スイスを代表する時計メーカー「スウォッチ(SWATCH)」 は4月初旬、アクションスポーツイベント「スウォッチ ナインズ スノー 2026(Swatch Nines Snow 2026)」を北海道・ニセコで開催した。ヨーロッパを中心に展開してきた世界最高峰の同イベントが、アジアで開催されるのは今回が初めて。「2026年ミラノ・コルティナ冬季オリンピック」のメダリストを含む50人以上のスキーヤーやスノーボーダーが集結し、競技の枠を超えた創造的なライディングを披露した。
競技性や商業性に依らないアスリート主導のイベント
1983年に創業した「スウォッチ」は、“気軽に楽しめるセカンドウォッチ”をコンセプトに掲げたユニークなデザインとリーズナブルな価格から、当初よりスケートカルチャーやストリートシーンとの結び付きが強く、1990年代からスポンサードを本格化。その後、2008年に現在の「スウォッチ ナインズ」の前身となるスノーイベントがスタートすると、今ではマウンテンバイクやBMX、サーフィン、スケートボードなどの他アクションスポーツにも参入し、今回で38度目の開催を迎えた。
そして、「スウォッチ ナインズ」の特徴は大きく2つある。ひとつは、競技性や商業性から距離を置いた点だ。多くのアクションスポーツイベントが莫大な賞金や順位、勝敗といった競技性を重視する中、「スウォッチ ナインズ」は“創造性を魅せ合うこと”にフォーカス。その結果、参加するアスリートたちが自由な発想で個性とスタイルを表現できる場として、スポーツとクリエイティブが交差する独自のポジションを築いてきたのである。
もうひとつが、アスリート主導によるコース設計だ。開催前にアスリートたちを招待したワークショップが行われ、彼らのアイデアをもとにコースがデザインされる。今回は、「スウォッチ」のプロチームに所属し、ハーフパイプにおける世界最高到達点(7.72m)の記録を持つ平野海祝選手が考案した巨大クォーターパイプ「カイシュウズ QP」をはじめ、トランポリンを備えた「ミニ ヨウテイ JIB パーク」、全長50メートルのレール「チューブ ウェーブ」など、独創的なセクションが「ニセコ東急グラン・ヒラフ」に設置された。なお、設営は約1カ月前から行われ、世界各国から集まった17人のコースデザイナーが担当。人工雪は使用せず、すべて現地の天然雪のみで制作されている点も特徴だ。
「次の世代にインスピレーションを与える」
4月6日から11日までの期間中には、五輪ハーフパイプ3大会連続メダリストの平野歩夢選手や、「2026年ミラノ・コルティナ冬季オリンピック」のスノーボード女子ビッグエアで金メダルを獲得した村瀬心椛選手ら日本勢に加え、同じくスキー男子ビッグエアで金メダルを獲得したノルウェーのトルモッド・フロスタッド(Tormod Frostad)選手や、同じくスキー女子ビッグエアで金メダルを獲得したカナダのミーガン・オールダム(Megan Oldham)選手ら、世界各国のトップアスリートたちが来場。それぞれが、コースの各所で高難度のトリックを披露した。
会場には、「スウォッチ ナインズ」を運営するザ ナインズ AG(The Nines AG)のニコ・ザジェック(Nico Zacek)最高経営責任者(CEO)も姿を見せ、立ち上げの背景について「もともと私は、プロのフリースタイル・スキーヤーで、世界中を転戦していたあるとき、『スポーツの本質は、競争や国のためではない。仲間と楽しむものだ』と気付いた。そこで、世界中のトップアスリートに競い合う場ではなく、純粋に楽しむだけの“オールスターゲーム”のようなプラットフォームを提供することを決めた」と説明。続けて、「競技性を排除したアクションスポーツイベントを成立させるのは、より困難な選択だった。しかし、“世界最高のライダーたちが集まり、次の世代にインスピレーションを与える”というストーリーが紡げる。これこそが、『スウォッチ ナインズ』の本質だ」と、開催意義を語ってくれた。
また、アジア初上陸となったニセコ開催については、「大量の雪を必要とする会場設営において、世界有数の豪雪地帯であることが決め手の一つだった。雪質や天候の違いから多くの学びもあったが、羊蹄山を望むロケーションはヨーロッパとは異なる“日本らしさ”を生み出してくれる」と評価した。
参加したアスリートを代表して平野海祝選手に話を聞くと、「一般的な大会と『スウォッチ ナインズ』では、滑り方も気の持ち方も180度違う。自分は、スノーボードのシーンでは珍しい3S(スノーボード、スケートボード、サーフィン)をやっているからこその唯一無二のスタイルを持っていて、それを結果やプレッシャーを気にせず好きに表現できるのは楽しい。心の中を全てさらけ出す感覚に近い滑り方が、自分には向いているし、これが本当のスノーボードのあり方だと、『ナインズ』に参加するたびに思う」とコメントした。
「スウォッチ ナインズ 」は今後、6月15~20日にオーストリア・ゼルデンで「スウォッチ ナインズ バイク」が、10月8~10日にアメリア・テキサスで「スウォッチ ナインズ サーフ&スケート」が開催されるほか、2028年には「スウォッチ ナインズ スノー」の日本再上陸が決まっている。