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コティ25年6月期、560億円の最終赤字 26年下期に成長回帰を見込む

フレグランス大手コティ(COTY)の2025年6月期決算は、純損益が前年の7620万ドル(約112億円)の黒字から3億8110万ドル(約560億円)の赤字に沈んだ。売上高は前期比3.6%減の58億9290万ドル(約8721億円)、営業利益は同55.8%減の2億4110万ドル(約354億円)、営業利益率は前年の8.9%から4.1%に低下した。なお、生産効率化や固定費削減の効果が寄与し、調整後営業利益は同1.2%減の8億5290万ドル(約1262億円)にとどまり、調整後営業利益率は0.4ポイント改善し14.5%だった。純損益では赤字となったものの、調整後純利益は1億8880万ドル(約279億円)を確保。調整後EBITDA(利払い前・税引き前・減価償却前利益)も前期の8億3960万ドル(約1242億円)から10億8170万ドル(約1600億円)に改善した。

プレステージは前年並み、マス部門はカラーメイクが不振

セグメント別の売上高は、全体の約65%を占めるプレステージ部門が前期比1.0%減の38億2020万ドル(約5653億円)となり、フレグランス事業は好調を維持したが、メイクアップやスキンケアの低迷が足を引っ張った。ただし、利益面では堅調で、調整後営業利益は7億7320万ドル(約1144億円)と前年から5%増加しており、収益性の高さを裏付けた。これに対して、コンシューマービューティ部門は同8.3%減の20億7270万ドル(約3067億円)で、特に米国市場でのマス向けカラー化粧品の不振が響いた。調整後営業利益も7970万ドル(約117億円)と38%減少し、採算悪化が鮮明になった。

米州が低迷、日本市場は堅調に推移

地域別の売上高は、米州が同7.5%減の23億7300万ドル(約3512億円)と、カラーコスメ需要減や在庫調整の影響を受けた。欧州・中東・アフリカ地域は同0.9%増の28億1180万ドル(約4161億円)とシェアを維持。アジア太平洋地域は同7.5%減の7億810万ドル(約1047億円)だった。特に中国とオーストラリアでの販売低迷が響いた一方、日本市場ではフレグランスの需要が底堅く、百貨店チャネルを中心にラグジュアリーブランドの販売が堅調だった。コティは日本でも「カルバン・クライン(CALVIN KLEIN)」や「グッチ(GUCCI)」などのライセンスブランドを柱とし、今後は新カテゴリーのフレグランスミストを拡大する計画だ。

第4四半期は前年同期の赤字から改善もマイナス

第4四半期(4〜6月期)の売上高は同8.1%減の12億5240万ドル(約1853億円)、純損益は7210万ドル(約106億円)の赤字となった。前年同期の1億20万ドル(約148億円)の赤字からは改善したものの、依然としてマイナスを脱することはできなかった。プレステージ部門の売上高は同5.2%減の7億6060万ドル(約1125億円)、コンシューマービューティ部門は同12.2%減の4億9180万ドル(約727億円)と両部門共に軟調だった。

スー・ナビCEO「長期的な収益体質築いた」

スー・ナビ(Sue Navi)最高経営責任者(CEO)は「25年度は米国市場の軟調や小売業者の在庫調整、前年の大型フレグランス発売の反動減が重荷となったが、事業基盤の健全化と固定費削減を進め、長期的な収益体質を築いた」と述べた。そのうえで、「26年度は”ボス ボトルド ビヨンド”をはじめとする大型新製品や、「カルバン・クライン」の新ミストシリーズなど、フレグランス市場の拡張が業績を押し上げる」と語り、下期に増収回帰を見込む姿勢を示した。ブランド別では、「バーバリー(BURBERRY)」や「グッチ」など既存のヒットブランドに加え、「アディダス(ADIDAS)」や「ノーティカ(NAUTICA)」などのマスブランドでも新製品を投入し、幅広い価格帯で需要を取り込む戦略を打ち出している。

決算発表を受けて、ニューヨーク証券取引所に上場する同社株は一時下落したものの、通期の成長回帰を示す見通しが一定の安心感につながり、発表翌日の取引では持ち直す動きをみせた。投資家の関心は26年度下期以降の成長軌道に移っており、新製品の販売動向や消費者需要の回復が株価の行方を左右することになりそうだ。

同社は26年度第1四半期の実質売上高を前年同期比6〜8%減、第2四半期を3〜5%減と見込む一方、下期には増収へ転換すると予想している。新製品の投入に加えて、販売チャネルの拡大を進めることで、段階的な収益改善とともに通期を通じて持続的な成長基盤を再構築する方針だ。

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