ファッション

「ドン ペリニヨン」が村上隆とコラボレーション 両者に通ずる共通点とは

プレステージシャンパーニュブランド「ドン ペリニヨン(DOM PERIGNON)」は、「想像は永遠の旅」をテーマに掲げたクリエイティブキャンペーンを行う。起用するのは、俳優や作家、監督として活躍するゾーイ・クラヴィッツ(Zoe Kravitz)、ミシュランシェフのクレア・スミス(Clare Smyth)、アーティストのティルダ・スウィントン(Tilda Swinton)、ダンサー兼振付師のアレクサンダー・エクマン(Alexander Ekman)、アーティスト兼プロデューサー、監督として活動するアンダーソン・パーク(Anderson .Paak)、ミュージシャン、そして俳優やラジオパーソナリティーとして知られるイギー・ポップ(Iggy Pop)、そして日本を代表する現代美術家、村上隆の7人だ。

10月1日、このキャンペーンの一環として、村上隆とのコラボレーションによる限定商品“ドン ペリニヨン ヴィンテージ 2015 村上隆 限定エディション”(750mL、4万3340円)、“同 ロゼ ヴィンテージ 2010 村上隆 限定エディション”(750mL、6万8640円)を発売した。

10月10日に開催した記念パーティーでは、代々木上原のフレンチレストラン「エテ」の庄司夏子による華やかなフードをサーブ。YOON、赤西仁、ヨンアらをはじめとしたセレブリティーが来場。同商品とのペアリングを楽しんだ。

この日のためにジャック・ジラコCEO、ヴァンサン・シャブロン醸造最高責任者が来日。村上隆と3人でインタビューに応じた。

長い歴史を築いてきた
「ドン ペリニヨン」とアートの関係

WWD:「ドン ペリニヨン」によるアートの取り組みは2005年から始まった。

ジャック・ジラコCEO(以下、ジャック):公式な取り組みを発表したのは05年だが、実際には1970年代にはアンディ・ウォーホル(Andy Warhol)が「ドン ペリニヨン」の写真をもとに作品を作ったりもしている。さまざまな形で、われわれと同じ価値観や目標を持っているアーティストとの取り組みの歴史には、何十年にも及ぶ。“シャンパンの父”とも言われるドン・ピエール・ペリニヨン(Dom Pierre Perignon)もまさに、新たなものを掴み取りたいという思いがあったからである。

WWD:「ドン ペリニヨン」にとってアートとはどのような存在なのか?

ジャック:「ドン ペリニヨン」によって、クリエイティブな考え方や姿勢、そしてアートは、必要不可欠な存在であり、カギである。今回のプロジェクトも一回限りで終わるものではなく、今後も継続していく予定だ。われわれにとっての“コラボレーション”とはフェイクなものではなく、真剣にアーティストやクリエイターと共創したいという思いで成り立っている。表面的なパートナーシップ、コラボレーションで終わるのでない。今回行ったコラボレーションも、たくさんのディスカッションを経て、「時空を超えて何かを創り上げたい」という思いで実現した。

WWD:醸造最高責任者として、シャンパンを醸造するときの欠かせないこだわりとは?

ヴァンサン・シャブロン醸造最高責任者(以下、ヴァンサン):“ハーモニー(調和)”だ。修道士だったドン・ピエール・ペリニヨンは知識が豊富で、アッサンブラージュという技法を考えた人物だ。彼が当時「気泡が出る、完璧なワインを作りたい」と考え、さまざまな区画で栽培されるぶどうの個性を把握し、調和を取りながら生まれたのが「ドン ペリニヨン」の現在につながる。そういった彼の精神を受け継ぎ、私もそれぞれのぶどうの個性を把握し、組み合わせ、ときに再構成しながら、完璧な調和を目指して醸造している。

共通点は「遊び心」と「深み」、そして「自然への敬愛」
村上隆とのコラボレーション背景

WWD:村上氏とのコラボレーションに至った背景とは?

ヴァンサン:村上氏の作品には遊び心と深みがあり、われわれが大切にしてきたものと共通している。「ドン ペリニヨン」のボトルには、緊張感や伝統、そして現代的なひねりをつめ込んでいる。作品に対する考え方が非常に似ていると思う。そして自然に敬意を持っているという点もわれわれと深く通ずる部分だ。村上氏といえば、花のモチーフでよく知られているが、「ドン ペリニヨン」はラベルにブドウの葉やつるを描いている。これはわれわれが自然に敬意を示している証だ。そういった、自然を愛でるだけではなく敬意を持っているという点で共通していると感じた。

WWD:醸造が決まってから村上氏にオファーをしたのか、もしくは村上氏とのコラボレーションが決まったのちに醸造したのか

ヴァンサン:ワインの醸造が先ではあるが、村上氏とコラボレーションしたいという思いはずっとあった。先代の醸造責任者の頃から、ビジネスとして日本市場は非常に重要であり、かつ「ドン ペリニヨン」と日本文化のつながりはとても深いものだった。そんな背景を持っていた中で、私も村上氏の作品をよく知っていたし、「いつか何かができたら」と構想していた。

WWD:このタイミングで村上氏とのコラボレーションを決めた理由とは?

ヴァンサン:なぜこのタイミングなのか、というと、星の巡り合わせである。2つのワインが仕上がるタイミングで、「この商品を世に送り出す一番良い形はなんだろう」と考えたとき、村上氏とのコラボレーションに行きついた。

人々が祝福をするのは、非常に儚い瞬間である。花が咲いた瞬間、子供が産まれた瞬間ーー一瞬で終わってしまう儚いものであるが、そのときの祝福する思いは永遠である。村上氏のモチーフである花も、咲いては枯れる束の間のもの。でもその背後には、村上氏が築いてきた歴史があり、永遠の存在である。そんな部分が、われわれが年月をかけて手掛けたシャンパンと通ずると思う。村上氏に依頼をしてから承諾を得るまで1年ほどだったが、実はわれわれの中では4、5年前からコラボしたいという構想があった。村上は今の時代の文化を代表するすばらしいアーティストである。

WWD:村上氏にとって、ワインボトルをデザインするのは初めてだが、「ドン ペリニヨン」にどんな印象を持っていた?

村上隆(以下、村上):僕が若い頃「ドン ペリニヨン」を開けるというのは成功者の象徴のようなものだった。学生のころはシャンパンを買うことはほとんどなかったので、自分にとっては少し遠い存在のように感じていた。だからこそ、こうしてコラボレーションができたのは少し不思議な感覚だ。1年ほど前、庄司夏子さんのレストラン「エテ」に行ったときに、「ドン ペリニヨン」の“P2”を出してくれ、そのときに初めてシャンパンのおいしさを知った。

WWD:完成までのプロセスで苦戦した点とは?

村上:僕が既に持っているフラワーのアイコンを活かしたデザインなので、多くの人は簡単な作業だと思うだろう。でも実際は、日頃から、花と花の重なり合いなど、絶妙なバランス感を調整し、非常に細かい部分に気を配りながら制作を行なっている。特に今回のコラボレーションでは、フランスの法律の規制などで改善しなければいけない部分も多くあった。プロジェクトに関わる全員が深いリスペクトと情熱を持っていたからこそ、深夜帯に連絡が飛び交うことも多々あった。シャンパンの寿命が永遠であることに対して、このラベルがどのように生き続けるかを心配しながら取り組んだ。

WWD:フランス版とインターナショナル版ではデザインが異なると聞いた

ジャック:日本で販売されているのは、グローバル展開するオリジナルデザインのもの。しかしフランスの国内法では、アルコールボトルが子どもに好まれるデザインであることが規制されているため、他国とは異なるデザインで展開する必要があった。

村上:色味や花の目などを一つ一つ調整し、フランスだけ別のデザインで展開している。コミッションワークをすることは非常に多いが、「ドン ペリニヨン」はとても寛大に僕のクリエイションを理解して寄り添ってくれたことをうれしく思う。

WWD:プロジェクトを通じて、それぞれが感動した瞬間とは?

ジャック:パリのオフィスで完成したコラボレーションボトルを受け取ったときだ。もちろん、それまでにもデザインを見たことはあったが、完成品を見たときの感情は忘れられない。

村上:今回のようなパッケージデザインの制作依頼はよくあるが、ここまでボックスの細部に気を配っているブランドは初めてだと思った。通常、こういったボックスの角の部分はどうしても隙間ができたり浮いてしまい、僕らがタッチアップをして最終仕上げすることも多い。このボックスのクオリティーはまさに完璧で感動した。

ヴァンサン:私たちにとってもアートピースなので、絶対失敗したくなかった。非常にこだわって製造した。私にとっての感動した瞬間は、ちょうど先ほど、村上氏が「“P2”を飲んで感動した」と言ってくれたときだろう。

村上:とても複雑な味わいで、まるで口の中が弾けるような感覚になった。

ヴァンサン:僕もアートのプロではないが、今回のコラボレーションで村上氏からデザインが届いたときに、感情の爆発を感じた。何かに心が動かされるとき、人は決してその道のプロである必要は全くないのだ。

同コラボレーション商品は、全国の主要百貨店およびモエ ヘネシー公式ヤフー店で数量限定で販売中だ。

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