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時代の変化はチャンス!150年間磨き続けた企画提案力が武器 瀧昌之/瀧定名古屋社長

 瀧定名古屋は今年で創業150年を迎えた。長らくテキスタイル卸のリーディングカンパニーとして君臨していた瀧定時代から、派手なスローガンを掲げず、常に企画提案力を磨いてきた。「企画提案力こそが、時代の変化に左右されず生き残る道」と語る瀧昌之・社長に聞いた。

WWDジャパン(以下、WWD):創業150周年を迎えたが、今後のスローガンは?

瀧昌之・社長(以下、瀧):当社は地道にコツコツと積み上げる社風で、私もこれまで派手なスローガンを掲げたことはなかった。先日名古屋のホテルで開催した創業150周年式典を前に社史を読み返してみたら、派手なスローガンを掲げないのはずっと以前からだったことに驚いた。しかも、100年前も50年前も言っていることは同じで、“企画提案力を磨く”こと。実は私も12年前の社長就任以来、同じことを言い続けていた(笑)。

WWD:その理由は?

瀧:ファッションの面白いところは、たとえ今シーズンに採用されなくても、次のシーズンにはまたチャンスが巡ってくること。流通構造はショッピングセンターやeコマースが台頭しているが、サプライヤーである我々は企画提案力さえあれば、そうした変化にも左右されず、新しい販路を開拓できる。ファッションが主戦場であるかぎり、地道に企画提案力を磨き続ければ生き残れる。

WWD:2014年1月期は増収増益だった。

瀧:売上高は前年比110.8%の582億円、営業利益は同114.6%の8億8900万円と増収増益。紳士服地から婦人服地、紳士服ODM/OEM、婦人服ODM/OEMまで、全部門が増収だった。外部環境は決してよくなかったが、ここ数年掲げてきた“取引先の懐に飛び込み、一社あたりの取引額を増やす”という戦略が奏功した。

WWD:ここ数年は“川上戦略”を推進しているが。

瀧:服地事業だったら原料になる糸や羊毛、綿花を、OEM製品事業だったら糸やテキスタイルにさかのぼって、企画・開発・生産する方針を推進してきた。当社は一つの課が企画から仕入れ、販売までの権限を持ち、まるで一つの会社のような大きな権限を持っているが、一昨年から課長クラスの産地研修を行うなど、会社としてもバックアップしている。ここ数年は、服地部門も製品部門も世界中を飛び回り、毛織物や綿織物の原料を独自に調達して開発するなど、企画提案力の向上には手応えを感じている。

WWD:その成果は?

瀧:円安や労務費アップに伴う中国からASEANへの生産シフトのほか、紳士服量販店が婦人服にも力を入れるなど、ここ数年でアパレル産業を取り巻く環境は大きく変化した。こうした変化は、これまで入れなかった取引先を開拓するチャンス。プロジェクトチームを組み、服地課と製品課、紳士と婦人という、組織の枠組みを超え、開発と生産を共有化したことで、新たな取引先の獲得につながっている。チャイナプラスワンという意味でも、ここ3〜4年でガラリと変わり、例えば当社の紳士服の縫製品の生産はすでに6〜8割がASEAN生産に移行しており、婦人服などもこれから本格化する。

WWD:海外販売の状況は?

瀧:中国が生産拠点から、販売拠点へ変わる新しいステージに入った。中国の現地法人は開設して11年目。すでに社員は日本人を入れて60人を超え、1月から本社役員を総経理として常駐させた。中国経済は昨年からやや減速気味だが、だからこそ我々の持ち味であるテキスタイルの企画提案力と“ストックサービス”が生きてくる。これまではいくら企画・提案力をアピールしても、価格のみが評価基準だったが、景気が悪くなって日系ならではの商品開発力やサービスを求めるようになっている。現地採用の社員も育っており、日本人の駐在員のマネジメントのもと、中国の有力アパレルの開拓が進みつつある。日本では1シーズン200〜300マークのテキスタイルを開発し、ストックしているが、中国はまだその半分から3分の1程度。今後は徐々に増やし、早期に日本と同等にしたい。

WWD:欧州へのテキスタイル輸出は?

瀧:ドイツを中心に高級ブランド向けのテキスタイル輸出が急伸している。4年前のちょうど円高のタイミングで欧州向けのテキスタイル輸出をスタートさせ、逆風の中であえて営業活動をしていた。定番品ではなく最新トレンドの商品をあらかじめ在庫して、注文が来たら即発送するテキスタイルのストック販売の仕組みは、世界に類を見ないもの。これまでの地道な活動で、こうした仕組みへの認知が進んでいたため、円安で一気に日の目を見るようになった。昨年は2ケタ増で推移したが、今年4月の売上高は前年比280%。今後もまだまだ伸びるだろう。

WWD:社長に就任後、財務体質はかなり改善しているがM&Aについては?

瀧:前職の商社時代はそういったことに関係した部署も経験したので、私もやる気が無いわけではない。ただ、M&Aの意義は商圏や時間を買うということ。先ほども話したように“コツコツ積み上げる”という当社の社風からすると、そぐわないというのが正直な感想。それに、ASEAN生産が増え、海外の協力工場への貸し付けなどで資金需要が増えており、一方で回収までのサイトは長いままになっている。そろそろ金利が上昇局面に入っており、資金需要には金利というコストがかかるということに対し、社内意識レベルをもう一段高めるべき時が来ている。

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