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成長続けるアフリカのファッションは世界に通用するのか? 現地で感じた可能性

 米コンデナスト(CONDENAST)が主催する、世界のラグジュアリーおよびファッション市場について検証するカンファレンスが南アフリカのケープタウンで4月10〜11日の2日間開かれた。同カンファレンスはファッションジャーナリストのスージー・メンケス(Suzy Menkes)がホストを務め、各国のクリエイターや創業者、イノベーターをゲストに迎えてスピーチやトークセッションが繰り広げられる年に1度の催しだ。参加費用は約70万円と高額だが、主にアフリカ、ヨーロッパ、アメリカから訪れた業界関係者で満席だった。カンファレンスは、グッチ(GUCCI)社長兼最高経営責任者(CEO)のマルコ・ビッザーリ(Marco Bizzarri)とシークレットゲストのナオミ・キャンベル(Naomi Campbell)によるトークセッションでスタート。2日間で41人が登壇し、目覚ましい経済成長を見せるアフリカ市場の未来についてさまざまな視点から語られた。

 アフリカといえば内戦やエイズ、貧困、差別などの深刻な社会問題を抱えるエリアというイメージが先行しがちだ。しかし2000年以降アフリカ経済は急成長を続けており、新たな巨大市場として世界から注目されている。また、ヴァージル・アブロー(Virgil Abloh)やカニエ・ウェスト(Kanye West)といった、アフリカ系アメリカ人のブラックコミュニティーがラグジュアリーファッションの市場で影響力を増している。さまざまなジャンルの垣根を超えてつながる彼らの強いコミュニティー形成力は、アフリカ市場が成長する要因の一つでもあるだろう。

「この先50年は好調」の理由

 同カンファレンスに登壇した英「ワイアード(WIRED)」編集長のグレッグ・ウィリアムズ(Greg Williams)は、「アフリカ経済がこの先50年は好調が続くといわれている理由は、人口の推移が関係している」と述べた。2000年に9億2000万人だった人口は、現在12億人と世界の約18%を占めるまでに増えた。国際連合の「World Population Prospects 2018」によると、日本を筆頭に人口が減り続ける先進国に対して、アフリカは25年に14億人、50年には25億人となる見通しで、世界全体の4分の1を占めるまでに拡大すると予測されている。さらに、25年の時点で総人口の60%が25歳以下、若年労働力(15~34歳)の割合は35%(日本は19%)となり、人口と労働力の増加によってさらなる経済成長が期待されているのだ。

ファッションブランドが続々進出

 2000年以降、低所得者層・中間層の所得水準が上がり、GDPなどの経済指標も堅調に推移している。特に富裕層はすさまじい伸び率で成長を続ける。アフラシア銀行が発表した「Africa Wealth Report 2018」によると、資産1億円以上を有する富裕層は24年までに53%増加し、33億円以上を有する超富裕層は59%増加すると予測。他の地域と比べると、同期間にアジアが48%、欧米が25%となっており、アフリカの伸び率は最も高い。富裕層の増加は、ラグジュアリーファッションの市場にも影響している。2000年以降、「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」「ディオール(DIOR)」「グッチ」がモロッコや南アフリカに出店し、その後「H&M」や「ザラ(ZARA)」などのファストファッションも進出してアフリカ市場を開拓している。ケープタウンのショッピングモールにも上記のようなブランドが軒を連ねていた。

新たに芽吹き始めた才能

 アフリカが未知の可能性に満ちた市場であることは確かだが、課題はまだまだ山積みだ。南アフリカ出身で、ケープタウンにセレクトショップ「マーチャンツ・オン・ロング(Merchants On Long)」を10年前にオープンさせたハネリ・ルパート(Hanneli Rupert)は、アフリカ発のファッションがグローバルに進出するためには“教育”が必要だと熱く語った。彼女によると、アフリカ55カ国にファッションを専門とする学校はわずか5校しかないという。南アフリカを中心に、アフリカ諸国のデザイナーや生産者と長く仕事を共にする彼女は、「クラフツマンシップとその質は世界に十分通用するレベル。しかし服作りとファッションが結びついておらず、ブランドの世界観を創造する能力は大きく欠けており、教育が不可欠だ」と説明する。

 この意見に賛同するのは、伊ローマのファッション専門学校で、現在「グッチ」を率いるアレッサンドロ・ミケーレ(Alessandro Michele)も通っていた「アカデミア コスチューム & モーダ(ACCADEMIA COSTUME & MODA)」のルポ・ランザーラ(Lupo Lanzara)副会長だ。「イタリアとアフリカには長い歴史と独自の文化があり、“未来のラグジュアリー”を担う貴重な遺産を有している。ただそれをファッションに落とし込む力を養うには、教育が必要だ。コスチュームとファッションは大きく異なる。ファッションは自身を表現する手段であり、時代を映す鏡、そして人々に夢を与えるものだ。ただ着飾るのを楽しむだけではないことを指導しなければ、これまで培われてきた歴史や文化がファッションの中で輝けないだろう」。

 ファッション雑誌が出回るようになったのは約15年前からといい、インターネットの普及も遅れをとるアフリカではファッションという分野自体が発展途上だ。しかし今後は教育やインターネットが広がれば若い世代がファッションに憧れを抱く機会も増え、彼らが夢を与える側の立場になる未来も遠くはない。すでに19年の「LVMHヤング ファッション デザイナー プライズ」ファイナリストに名を連ねている南アフリカ出身の25歳、テべ・マググ(Thebe Magugu)らをはじめ、アフリカ発の新たな才能が芽吹き始めている。

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