをしており、やはりクオリティは高い。一方自分のラインでは、レザーパンツに「チャンピオン(CHAMPION)」のスエットでスキーとか提案できたらカッコいい。いつか、実現したい。古田さんには、子ども服を作って欲しい(笑)。
「フェニックス」は2026年春夏シーズン、源馬が手掛けるラインと、宮下貴裕による「PHENIX by TKMT」、「トーガ」とのコラボラインを販売する。「トーガ」とのコレクションは、すでに予約販売を受け付けている。