中国コスメ「パーフェクトダイアリー(PERFECT DIARY、完美日記)」を展開する中国企業のヤッセングループは2020年の上場を機に、ブランドポートフォリオの拡大やアジア、欧米市場での存在感を高めている。このほど2020年に買収したフランス発のスキンケアブランド「ガレニーク(GALENIC)」が日本上陸を果たした。1987年の誕生以来、製薬レベルの精密さと革新性を融合した製品で世界中の人々を魅了し、とくに中国市場でのプレゼンスを強めている。デイビッド(ジンフェン)・ファン=ヤッセングループ会長兼CEOとサハ・ミシェル・スティーヴンス=ガレニークヨーロッパ マネージング・ディレクターに「ガレニーク」のアジア市場への拡大や今後の戦略について聞いた。
WWD:2020年にニューヨーク証券取引所に上場した。
デイビッド(ジンフェン)・ファン=ヤッセングループ会長兼CEO(以下、ファン):当社は、「ワールドクラスのビューティパイオニアになる」という目標を掲げており、2020年末にNYで上場した。上場時は「パーフェクトダイアリー(PERFECT DIARY、完美日記)」のみを展開していたが、これを機にブランドポートフォリオの拡大を図り、英国の高級スキンケアブランド「イヴロム(EVE LOM)」、台湾発のドクターズコスメ「ドクターウー(DR.WU)」などマス向けからラグジュアリーブランドまで多彩なブランドをグループに招き入れた。上場は、私たちのビジョンやビジネスモデルをより多くの投資家や消費者に明確に伝えるステップで、透明性とグローバルな成長を志向するうえでの大きな一歩となった。
WWD:20年に「ガレニーク」をグループの傘下にした狙いは?
ファン:プレミアムスキンケア市場において、科学的根拠のある処方とラグジュアリーな体験を両立させたブランドを育てたいという思いがあった。「ガレニーク」は世界的に知られる薬剤師・植物学者であるピエール・ファーブル氏が立ち上げ、医薬品ルーツの信頼性と情熱的な研究開発姿勢を併せ持つ稀有なブランド。グループのポートフォリオを補完する存在にもなり得ると買収した。
薬局から多チャネル戦略へ
WWD:21年には「ガレニーク」のビジネスモデルが大きく変化した。
ファン:以前はヨーロッパを中心に薬局での販売がメインだったが、当社グループに入った21年以降は百貨店や自社EC、直営店などD2Cも含めたマルチチャネル展開を開始。価格帯もプレミアムスキンケアとして再定義し、プレミアム・アクセシブルから本格ラグジュアリーへと進化した。
WWD:価格帯の見直しに消費者の反応は?
サハ・ミシェル・スティーヴンス=ガレニークヨーロッパ マネージング・ディレクター(以下、スティーヴンス):価格はワンランク程度上がったが、研究開発や成分の質、サステナビリティへの投資に見合う価値を製品に込めている。「ガレニーク」の製品は、「表面的な効果」だけでなく「根本的な変化」を目指している。具体的には、細胞実験、皮膚試験、臨床試験という三段階を経て、製品の効果を検証している。この“深さ”こそが、他ブランドとの差別化ポイント“科学に裏付けされたラグジュアリー”というコンセプトの表れであり、多くの顧客が納得してくれている。
WWD:現在の主力製品と売れ筋は?
スティーヴンス:売れ筋は“ガレニシューティカル No.1 VC セラム”(3本セット、3960円/12セット、1万5950円/24本セット、3万1900円)。とくにアジア市場では透明感やブライトニング効果へのニーズが高く好調だ。ほかにもビタミンAやスノーアルゲなど、高機能成分の製品化が進んでいる。
目指すはスキンケアカテゴリーでトップ10
WWD:日本市場の位置づけと、今後の展開は?
ファン:「ガレニーク」の正確な国数や国別売り上げは非開示だが、主にアジアとヨーロッパで展開する。現在の最大市場は中国、次いで中東・アジア(IMEA)。日本は3番目に重要な市場と捉えている。まずは公式ECサイトと@cosmeを中心に展開を始めたが、今後は百貨店などへの進出も視野に入れている。目標はプレミアムスキンケアカテゴリーでトップ10に入ることだが、順位よりも日本のお客さまと深く共鳴できることが最も大切だ。
WWD:今後のM&Aの可能性は?
ファン: まずは、「ガルニーク」を世界的な“サイエンスラグジュアリー”ブランドに育成する。現在はニューロサイエンスやメイクアップ領域もカバーできブランドポートフォリオは堅牢だが、新たなM&Aの機会にもオープンだ。