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TGCは日本のリアルクローズをけん引し続けられる?

 2017-18年秋冬の東京コレクション(以下、東コレ)がメーン会場の渋谷ヒカリエで最終日を迎えた3月25日、近くの国立代々木競技場では2017年春夏の東京ガールズコレクション(以下、TGC)が開催されました。

 ご存じの方々も多いと思いますが、あらためてTGCと東コレは何が違うかといえば、東コレが主にファッション業界関係者に向けて半年先のファッションを提案しているのに比べ、TGCは消費者に向けて「今着られる」ファッションを提案しています。だからシーズンも半年違うのですね。TGCに参加するのは109やルミネなど、ファッションビルに出店しているブランドがメーンです。「セシルマクビー」や「ローリーズファーム」「ウィゴー」など一度は名前を聞いたことがあるブランドが多くそろいます。

 このTGC、実はラグジュアリーブランドの潮流の一つにもなっている“SEE NOW,BUY NOW”の先駆け的な存在です。というのもTGCはファッション通販サイトの「ガールズウォーカー」が始めたイベントで、そもそものコンセプトが「モデルたちが着た服をその場で買える」ことにあるからです。2005年の初開催以降、年に2回のペースで開催され、今回で24回目。初期の頃の蛯原友里、押切もえにはじまり、香里奈、山田優、水原希子、菜々緒、中条あやみといった日本のリアルクローズ業界をけん引するモデルたちを多々輩出しています。

 TGCに参加するブランドは主にティーンズから20代前半までの女性たちをターゲットにしています。業界では「ガールズ市場」と呼ばれています。先輩記者に聞くと、109が最盛期と言われた2000年前後にギャルブームで盛り上がりを見せた後、「キャンキャン(CanCam)」をはじめとした赤文字雑誌が影響力を強め、赤文字系といわれるエレガンス系やLAセレブ系ファッションが台頭したそうです。その後、青文字系や小悪魔系なども一時期はやったといわれました。ただし最近は少子化の影響もあるせいか、閉鎖するブランドも多く、「ガールズ市場は元気がない」という声が増えてきました。私も実際に取材に行くまでは、なんとなくそんな実感を抱いていました。

 しかし、実際に現場に行くとそのイメージは覆されました。開催当日の朝、まず、第一体育館をぐるりと取り巻く勢いの女の子の列にびっくりしました。取材は2回目で、前回の会場はさいたまスーパーアリーナでしたが、「そうだった、前回もこんな感じだった」と思い出しました。おそろいの格好、初々しいメイク、ショートパンツからスラリと伸びる脚……10代ってきらきらしているなぁと実感するような女の子たちが、寒い中地べたに座って開場を待っています。TGCには指定席や座れる自由席もありますが、ランウエイを囲むスタンディング席は先着順。少しでも良い場所を確保するために朝早くから並び、13時の開場と同時にものすごいダッシュで会場へとなだれ込みます。そしてそこから15時の開演まで、どころか21時半の閉演まで、立ちっぱなしでモデルたちに声援を上げるのです。一日ディズニーランドにいるよりも、ちょいちょい休憩が取れる取材陣よりも、絶対ハードです。

 私は開演を記者席で迎えました。記者席は2階の最前列。必死の思いでチケットを取ったかもしれない女の子たちより良い席に座って見られるわけです。厳粛な思いで周りの子たちの話に耳を傾けていました。巨大スクリーンでカウントダウンが始まると「やばいやばいやばい‼」と興奮の声。中条あやみがトップバッターで出てきたときには、その盛り上がり方にこちらも鳥肌が立ちました。クラブのような重低音が鳴り響き、その中をわざとクールな表情で歩くモデル(「ブランドイメージに合わせてクールに振る舞っていたけれど、思わず嬉しくて笑ってしまいました」と言うモデルもいました)、女の子たちの熱狂、憧れの人を見られる嬉しさ、そんなハッピーなムードが会場に溢れていて、「ガールズパワーってこのことだ!」と実感しました。小池百合子・東京都知事がステージに現れた時、会場がどんな反応をするんだろうと内心ドキドキしましたが、小池都知事の呼びかけに楽しそうに応えていました。小池都知事もそのムードを感じ取ったのだと思います(スーツで出てきたのがちょっと残念でしたが)。

 今回のTGCはいつにもましてエンタメ要素が強い回でした。桐谷美玲主演のドラマの収録が実際にステージで行われたり、T.M.レボリューションのライブが開催されたり、ブルゾンちえみが人気俳優とwith Bをやってみせたり(おもしろいことは何も言いませんでしたが)……。服が売れないと言われている今、「経験を楽しんでもらう」ということに力を入れた結果なのかもしれません。今回の来場者数は延べ約3万1400人。一時期に比べると確かに減ってはいるのですが、それでも一日にこれだけの女の子が一堂に集まるのはすごいことです。ファッションの現場では最近、「コト消費」が盛んに言われていますが、TGCはその先駆的存在と言えるかもしれません。ニューヨークへの進出も決まり、日本のガールズカルチャーはますますグローバルになっていきそうです。

 とはいえ、懸念していた通り、「ガールズ市場」の縮小に伴い、少し人気が下火になっている印象もあります。来場者は少しずつ減っており、開演前には超満員のプレスセンターも数時間後には空席がちらほら。また数百人のモデルや数百媒体のメディアに対応する現場スタッフもちょっと疲弊している感じがあります。「モノを売る」だけではなく、「コンテンツを提供する」となると、そこに関わる人員も労力もケタはずれです。しかもこの少子化の時代において、爆発的に人手が増える見込みはありません。日本のリアルクローズをけん引してきたTGCの現状はある意味、今後のファッション業界の様相を表していると言えるかもしれません。規模(=売り上げや経済効果)を落とさずに、新鮮なものを生み出し続けるにはどうしたら良いのか。難しい課題だとは思いますが、消費者の手を借りるのは一つの解決策になり得るのではないでしょうか?TGCでもLINEでのライブ配信や、ブースでの撮影ポイントはあるものの、ショーの写真撮影などは認められていません。自然とSNSでのシェア内容も限られてしまいます。この爆発的なパワーが現場以外の人に伝わらないのはもったいないと感じました。プレスセンターでさえも、音声ラインは会場のBGMなので、現場の熱狂や歓声は伝わってこないのです。オープニング映像をテレビで流すだけでも鳥肌が立つ視聴者は多いはずです。彼女たちが観客としてだけでなく、何かを生み出し、作り出し、伝えていく存在になったらどれほどのパワーを生み出すでしょうか。来場者による企画やコンテンツ、SNS上でのイベントなどがあればさらに盛り上がるに違いありません。もちろんそれらを運営するスタッフが別に必要になるわけですが、世界に発信する価値のあるコンテンツだからこそ、来場者がゆくゆくは担い手になるような好循環を生み出してほしい。そしてガールズパワーを発信する場として、日本のリアルクローズを先導していくようなイベントであり続けてほしいなと思ったのでした。