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家を持たないミレニアル世代が増加、働き方改革の先にある“アドレスホッパー”の実態

 定住する家を持たない、多拠点生活をするといった“住み方改革”がミレニアル世代に広がっている。仕事の多様化によって、働く場所が自由になり、家賃や公共料金を払ってまで一定箇所に定住する必要がなくなったことが背景にあるようで、エアービーアンドビーでその日の宿泊場所を探したり、友人宅を利用することで生活する。そんな彼らを“アドレスホッパー”と呼ぶそうだ。

 具体的な例を紹介する。エアビーアンドビーに勤めるマット・マスイ=デジタルリードはまさに“アドレスホッパー”を体現した人物で、4年くらい出張と旅を続ける多拠点生活を続け、半年前に家を解約したという。“Unleashed habit.(解放された習慣)”という価値観のもとに、プロダクト製作をはじめさまざまな分野で活動する「オンファッド(ONFAdd)」の藤川保徳セールスマネジャーも、ブランドの海外展開に合わせて世界中を転々とする中で12月に家を解約することを決めた。彼らは仕事的にも“アドレスホッピング”がぴったりとハマる役柄で、実際にまわりの“アドレスホッパー”を巻き込んだ数十人規模のコミュニティーを作り、「Hopping bar」なる定例イベントまで開催している。

 具体的な生活スタイルについて、2人に話を聞いた。まず住む場所だが、同じ生活をする人々が世界中にいるため“ギブ&テイク”で家を貸し合うスタイルが主流だそうだ。「面白がってくれて場を提供してくれたり、面識のない友人の友人が家を貸してくれたり。今度はギブ&テイクの精神で、日本に彼らが来た際に僕の実家を開放しようと思っている」と藤川氏。こうしたやりとりは実際に現地で行われることが多いそうで、オフライン・ローカルにしかない情報が得られるのも“アドレスホッパー”の醍醐味だ。

 しかし、こうした生活スタイルが増えることで、宿泊事業にデメリットはないのか。マスイ氏は「もちろん一番いいのはいきなり現地ローカルに飛び込むことだが、誰でもできるわけじゃないし、そうした場合に『エアビーアンドビー』はもっともローカルへのアクセスが容易なサービスだと思っている。だからもちろんサービスを使うこともあれば、あえてホテルに泊まることもあるし、選択肢の一つだろう」と説明。「そもそも、宿を寝るだけの場所と思いたくないし、寝るための場所だと家を借りた方がいいわけで。そもそも固定費だった家賃がただ変動費になるというだけではなく、ちょっと費用が増えてもそこで得られる経験とか、そもそもその地域にお金を落とすことでみんながハッピーになることとか、そういった側面がある。“アドレスホッピング”は結局オフラインの濃度を楽しむためのもの。非合理にみえるが、そこで得られるものはお金じゃ買えないし、モノでも測れない。コンテンツにできない、言語化できないものだ」と補足する。

 その上でマスイ氏は、会社員としてのメリットを強調する。「僕はむしろ会社員でもできるということを伝えたい。基準としてこれまでの家賃と旅費がイコールくらいになればいいとは思っているが、そもそも比較するものではない。僕は会社員なので、出張経費で落ちる分も合わせれば、キャッシュフローとしてトータルで上手く成り立てば、それでいい。組織としての考え方もあるので一概には言えないが、オンラインで仕事ができる形であれば望む人誰にでもできるライフスタイルだ。今の社会では『職場の負の環境から逃げたくてリモートワークを選ぶ』という構図が多いが、それは概念として間違っている。働き方については制度化されがちだが、どちらかといえば精神的な部分が大切で、それぞれがどうすれば働きやすいかが大事。“アドレスホッパー”でも海外を転々とする社交的な僕らのようなタイプがいれば、一方で都内だけを移動したり、日本にいくつかの拠点を構える人もいたりと、仕事に合わせてやり方はさまざま。僕はむしろ今会社に行くことがすごく好きで、実際に会った方が生産性が高いと思えることもある。でも、これは“アドレスホッピング”するからこそわかることかもしれない」。