9月に正式発足予定の同組織は、独立系調香師の報酬体系やクレジット表記のあり方などについて、公正な慣行の確立と業界標準化を目指す。ブランド創業者や原料サプライヤー、コンテンツクリエイターなど、香水業界に関わる幅広い職種も参加可能だ。「調香業界では多くの前向きな動きが起きている。その良い流れをさらに広げたい」とノードストランド氏は語る。また、独立系調香師の支援だけでなく、「芸術表現としての調香文化そのものを発展させること」も組織の目標だという。
ノードストランド氏は独立系フレグランスアトリエ「ミソロジスト・スタジオ(Mythologist Studio)」の創設者で、グラース香水学院(Grasse Institute of Perfumery)の香料創作・官能評価国際技術ディプロマ(修了証)など複数の専門資格を取得している。「独立系調香師にとって今は非常に興味深い時代だ。インディズフレグランス市場は急成長している。一方で今こそ、『私たちは組織化できるのか』『別のやり方を考えられないか』と議論を始めるべきタイミングでもある」と語る。
香水開発へのAI活用にも反対を表明
市場調査会社NIQによると、2025年のインディーズフレグランス市場の売上高は前年比46%増となり、大手企業傘下ブランドの同11.4%増を大きく上回った。こうした市場環境を背景に、ユニオンは主な活動方針として、ブランド公式サイトやSNSなどで調香師名を明記すること、制作の成否にかかわらず開発期間に対する報酬を支払う開発フィー制度の導入を業界標準とすること、さらに香水開発へのAI活用に反対することを掲げる。
ノードストランド氏は、「『ロード・オブ・ザ・リング』を読んで、『アレン&アンウィン(Allen & Unwin)の素晴らしい小説だ』とは誰も言わない。著者であるJ.R.R.トールキン(John Ronald Reuel Tolkien)の名前が必ず記されている」と例を挙げる。さらに、「調香師向けの『グラフィック・アーティスト・ギルド・ハンドブック(Graphic Artist Guild Handbook)』のような存在を作りたい」と話す。同ハンドブックは、価格設定やライセンス契約、契約交渉などの指針をまとめたクリエイター向けガイドとして知られる。「ブランドとの交渉で開発フィーの支払いを拒まれた際に、『独立系調香師が開発フィーを請求するのは業界標準だ』と示せる基準を作りたい」と述べた。
8月に初のコミュニティーイベント開催
ユニオンの理念や活動内容を紹介する公式サイトは現在開発中で、9月までに公開する予定だ。公式インスタグラム(@perfumersunion)でも情報発信を行う。初のコミュニティーイベントは8月、米国ニューヨークのニッチフレグランス専門店「ステーレ(Stele)」で開催する。同店創業者のジェイク・レビー(Jake Levy)氏とマット・ベランジャー(Matt Belanger)氏のほか、英国の独立系香料ラボ「オルフィクション(Olfiction)」共同創業者のピア・ロング(Pia Long)氏、スウェーデンのフレグランス展示会「ポラリス・オルファクティブ(Polaris Olfactive)」共同創業者のサマン・エリアス(Saman Elyass)氏がアドバイザリー委員会に参加している。
ノードストランド氏によると、8月の初回イベント後はオンラインと対面を組み合わせた形式で年数回のコミュニティーミーティングを実施する予定だ。「このムーブメントの核となるコミュニティーを形成し、将来の方向性を共に築いていきたい」と話している。
フレグランスは過去4年以上にわたりビューティ市場で最も成長率の高いカテゴリーとなっている。市場調査会社サカーナ(CIRCANA)によると、米フレグランス市場の26年第1四半期の売上高は、マスマーケットカテゴリーが前年同期比16%増、プレステージ市場が前7%増だった。
米国フレグランス財団が今月開催した「フレグランス・ファンデーション・アワード(The Fragrance Foundation Awards)」では、DSMフィルメニッヒ(DSM-FIRMENICHI)のマスターパフューマー、オノリーヌ・ブラン(Honorine Blanc)氏らが表彰され、業界の発展を支える人材にスポットライトを当てた。