ファッション

「グッチ」ついに開花 デムナは苦手の「ブルジョワジー」をエッセンスに投入、プレッピーなどの新機軸も

ショーの後、デムナ(Demna)はバックステージで「『グッチ(GUCCI)』とは何なのかを本当に理解するのに1年かかった。『グッチ』には、実に多様な側面があるから」振り返った。今回の「グッチ」のコレクションは、ルネサンスにまで遡ってイタリアの美意識の原点を探った半年前のコレクションを踏まえ、いよいよ彼がブランドの大きな世界を掴み取り、そのコアバリューを彼らしく表現した印象が強い。いよいよ、デムナによる「グッチ」の花が開き始めた。世間の評価も、ピタピタなボディコンスタイルを連打して、かなりデムナだった半年前のコレクションより格段に良い。

「グッチ」の本質はブルジョワジー
デムナが「触れたことのない領域」

デムナは、「グッチ」の本質を「ブルジョワジー(有産階級、資産を持つ中〜上流階級の人たち)」と表現する。そしてある程度の資産を有するまでに至ったからこその自信や、ゆえに自分の中に育まれたという自負を持つ美意識がゆえに、「グッチ」には、「シャープでグラマラス、そしてある種の“心地よいスノビズム(気高さから生まれる選民意識)”がある。それを表現しようと試みている」と語った。

しかしデムナは、「バレンシアガ(BALENCIAGA)」時代、ブルジョワジーとは対極の、むしろブルジョワジーに対するカウンターカルチャーとも言えるストリートに立脚してきた。加えて幼い頃、生まれ故郷のジョージアは社会主義国家。ブルジョワジーは、雇う側の資本家階級を意味し、社会主義国家の根幹を成す労働者階級(プロレタリアート)は忌むべき対象でもあった。こうした過去からデムナは、「『ブルジョワジー』は非常に興味深いものであると同時に、少し恐ろしくもあった」と素直に認める。「『ブルジョワジー』は、これまで触れたことのない領域。『セクシー』や『セックスアピール』といった概念は理解しやすいものだったが、『ブルジョワジー』は、それよりも捉えにくいものだった」と続けた。

ブルジョワジーに
エキセントリックを融合

そこでデムナは、「『グッチ』はたった一つの側面を持つブランドではなく、複数の人格を併せ持っている」と考え、特に際立つ「ブルジョワジー」と同時に、「エキセントリック」にも焦点を当てた。彼は、「これこそが『グッチ』の独自性。どちらか一方には偏らない。もしブルジョワジーの要素しかなければアイデンティティーを保つのは難しいし、エキセントリックだけでもうまくいかない。対照的な2つのアイデンティティーの絶妙なバランスを見出し、それらを1つの“『グッチ』のアイデンティティー”として統合したかった」と語った。エキセントリックを通して、「グッチ」でのデビュー以来表現し続ける個々人のパーソナリティやアティチュードも醸し出そうとしているのだろう。

ショーは2部構成。前半がメンズで、その後がウィメンズだ。男女のモデルはいずれも自信に満ちた堂々とした態度で、デムナが「将来の店舗のモデルとなり得る」と話す、架空の「グッチ」の店舗内を歩く。店の外には、散歩を楽しんでいる人の姿。一方店の中を闊歩するモデルは、「グッチ」という店舗に入り、買い物を楽しんでいることに誇りや自信を持っているブルジョワジーだ。

新しいプレッピーは、キャンパスライフに
「馴染めなかった私立大学生」のイメージ

コレクションは、「グッチ」の広大な世界を表現するかのように、クラシックからストリート、そしてデムナには珍しいプレッピーの要素までで溢れかえった。だがいずれもブルジョワジーなムードを忘れない。ポケットにホースビットのモチーフをあしらったキルティングジャケットのレイヤードスタイルには、GGモチーフのベルトと白パン、それにピカピカに磨いたタッセルローファーで、ブルジョワな伊達男の雰囲気もプラス。フーディにはライナーにクロコダイルの型押しを施したレザーあしらい、艶っぽいブラックデニムにはホースビットが3つ並んだ存在感抜群のベルトを合わせて、自分を誇示するストリートスタイルにまとめた。スタンドカラーのジップアップニットや、クレリックタイプのポロシャツ、GGモチーフとリバーシブルのシャツなど、様々なアイテムを重ねることで、エキセントリックを表現する。

ウィメンズでは、コンパクトなシャツにケーブルニットの肩掛けという爽やかなスタイルに白パンと乗馬ブーツ、さらには大ぶりのサングラスを合わせて、やはりブルジョワな“選ばれた人”感を表現。様々なハンドバッグやサングラスにスティレットなどで、“選ばれた側”や“選ぶ側”な人間であるムードを醸す。文字にすると随分と生意気だが、これこそがデムナがいう「心地よいスノビズム」なのだろう。

ウィメンズでも新機軸のプレッピーは、チェックのプリーツスカートにコンパクトながらボリュームあるボンバーズを合わせ、ネックレスを幾重にも巻き付けた。デムナは、「名家の御曹司や令嬢が私立大学に通ってはいるけれど、そこには馴染めず、でも服はそのまま着続けている……、そんなイメージ。現代的でクールな着こなしだから、いわゆるブルジョワ的な堅苦しさとは無縁。『グッチ』なら、こうしたブルジョワジーが表現できる。サテンのスカートにボンバージャケットを合わせたり、ラグビーシャツをレイヤードしたりといったマキシマルなスタイルも提案した。これも、これまではあまりやってこなかったスタイル」と語る。

これまでのクリエイションは、結果「グッチ」のモチーフをふんだんに取り入れたデムナのスタイル、という趣が強かった。だが今回は、真の意味でデムナが新しい形で彩る「グッチ」のスタイルという表現となった。いよいよ彼と「グッチ」の世界の拡張が始まる。

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