
ドラッグストアのヘアケア市場に新たな潮流を持ち込んだI-neのボタニカルライフスタイルブランド「ボタニスト(BOTANIST)」が、今年で誕生10周年を迎えた。主力のヘアケアを軸に累計販売は2億個を突破(15年1月~25年6月/同社調べ)。市場環境の変化に合わせ、着実に成長を重ねてきた。
「ボタニスト」が登場した2015年当時、ドラッグストア市場の主力価格帯は500〜600円程度だった。そこに1400円(税抜)の価格で参入し、植物由来成分やシンプルなパッケージを前面に打ち出した。情緒的な付加価値を訴求することで、“プレミアムヘアケア”という新市場を創出し、大手メーカーが寡占していた領域を塗り替えた。
10年間で同ブランドは消費者との接点づくりを重視してきた。19年に東京・原宿の明治通り沿いに旗艦店、20年にルクア大阪に直営店をオープン(ともに現在閉店)。ポップアップやイベント、ゴッホ美術館やウィリアム・モリスといった話題性のあるパッケージコラボなど、従来のドラッグストアブランドにはない打ち手を矢継ぎ早に展開してきた。サステナビリティへの取り組みも進め、植林活動や環境配慮型パッケージを採用するなど、ブランドストーリーの厚みを増してきた。
「ジョンマスターオーガニック」とコラボする理由
節目の年となる今回は、新たな取り組みとして「ジョンマスターオーガニック(JOHN MASTERS ORGANICS)」との協業を実施。香りの監修を「ジョンマスターオーガニック」が担い、100%精油香料を採用したヘアケア・ボディーケア計8品を11月1日から全国のドラッグストアで、ECでは11月5日から販売する。両ブランドに共通するナチュラル・オーガニックを軸に「地球・自然・人とのつながりを大切にする」という理念をもとに、議論を重ねて具現化した。
背景にはブランドの認知拡大という課題がある。「『ボタニスト』は10周年を迎えたが、ブランド理解の浸透にはまだ伸びしろがある」(担当者)という。百貨店やファッションビルを主販路とする「ジョンマスターオーガニック」と、ドラッグストア中心の「ボタニスト」は販売チャネルが異なるが、それぞれの違いを生かし、市場の活性化も見込む。「ヘアケア業界ではキャラクターとのIPコラボが多い中、ヘアケアブランド同士の協業は前例が少ない。良い機会になる」としている。
「ボタニスト」は香り訴求にも力を入れてきた。これまで桜やヒイラギ、金木犀、ピーチなど限定の香りを展開。7月には高価格帯フレグランス市場で注目される“トマト”の香りを採用したアイテムを発売し、9月にはパロサントを基調とした“サンタル”シリーズを追加した。
今回のコラボでは、「ジョンマスターオーガニック」の代表的な香り“イブニングプリムローズ&イランイラン”と“シトラス&ゼラニウム”をベースに、自然由来の精油を掛け合わせた香りに仕上げた。担当者は「トマトやサンタルに続き、『ジョンマスターオーガニック』との協業を通じて、顧客に驚きと新しさを提供したい」と話す。
今後の協業展開については「現時点では未定」としつつも、中長期的には市場を盛り上げる新たな挑戦を模索する構えだ。