ファッション

5シーズン目の「ユニクロ:C」 クレア・ワイト・ケラーがブランドの進化を韓国・ソウルで語る

ユニクロ(UNIQLO)」は9月3&4日、韓国ソウルでクレア・ワイト・ケラー(Clare Waight Keller)による「ユニクロ:C(UNIQLO:C)」の2025-26年秋冬コレクションのお披露目イベントを開催した。第1弾はすでに販売しているが、第2弾は5日に「ユニクロ」店舗と公式オンラインストアで発売する。

クレアは、「イングリッシュツイードなどの伝統的な素材にモダンな色とテクノロジーを掛け合わせ、クリーンで機能的なトラッドスタイルを提案した。ウィメンズのジャケットはタイト&ロングな新しいシルエットにミニスカート。キーピースはシャツで、メンズではクラシックながらオーバーサイズに仕上げている。先染めの糸を織ったデニムのジーンズは、ソフトな光沢でエレガント。大成功しているスエットにはキャメルカラーを加え、引き続きクリーンにまとめている」などと魅力を話す。改めてクレアに「ユニクロ:C」の今を聞いた。

「ユニクロ:C」の特徴は、インキュベート機能
一方の「ユニクロ」は、みんなのワードローブ

ーー改めて「ユニクロ:C」とは、どんなブランドなのか?
クレア・ワイト・ケラー「ユニクロ」クリエイティブ・ディレクター(以下、クレア):2025-26年秋冬は、「ユニクロ:C」にとって5シーズン目となるコレクション。デビュー以来進化を続けているが、昨年9月にメンズも加わったことで奥行きを増した。それまでは当然女性のファッションにフォーカスしていたが、メンズを始め、男性と女性のクロスオーバーを意識するようになった。実際メンズを購入する女性、ウィメンズを買う男性はとても多い。今は全体では男性らしいファッション、女性らしい装いを目指しているが、1着1着の商品のデザインではユニセックスであることを強く意識している。もちろんドレスやスカートはウィメンズだが、それに合わせるトップス、セパレートのアイテムには男性のファンも多い。

そして今回最新コレクションに関するイベントを開催した韓国が代表的だが、「ユニクロ:C」のデビューで若い世代のファンが増えている。特にウィメンズは、それまでの30〜40代のコアな女性に加え、15〜20代のファンが増えた。

ーー特に「ユニクロ:C」のスエットは、若い世代に大ヒットした。
クレア:狙い通りのヒットだったけれど、その成果は予想以上だった(笑)。「ユニクロ:C」のスエットは、新しい素材による、クリーンで、モダンなシルエット。通常スエットの裏地はパイル地だったり起毛していたりするが、「ユニクロ:C」のスエットはダブルフェイス(裏地も、表地のように美しい素材のこと)。そんな素材でラウンドシルエットのスエットを提案したら、若い世代が反応してくれた。ジョギングパンツは、テーラリング由来のシルエット。快適なのに、美しい。私が作りたい洋服の代表例となった。一番売れているのは、ライトグレー。クラシックな色だが、素材とシルエットで新鮮に見える。

ーー昨年には「ユニクロ」のクリエイティブ・ディレクターにも就任した。「ユニクロ:C」と「ユニクロ」の違いは?
クレア:「ユニクロ:C」最大の特徴は、インキュベート機能。新しい生地、テクニックをテストする場所だ。新たな挑戦なので、「ユニクロ」のように大量に作ることは難しい商品も多い。でも「ユニクロ:C」で成功したら、1、2シーズン後には「ユニクロ」に取り入れるかもしれない。一方の「ユニクロ」は、もっとシンプルな、みんなのワードローブ。最高のホワイトTシャツ、万能なブラックパンツなどのエッセンシャルなアイテムに少しだけファッション性を加えるように意識している。

ユニクロとラグジュアリーの違いは
機能性も重視する姿勢

ーー改めてユニクロでの仕事と、それまでのラグジュアリーやデザイナーズブランドでの仕事の違いは?
クレア:ユニクロとメゾンが異なるように、それぞれのメゾンはたとえ同じパリに拠点を構えていても異なっているが、デザインプロセスには共通点が多い。全ては、私のアイデアやコンセプトから始まる。展覧会に行って新たな刺激を得たり、街に出て人間観察してみたり、生地をリサーチしたり、その中でもさまざまな色に触れたりしながらスケッチを描き溜め、サンプルを作って、フィッティングに臨み、改良・改善を繰り返す。他のブランドとの違いは、ユニクロにはテクノロジーがあること。ユニクロは機能性も重視しており、(ヒートテックやエアリズムを共同開発した)東レのように素晴らしい生地メーカーと繋がっている。こうした環境と機能性を重視する発想は、以前の私にはなかったもの。今はデザインと機能性を融合するのが、とても楽しい。機能性素材を使いながら、どんなパターンやシルエットならドレープが生まれるのか?重さを変えたら、違う動きが生まれるのではないか?と考え、デザインとテクノロジーの間を行ったり来たりしている

ーークリエイションにおいては、何度も何度もサンプルを作ると聞いた。
クレア:最初は、欧米では当たり前だけど、アジアでは気にしなければならない配慮、たとえば透け感などのベストを追求するために何度もサンプルを作って確かめた。そんな西洋と東洋の違いには慣れてきたけれど、私は今なお何度もサンプルを作っている。これもラグジュアリーブランドとユニクロの違いかもしれないけれど、私はXSからXLまで、全てのサイズでサンプルを作り、シルエットを確かめている。みんなにとって美しいプロポーションであることが、民主的な「ユニクロ:C」や「ユニクロ」らしいと思っているから。私たちが作る洋服は、富裕層のためだけのものじゃない。それもまた、すごく面白い。最近もパンツのウエストにエラスティック(ゴム)を内蔵すると凸凹してしまうのが気に入らなくて、3、4回は修正した。「ユニクロ:C」のクリーンなスタイルだからこそ目配りできた配慮だと思う。こだわればこだわるほど、長く着てもらえると思っている。

「価格は、大きな制約ではない
私にとって最大のチャレンジは……」

ーー「ユニクロ:C」や「ユニクロ」の誰でも買える価格は、制約ではないのか?
クレア:価格は、正直あまり大きな制約ではないと思う。ユニクロは素晴らしいサプライヤーとの強固な関係を有しているから、選択肢、特に生地の選択肢に不満を持ったことはない。少し大変なのは、デザイン。大勢の人たちに着てもらうためには、全てのアイデアやディテールを取り入れるのではなく、削ぎ落としていくことも大事。装飾ではなく、意味のあるディテールだけを残している。でも私にとって最大のチャレンジは、エディットすること。毎シーズン多くのアイデアが浮かぶけれど、「ユニクロ」や「ユニクロ:C」では、何かにフォーカスすることが大事。エディットする中で、消費者のニーズを捉える必要がある。たとえばジャケットなら10種のサンプルを作っても、6つに絞らなくちゃいけない。全てに思い入れがあるから、たった4つでも捨てるのは本当に大変。できれば次のシーズンに新しい生地、新しい色、新しいシルエットで進化させて、再提案できればと思っている。

ーー今日は最新のプリーツスカートに、25年春夏メンズのVネックニットを合わせている。
クレア:鮮度は大事だが、前のコレクションと今のコレクションを自然に、無理せずコーディネイトできることはとても大事。「この色と、この色は合わないね。だから新しい洋服を買わなくっちゃ」ではなく、全ての洋服が簡単にコーディネイトできるから、毎シーズン1、2着を買い足すことで、個々人のワードローブが豊かになっていけばと思う。私自身、今なお「ユニクロ:C」のファースト・コレクションを着ている。今は選択肢が多すぎる時代。みんな時々、「多すぎて、選べない」と困っているような気がする。だからこそ気をつけてエディットしながら、新しいものを足していくのが現代的なデザインアプローチだと思う。また、こうして長く着られることが、一番サステナブルだと思う。

ーースケールが大きなユニクロでのサステナビリティーに向けた取り組みは?
クレア:さまざまな取り組みに挑戦しているが、大事なのはコットンやリネン、メリノウール、カシミヤなどの主力商品では、100%単一素材の商品も販売すること。単一素材だとリサイクルしやすいから。その上でリサイクル素材も上手に活用している。

ーー大規模なブランドを手掛けているが、売り上げへのプレッシャーは感じる?
クレア:売り上げは、とても気にしている(笑)。だって私の決断が将来、大きなインパクトになるんだから。経験豊かな同僚と話し合い、「今回はチャレンジしよう」や「少し様子を見てみよう」などバランスを取ることを心がけている。

ーー今回はなぜ、韓国のソウルでイベントを開催したのか?
クレア:「ユニクロ」で仕事をしている今は、年に8、9回来日している。週末は都内はもちろん、関西や北陸、北海道などを旅しているが、飛行機で2時間だから韓国に行くことも多い。韓国は、他と違っていて、とても面白い。ストリートには若い世代が多く、みんなファッション・コンシャス。カフェに座って、そんな人たちを観察しているのはとても楽しい。アイデアとユースカルチャーのメルティング・ポット。若い世代にも支持を広げている「ユニクロ:C」らしいと思う。

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