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米ニーマン・マーカスがNYに出店 大型再開発地区「ハドソンヤード」内に

 米百貨店ニーマン・マーカス(NEIMAN MARCUS以下、ニーマン)は3月15日、ニューヨーク・マンハッタンの大規模な再開発プロジェクト「ハドソンヤード(HUDSON YARDS)」の一部である複合施設内に新規オープンする。同百貨店は建物の5~7階に入り、5階は他店と共同使用するが、6階と最上階の7階は占有する。売り場面積はおよそ1万7500平方メートル。

 テキサス州ダラスを拠点とするニーマンは118年の歴史がある老舗の百貨店で、ハドソンヤード店が43店目となるが、マンハッタンに出店するのはこれが初めてだ。同じニーマン マーカス グループ(NEIMAN MARCUS GROUP)の傘下で、ニューヨーク5番街にある米百貨店バーグドルフ・グッドマン(BERGDORF GOODMAN)の創業者一族との約束によってニーマンはこれまでマンハッタンに進出していなかったが、“経済的な解決策”により可能になったという。しかし、「ハドソンヤード」はいわゆる繁華街ではないミッドタウンウェストに位置するため、その成功は未知数だ。

 ジェフロイ・ヴァン・ラムドンク(Geoffroy van Raemdonck)最高経営責任者(CEO)は、「ハドソンヤード店はラグジュアリー・プラットフォームを構築するという当社の方向性を反映しており、ラグジュアリー志向の顧客を引き付ける買い物体験やサービスとは何かを実験する場だと考えているので、競合とは異なるタイプの店になるだろう。現在、ECではニューヨーク市に住む顧客の売り上げがおよそ1億ドル(約111億円)、より広域なニューヨーク都市圏まで含めると2億ドル(約222億円)程度だが、顧客の買い物体験をさらに向上させるためには実店舗が必要だと考えて出店した」と語る。同百貨店の年間49億ドル(約5439億円)の売り上げのうち、約3分の1がオンラインによるものだ。

 ニーマンは、アパレル製品のパーソナライズやグルメ、旅行、ヘルスケアなど、さまざまな分野で新たなコンセプトを生み出すべく、“アイデア・ファクトリー(IDEA FACTORY)”プロジェクトを18年に発足させた。今までにないサービスや体験を提供する“次世代型の店舗”を作り上げ、今後オープンする店や既存店に適用するという計画だが、ハドソンヤード店はその一環だと言えるだろう。同店にはファッションショーやサイン会などが開催できる“ニーマン・マーカス・ライブ(NEIMAN MARCUS LIVE)”というおよそ90平方メートルの広場が設けられているほか、料理のテイスティングやカクテル作りが体験できるオープンキッチンが設置された“クック&マーチャント(COOKS & MERCHANTS)”コーナーが作られている。

 他にも、ハドソンヤード店では以下のようにさまざまな新しい試みが行われているが、今後も顧客の反応を見ながら変えていく予定だという。

•ニーマンの他店にはレストランが1~2カ所しかないが、ハドソンヤード店には「バー・スタンレー(BAR STANLEY)」と「ゾディアックルーム(ZODIAC ROOM)」、そして“クック&マーチャント”内のカフェと3カ所ある

•タッチパネルで店員を呼びだしたり、照明を変更できたりするハイテクな試着室があり、モバイルアプリでの支払いも可能

•高級マンションのようにしつらえられた、パーソナルショッピング用のスイートルーム

•オンラインで実施している“デジタルスタイリスト”によるスタイリングサービスが受けられるラウンジ

•細胞を活性化して肌の状態を改善する効果があるというLEDライトセラピー機能があるベッド“ライトスティム(LIGHTSTIM)”によるトリートメントが受けられる。6万5000ドル(約721万円)でベッドを購入することも可能

•ヘアサロン、ネイルサロン、エステサロンがある

•洋服やレザーグッズの修理やカスタマイズができるアトリエ

•店内のBGMを顧客がリクエストできる“ロックボット(ROCKBOT)”サービスの提供

 ニーマンが進出するエリアの反対側であるイーストサイドには、バーニーズ ニューヨーク(BARNEY’S NEW YORK)やブルーミングデールズ(BLOOMINGDALE’S)、サックス・フィフス・アベニュー(SAKS FIFTH AVENUE)などの有名百貨店があるため、開店後はどのエリアに住む顧客がハドソンヤード店に足を運んでいるのかを詳しく分析する。また、バーグドルフ・グッドマンの売り上げがニーマンに流入しているかどうかも分析する。ヴァン・ラムドンクCEOは、「バーグドルフを競合だとは考えていない。サービスの差別化ができるよう互いに切磋琢磨し、グループ全体としてさらに向上したい。ハドソンヤード店は、デジタルスタイリストやコンシェルジュサービス、市内の当日配送など、ラグジュアリーな体験を顧客に提供する。ニューヨークは競争の厳しい街だが、競い合うことで顧客へのサービスがいっそう向上していくのでいいことだと思う」とコメントした。同氏はハドソンヤード店の売上目標を開示しなかったが、ニーマンがおよそ45億ドル(約4995億円)の負債を抱えていることを踏まえると、かなり大きな成功を収める必要があるだろう。

 2005年に開始された「ハドソンヤード」再開発プロジェクトは、民間企業によるものとしては米国最大規模であり、約半分のエリアが今回グランドオープンする。およそ169万平方メートル(東京ドーム約36個分)におよぶ広大な敷地には複数の高層オフィスビルやマンション、商業施設やライブ会場、ホテルなどが建設されている。同プロジェクトの開発に携わっているデベロッパーの一つ、リレイテッド・アーバン(RELATED URBAN)のケン・ヒンメル(Ken Himmel)社長兼CEOは、「ニーマンが1階ではなく上階に入ることに同意してくれるよう、最上階を含む上階レベルが建物の中で最も魅力的になるように設計した。柱やエレベーターの列などの障害物がない大きな床板と非常に高い天井を確保して、5階のエントランス前に道路のようなスペースを作った。まるで地上階のような、豪華で広々とした入り口を演出した」と語った。

 一般的に小売店は建物の地上階に入ることを好むが、ニーマンは上階に入ることに同意した。ヴァン・ラムドンクCEOは、「特に問題はない」と述べた。建物の1階にもニーマン専用のロビーがあり、コンシェルジュが顧客を3台の直通エレベーターに案内するようになっているが、5階の入り口がメインエントランスだと考えているという。幅47mのエントランスは大きな窓に面しており、外の共有スペースに造られた巨大なモニュメント“ザ・ベッセル(THE VESSEL)”を見ることができる。これは英芸術家兼工業デザイナーで、ロンドン五輪の聖火台などを作ったことで有名なトーマス・ヘザーウィック(Thomas Heatherwick)が手掛けた作品だが、ニーマンの店内にも米彫刻家のフランク・ステラ(Frank Stella)、米画家のロイ・リキテンスタイン(Roy Lichtenstein)、米写真家のロクサーヌ・ロウィット(Roxanne Lowit)などのアーティストによる作品や、ニーマン・マーカスの二代目社長であり、後に会長を務めた故スタンレー・マーカス(Stanley Marcus)が「ニーマン・マーカス・コレクション(NEIMAN MARCUS COLLECTION)」のために収集した美術品など、305点もの芸術作品が置かれている。ヴァン・ラムドンクCEOは、「ハドソンヤード店にはニーマンのDNAが組み込まれているが、ニーマンの他店とは違う店づくりがされている」と締めくくった。