ファッション

服作りをマンツーマン指導「日本テーラー技術学院」が生徒募集

 銀座テーラー(東京、鰐渕美恵子・社長)のベテラン職人が講師を務める夜間学校「日本テーラー技術学院」は、2006年の開校以来、多くの人にスキルアップの機会を提供してきた。同校に集う生徒のバックグランドはさまざま、学ぶモチベーションも十人十色である。

 婦人服アパレルの商品企画を経て、14年前からクチュールデザイナーとして活動する伊藤真理さん(15年3月卒業予定)は、ドレスを作る自分の技術に自信を持っていたが、一方で新しい表現の手法を求めていた。「いろいろ試行錯誤して行き着いたのがテーラーでした。実際に学ぶと想像した以上に奥が深かった」と振り返る。例えばアイロン。その技術次第で彫刻のようにシルエットが変わることに驚いた。「ドレス作りにはないやり方です。立体的に仕上げるアイロンには、作り手のセンスが凝縮されます。これに限らず、授業のたびに自分の引き出しが増えていく手ごたえがありますね」。同じ採寸で型紙を作るのでも、職人によってカチッと正統派なラインになったり、セクシーなラインになったりする。CAD/CAMが主流の既製服の世界では分からない、ハンドメードならではの発見が多い。

 カジュアルショップの販売員だった小田弦次郎さん(14年3月卒業)は、販売スキルを高める目的で入学した。洋裁を学んだ経験はゼロ。縫い針を手にするのも小学校の家庭科以来だった。それでも講師の熱心なマンツーマン指導と持ち前の探究心で少しずつコツをつかんだ。「原理原則が理解できると途端に面白くなりました。縫い方一つとっても体の部位ごとに強弱を変えないと、フィットして動きやすいスーツにはなりません。一つ一つの技術にきちんと理由があるんです」。服作りの現場を知ったことで、顧客に対して踏み込んだ接客ができるようになった。商品が出来上がるまでを体で覚えた強みが接客で生きた。テーラーの魅力に取りつかれた小田さんはその後、銀座テーラーの販売職に転じた。「注文するお客さま、その声を細かく拾い上げる販売員、それを形にする職人の3者の共同作業で1着のスーツを作っていくのが醍醐味です」と仕事にやりがいを感じている。

 もうすぐ卒業を控える伊藤さんは「今のファッション業界は、働く人でさえ本当に良いものに触れる機会が減っている気がします。1年間、最高峰のハンドメードの技術を知れたことは得難い体験になりました」と話す。小田さんは「僕は販売職の人こそ、ここで学ぶべきだと思います。別に職人にならなくてもいい。服が完成するまでのストーリーを知ることでお客さまへの説得力がまったく違うと毎日実感しています」と同校を勧める。

 日本テーラー技術学院では2015年4月の入学希望者に向けたセミナーを3月7日(土)と14日(土)に実施する。テーラードの基本や年間のカリキュラムについて説明する。

■日本テーラー技術学院 技術公開セミナー
開催日:2015年3月7日(土)、3月14日(土)
時間:13:00?15:00
場所:東京都中央区銀座5-5-16 銀座テーラービルディング5階
会費:無料
定員:20名
TEL:03-3574-6891
ホームページ:http://gintei.com/jitt/event.html

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