ファッション

甚平の着用シーンは祭りだけでないーー目指すは普段着としての一着、愛知県発の匠の技

「生まれるべきものが生まれ、広がるべきものが広がり、残るべきものが残る世界の実現」をビジョンに掲げるマクアケによる、“アタラシイものや体験の応援購入サービス”の「マクアケ」には、伝統技術を現代的なアイテムに活用したプロジェクトが数多い。この連載では、全国各地の匠の技に注目。実行者の思いとともに、匠の技をどう活用し、どう訴求しているのかを考える。目指すは、47都道府県の匠の技の探訪だ。第8回は、愛知県を訪れた。


今回の技術は…

三河木綿

製造卸会社・大丸は1926年、愛知県蒲郡市で創業しました。当時は「大丸商店」という名で、初代の榊原久治氏が社を率いていました。現在は、4代目の榊原崇洋氏が代表を務めています。「日本で初めて木綿を栽培した」といわれるこの地で、100年近くにわたり、地域織物・三河木綿の発展を後押ししてきました。

同社の誇りは国産のモノ作りです。「三河木綿をより多くの人、特に若い世代に知ってほしい」(榊原代表)という思いから、近年は、幅広い世代が着用できる甚平の開発にも精を出しています。

企画コンセプトは「街でも着られるカッコ良さ」。つまり、日常使いできる甚平です。程よい抜け感がカギとにらみ、和服らしい直線ではなく、ゆったりとした曲線を描くようなシルエットに。手持ちのアイテムとも合わせやすく、上衣は羽織として、下衣はハーフパンツとして日々のコーデに取り入れることができます。「羽織ひもを収納するスペース」「サイズ調整可能なウエスト」といった細部へのこだわりも、普段着としての一面を垣間見せます。

生地にはもちろん、三河木綿を採用しました。かつて、農民の作業着である野良着にも使われていたほど丈夫な生地です。通気性に優れるため、不快なベタつきもありません。今回はそんな三河木綿の長所はそのままに、複数の色糸を織り込むことで、クールなチャコールグレーとダークネイビーを表情豊かに仕上げています。

三河木綿の2色に加え、日本の夏の素材・しじら織の甚平も製作しました。地元の職人と共同開発した、オリジナルの“三河しじら”生地です。糸の配置を工夫したため生地が空気を含み、肌との接地面積を小さくすることに成功しました。さらりとした着心地で、湿度の高い夏も快適に過ごせます。

そんな同社の挑戦を支えるのは、糸の染色から織り、縫製までを三河地方で行う、地元完結型の生産体制です。榊原代表は、「商品の開発は、職人の力添えがあってこそ。私たちのモノ作りも、先代から続く信頼関係が底上げしてくれています」と語ります。

応援購入サービス「マクアケ」での反響は予想以上でした。「こんな甚平が欲しかった」「着心地がとても良い」といったポジティブな声が目立ち、幅広い層へのリーチにも手応えを感じています。東京都に次いで、地元・愛知県からの購入が多く、こうした地域産業への高い関心も、同社にとって大きな励みとなりました。

今後の目標については、「三河木綿の新たな織り方を模索したい」。伝統産業に新たな風を吹き込み、地域の未来を明るく照らしていきます。

地域織物をモダンにアレンジする3つのポイント

1.木綿発祥の地で完結する
生産工程

愛知県三河地方は「日本に綿が伝来した地」と言われています。現在もなお、染色や整経、織り、デザイン、縫製といった全ての工程がこの地で完結します。

2.表情のある生地

“三河しじら”は、大丸が地元の職人と共同で作ったオリジナル生地です。30通り以上の試色を繰り返すことで、ともすれば無地のようにも見える繊細な色柄が生まれました。

3.街でも着られるような
デザイン

和服といえば直線的なシルエットですが、今回はあえて体に沿うようなアウトラインに。程よい抜け感が加わり、街で着ても様になる1着に仕上がりました。

愛知発!
応援購入が高額なプロジェクト3選

“アタラシイものや体験の応援購入サービス”の「マクアケ」で大きな反響が寄せられた愛知県発のプロジェクトを3つ紹介する。

PICK UP 1 : 応援購入総額1億200万円

2年連続1億円。真冬でも1枚でOK。
薄くて、軽くて、暖かい『エアロゲル掛け布団』

繊維商社モリリンのオールインワン掛け布団シリーズ“コスモダウン”。本作は、宇宙服にも用いる断熱素材“エアロゲル”と再生羽毛“リファインダウン”を採用。史上最高の軽さと暖かさを実現した。今期も“エアロゲル”を使った最新作を企画している。

PICK UP 2 : 応援購入総額5863万円

柔らかく温かい泡に包まれる至福の泡シャワー|
KINUAMI U(絹浴み [結])

新たな入浴体験を提供する泡シャワー“キヌアミ ユー”。通常の「シャワーモード」と「泡モード」をワンタッチで切り替えられる。「泡モード」で出てくる泡は“絹泡”と名付け、発泡倍率が約11倍という濃密度を実現。温かい泡に包まれる心地よさを届ける。

PICK UP 3 : 応援購入総額2729万円

【第5弾】車中泊がやめられなくなる。
-18℃でも暖かい新6層・魔法瓶ブランケット

冬の車中泊を快適にする“魔法瓶ブランケット”。新6層構造として遠赤外線効果のある中綿“グラフェン”を追加したことで、マイナス18℃でも暖かさが持続するように。現在は欠品中。今シーズン分として、9月に再販を予定している。

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