ロート製薬が掲げるのは「薬に頼らない製薬会社」というビジョンだ。その根底には、「食べること」こそが健康の原点との考えがある。「食から健康」、さらには「豊かで健康的な社会」の実現を目指し、2013年にアグリビジネスに本格参入。翌年に創業者・山田安民氏の出生地である奈良県宇陀市で農業法人「はじまり屋」の設立と、沖縄・石垣島の農業法人「やえやまファーム」をグループ会社化するなど、事業領域の拡大を進めてきた。(この記事は「WWDJAPAN」2025年4月28日&5月5日合併号付録「WWDBEAUTY」からの抜粋です)
「薬に頼らない製薬会社」が目指す
“食からの健康”

中でも「やえやまファーム」では、畜産や農産、加工・販売までを一貫して手がけ、独自の環境負荷の少ない“循環型6次産業化”に取り組む。6次産業化とは、一次産業(農業)、二次産業(加工)、三次産業(販売)を組み合わせ、地域の産業活性化と付加価値の創出を目指す取り組みだ。日本で唯一JAS認定を受けている有機パイナップルの栽培、石垣牛や南ぬ豚(ぱいぬぶた)の畜産、それら地域産品を活用した加工食品の製造・販売を行っている。地域資源の活用にも力を入れており、沖縄の特産品であるシークワーサーを仕入れて搾汁し、飲料メーカー向けに原料供給するなど、多角的な事業展開が進む。
さらに、廃棄物の再利用といった循環型の取り組みも特徴だ。パイナップルジュースの搾りかすを豚の飼料に活用し、アグー豚の一種「南ぬ豚」としてブランド化。甘みのある肉質が評価され、テレビ番組で取り上げられるなど注目を集めている。また、地元の酒造メーカーから出る泡盛の蒸留かす(酒かす)を牛の飼料に活用するなど、地元資源の循環も進めている。最近の研究では、泡盛の蒸留かすを配合した発酵飼料を与えた牛は、通常飼料の牛と比べてメタンガスの発生量がおよそ47%減少するという成果も確認された。中家勝則やえやまファーム社長兼ロート製薬アグリ・ファーム事業部部長は、「一般の農家では難しい分析も、研究機関を持つロート製薬だからこそできる。単なる地域密着型の農業にとどまらず、自社の強みをどう社会に還元できるかを常に考え、実践している」と、地方の農業と企業の技術力との“掛け算”に大きな可能性を見いだしている。「1つの成功事例ができれば、全国に展開できる。その仕組みを地域に還元していきたい」と意気込む。
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