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シューズ売上高1470億円突破の「サロモン」 トレランに加えロードランシューズにも注力

アメアスポーツ傘下の「サロモン(SALOMON)」で社長兼CEOを務めるギヨーム・メイゼンク(Guillaume Meyzenq)氏が、米「WWD」の姉妹紙である「フットウエアニュース(Footwear News)」の単独インタビューに答えた。メイゼンク社長兼CEOは1994年にサロモンの仏アヌシー本社でインターンとして働き始め、以来「サロモン」歴30年という生え抜きだ。フットウエア担当副社長、最高製品責任者などの要職を歴任し、2025年1月に現職に就いた。

「『サロモン』はこの5年、大きな転換期にある」とメイゼンク社長兼CEO。「かつてはコアな層に支持されるパフォーマンスアウトドアブランドだったが、今ではライフスタイル向けを含め、より幅広い製品を提供している。われわれは今、自らを“モダンマウンテンスポーツブランド”と位置付けている。これは、デザインと技術開発というわれわれの原点や、イノベーション、山岳スポーツを重んじる文化を物語るものだ」。

製品のイノベーションについて話が及ぶと、メイゼンク社長兼CEOは、ブランドとして改めてランニングに注力していると語った。「サロモン」は最近、ロードランニングシューズの“エアロ ブレイズ 3(AERO BLAZE 3)”を発売した。ミッドソールにブランド独自の「オプティフォーム2 TPU(OptiFoam2 TPU)」を採用し、前足部は前モデルから改良したロッカー構造で、ニットアッパー、アウトソールの「ロードコンタグリップ(RoadContagrip)」テクノロジーなどを特徴とするシューズだ。

コラボが成長のカギ

「われわれの伝統はトレイルランニングにあるが、トレラン分野での成功を街でのランニングにも応用したいと考えている。ロードラン用のスーパーシューズと“エアロ ブレイズ3”がそれを担う。同時に、ライフスタイルシューズにも注力している。ライフスタイルとは、ハイキング、通勤、レストランでのディナーなど、消費者の1日のあらゆる時間やシーンに向けて製品を作ることだと定義している」。

同社の売り上げをけん引しているのは、ライフスタイル向け製品カテゴリーであるスポーツスタイルだ。「スポーツスタイルでは過去5年間、コラボレーション、つまり“交差点”を通じてさまざまなファッション&カルチャーコミュニティーとつながりを築いてきた。中でも、『エムエム6 メゾン マルジェラ(MM6 MAISON MARGIELA)』や、パリのコンセプトショップ『ザ・ブロークン・アーム(THE BROKEN ARM)』は強力なパートナーだ。これらのパートナーとは毎シーズン、新しいエネルギーに満ちた新しいストーリーの扉を開いている。それが、消費者の心に響き、長く愛されるクリエイティビティーにつながっている」。

販路戦略に関しては、大都市への直営出店に注力している。例えばロンドンでは、この5月にバタシー発電所跡の複合施設に出店し、パフォーマンスとスポーツスタイルの両カテゴリーを品ぞろえしている。ロンドンへの出店は、24年10月に出店したコヴェントガーデンの旗艦店、同11月にオープンしたソーホーのスポーツスタイルのみの店舗に続く3店舗目。1つの都市内に異なる製品ラインアップで複数出店する手法は、パリや東京でも行っている。米国は24年10月にニューヨークに初店舗をオープンしたが、同様に複数出店を検討中だ。「ロサンゼルスやマイアミへの出店も検討している」といい、26年末までに米国の直営店舗数を10まで増やしたいと話した。

ミラノ・コルティナ冬季五輪では
プレミアムパートナー

「サロモン」の親会社で、「アークテリクス(ARC'TERYX)」なども保有するアメアスポーツは24年2月にニューヨーク証券取引所でIPO(新規株式公開)し、13億7000万ドル(約2013億9000万円)を調達。豊富な資金を積極出店に生かしている。アメアスポーツの25年1〜3月期業績は、売上高が前年同期に対し23.4%増の14億7300万ドル(約2165億3100万円)だった。純利益は前年同期の500万ドル(約7億3500万円)から1億3500万ドル(約198億4500万円)に増加。アメアスポーツのジェームズ・ジェン(James Zheng)CEOは決算会見で、「サロモン」のシューズ売上高が24年12月期に10億ドル(約1470億円)を超えたと明かしたが、1800億ドル(約26兆4600億円)と言われる世界のスニーカー市場規模と比較すれば「まだまだ微々たるもの」とコメント。「『サロモン』のシューズはアスリート向けに開発しているが、日常の街履きシューズとしても適しており、市場の中で独自のポジションを占めている。消費者が新しいシューズブランドにこれまで以上に敏感になっている今、『サロモン』のユニークなスタイルと高い技術開発は、まさにそのニーズに合致する」と続けた。

メイゼンク社長兼CEOはインタビューの中で、26年2月に開催される伊ミラノ・コルティナ冬季五輪への期待も明かした。「サロモン」は同大会のプレミアムパートナーを務める。「われわれは、スキーやスノーボード向けのパフォーマンスギアからライフスタイル向けシューズまで、一貫したメッセージを打ち出すためのパッケージを準備している。消費者の皆さんにも楽しんでいただけるはずだ」と結んだ。

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