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香取慎吾インタビュー前編 “アイドルとしてずっと生きている僕は心音も聞いてほしい”

 香取慎吾による国内初のアート作品展「サントリーオールフリーpresents BOUM!BOUM!BOUM!(ブン!ブン!ブン!)香取慎吾NIPPON初個展」が、豊洲のIHIステージアラウンド東京で6月16日まで開催されている。訪れてまず驚くのが作品の数とその大きさだ。アート展ではあるが、126点の絵やオブジェに飲み込まれるような体感は音楽のライブや演劇の舞台に近い。ファッション通としても知られる香取に話を聞いた。

WWD:こんなに大量の作品を普段はどこに保管しているのですか?

香取慎吾(以下、香取):今はアトリエと呼んでいる数カ所に分けて保管していますが、6月にはオブジェを含めてこれらが全部戻ってくるから本気の倉庫を探しています。

WWD:これらは全作品ですか?

香取:半分くらいです。これと同じだけの量が別にあります。

WWD:その時々の感情を吐露するような作品も多いようですが、自宅にも作品を置いているのでしょうか?

香取:一番多く住んでいる家には自分の絵はひとつもありません。意識的にそうしています。だから探しているのは、アトリエではなくどちらかというと倉庫で、終わったものを保管する場所です。

WWD:最初に描いたときを覚えていますか?

香取:小学生の頃だから10歳くらいかな?皆さんと同じく教科書の落書きが最初で、それが机にはみ出して壁まで延びていった、その延長がこれですね。大きな絵を描くようになったのは10年前、30歳の頃で、とにかく“描きたい”衝動が最初。そうしたら近くに段ボールがあり、もっとよいものに描きたくなり、キャンバスと出合った、そんな感じです。

WWD:衝動とは?

香取:風景とかではなく、モチーフは全て頭の中にあるから描かないと頭の中に詰まってしまう。どんどん湧いてくるし、結果として立体になることもある。だから一応題名をつけてはいるけど、ついていないものもたくさんあります。自分の絵を見て、こんな風に思っているんだなと思うことがあります。

WWD:描き終わると頭の中はどうなりますか?

香取: 完成するころにはその絵に飽きていて、次の絵が描きたくなっていますね。

WWD:画材は何を使いますか?

香取:自分で分かるのはアクリル絵の具くらい。画材は世界堂に行って自分で買います。世界堂の人たちは「慎吾ちゃんまた来ている」という感じですね(笑)。アトリエには画材があれこれ結構な量があるから。後ろ手で取った絵具で描き始める感じです。音楽とビールが必要です。

WWD:音楽は大切なんですね。

香取:少し前までは音楽を聴きながら描くのが好きだったけど、仕事として絵を描くことも増えて、少し描くスタイルが変わったかな。昨夜(展覧会開幕前々夜)は久しぶりに小さいスピーカーをベルトにぶら下げて、自分の周囲は音楽がガンガンなっている環境で12時間描き続けました。楽しかったです。

WWD:創作活動の時は何を着ている?

香取:「コム デ ギャルソン・オム プリュス(COMME DES GARCONS HOMME PLUS)」のパンツが多いです。今回も、創作時に着ていたユニホームみたいな服も展示しています。

“パーフェクト・ビジネス・アイドル”と自分を呼ぶ意味とは

WWD:触ると香取さんの心臓の鼓動が伝わり、心臓音が聞こえるオブジェに驚きました。創作時の心臓音を記録したそうですが、他人の心臓に触れるのは正直恐い体験だし、自分の心臓音を聞いてほしいだなんてすごい欲求だと思う。

香取:そう思います。アイドルのバッグの中身って見たいでしょ?それと似ていて、アイドルとしてずっと生きている僕は心音も聞いてほしい。これもサービス精神のひとつなのかもしれません。

WWD:「カルティエ(CARTIER)」など企業とのコラボレーションも増えていますが、衝動で描く絵と、依頼を受けて描く絵のプロセスは違いますか?

香取: 1年くらい前に初めて依頼をもらって描いたときは締め切りなどで悩んだこともありましたが、今はそれにも慣れました。どちらも楽しいです。

WWD:カール・ラガーフェルド(Karl Lagerfeld)は生前、「ファッションはビジネスでありアートではない」と言っていました。香取さんはアートとビジネス、エンターテインメントの関係をどう考えますか?

香取:僕は“パーフェクト・ビジネス・アイドル”を自認しています。何年か前に冗談めかして発言したら、最初はファンから「そんなこと言わないで」とも言われたけど「いやいや仕事だから!」と。「仕事としてアイドルを頑張ります」と言い続けてきた。今ではそれが認められるようになって、ファンもよいパフォーマンスができると「よっ!“パーフェクト・ビジネス・アイドル”」って言ってくれるようになりました(笑)。

WWD:作品やパフォーマンスをお金に換えることについてはどう思いますか。

香取:僕が笑顔で仕事しているからお金がもらえて、今日のご飯を食べることができて、大好きな服もたくさん買える。直結だと思う。僕が買い物をすればブランドやショップがもうかり……とサイクルしている。それが健全なのでは?個展もチケット代が発生しており、だから「これだけなの?」「高くない?」と言われないようにとは常に思っています。

WWD:昨年はパリで初の個展を開きました。同時期はパリのホテルもフライトも予約が取りにくく、“慎吾ちゃんパワー”を実感しました。パリで見えたことは?

香取:初の個展をパリで、あんな形で行えたことは本当に光栄だし、さすがの香取慎吾も(笑)最初はプレッシャーや緊張がありました。ただ、ホテルと会場を行き来して準備を進める中、照明をいじったり、音楽を考えたりしていたら、コンサートの演出を考えている時を思い出して。自分が知っている「個展」のイメージを持ってパリに向かったし、実際ホールはでかいけど、東京ドームと比べたら小さいなと思った瞬間、急に肩の力が抜けました。この展覧会も同じ。僕1人でこの大きな劇場に向き合うのはとんでもないことですが、100万人、1000万人を動員するツアーも衣装や照明や演出を自分たちとスタッフで考えてきたのに何を怖がっているの、と。

(洋服への愛、自身のブランドについて語った後編はこちら)