毎週発行している「WWDJAPAN」は、ファッション&ビューティの潮流やムーブメントの分析、ニュースの深堀りなどを通じて、業界の面白さ・奥深さを提供しています。巻頭特集では特に注目のキーワードやカテゴリー、市場をテーマに、業界活性化を図るべく熱いメッセージを発信。ここでは、そんな特集を担当記者がざっくばらんに振り返ります。(この記事は「WWDJAPAN」2025年11月24日号からの抜粋です)
村上:夏以降、検索にAIを使う人が増えて検索流入が減少するなど、われわれのサイトも影響を受けつつ、翻訳や文字起こしにはAIを活用していて、僕自身の働き方も影響を受けています。この先、メディアはどうなっていくのか。毎年恒例のメディア特集ですが、今回はAIの影響にフォーカスしました。
佐藤:最近、海外ブランドを取材すると「エモーションを作り出す」「今ここで体験することの価値」とよく聞くのですが、AIの影響を見据えているのでしょう。AIには作れない価値をメディアがどう作っているのか、興味がありました。村上さんは何が一番印象に残りましたか?
村上:「WWDJAPAN」のクリエイティブ・ディレクターとしてAIエージェントに表紙作りを依頼しましたが、会話では長らく一緒に働いてきたからこそ出てきそうな固有名詞などを操り、相談の咀嚼力と意味付け力に驚くとともに、代替案もすさまじい速さで出してくることに、「この後、人間は何ができるのか?」と考えざるを得ませんでした。
「イマジナリーリープ」こそ“人”ならでは
佐藤:AIエージェントの生成プラットフォームを提供してくれたオーセンティックエーアイの上田徹代表の「最後は選ぶ人のセンスですよね」という言葉が印象的でした。
村上:生成した200〜300枚から取捨選択して数パターンを発展させ、最終的に1つを選ぶ並行処理能力が求められます。そして、無数のアイデアから1つに収れんさせる思いの強さが重要です。センスと思いの源泉、並行処理能力こそ、これからの人間力になるのかもしれません。
佐藤:僕は今回、ヒューマン・インテリジェンス(HI)について、各誌編集長のアンケートをまとめましたが、「その人にしかない視点で、愛を持って何かについて語ること」に、これからのメディアの生きる道があると改めて感じました。最近「イマジナリーリープ」という言葉が気になっています。一見つながりが見えないものに想像的に関連性を見いだし、それをつなぐことができるのは“人”ならではだと感じています。