カナダの大手百貨店ハドソンズ・ベイを運営するハドソンズ・ベイ・カンパニーULC(HUDSON'S BAY COMPANY ULC以下、ハドソンズ・ベイ)は3月7日、オンタリオ州上位裁判所に企業債権者調整法(Companies’ Creditors Arrangement Act以下、CCAA)の適用を申請し、これが承認されたことを発表した。CCAAは日本の民事再生法や、米国の連邦破産法第11条にあたるもので、同社はつなぎ融資を受けながら事業再建を目指すこととなる。なお、今回受ける融資により同社は10日程度の事業継続が可能となるが、その間に再建計画もしくは融資期間の延長を裁判所に提出する必要があるという。
同社は長らく業績が低迷しており、その主な要因として、小売り環境の変化やコロナ禍後に売り上げが回復しなかったこと、デジタル化に関する多額の投資が重しとなったことなどを挙げている。また、最近ではドナルド・トランプ(Donald Trump)米大統領によるカナダへの追加関税にまつわる混乱が、業績悪化に拍車をかけたという。
同社は現在、およそ80の店舗を運営。今回のCCAAの適用に伴い、いくつかの店が閉じられる見込みだが、現時点で詳細は明らかにされていない。
355年と北米最古の歴史を持つハドソンズ・ベイ
ハドソンズ・ベイは、1670年に貿易会社として設立。北米で現在も事業を継続している企業の中で最古といわれている。1881年には、カナダ・マニトバ州で百貨店ハドソンズ・ベイをオープンした。同社は時代によってさまざまなオーナーの手を経ているが、2008年に不動産開発や小売りを専門とする米投資会社NRDCエクイティ・パートナーズ(NRDC EQUITY PARTNERS)が買収。同社の創業者の息子であり、取引を先導したリチャード・ベーカー(Richard Baker)が、ハドソンズ・ベイのエグゼクティブ・チェアマン兼ガバナー(後に会長兼最高経営責任者(CEO))に就任した。12年にトロント証券取引所に上場。13年には、米百貨店サックス・フィフス・アベニュー(SAKS FITH AVENUE)を買収した。
2019年に上場廃止し持株会社に
その後しばらくは業績を伸ばしたものの、ECの台頭などによって小売り環境が大きく変化し、16年頃から失速。19年には、「短期間での成果やリターンが期待されない環境で再生を目指したい」として、ベーカー会長兼CEOを含む複数の主要株主が同社の発行済み株式を買い取る形での上場廃止となった。その際、持株会社ハドソンズ・ベイ・カンパニー(HUDSON'S BAY COMPANY以下、HBC)を設立し、組織を再編している。
新会社から切り離されたハドソンズ・ベイ
HBCは24年7月、米百貨店ニーマン・マーカス(NEIMAN MARCUS)やバーグドルフ・グッドマン(BERGDORF GOODMAN)を運営するニーマン マーカス グループ(NEIMAN MARCUS GROUP)を26億5000万ドル(約3895億円)で買収。取引の成立後、HBCは百貨店の運営と店舗の土地開発などの不動産業を行う新会社サックス・グローバル(SAKS GLOBAL)を設立し、ベーカー会長兼CEOがエグゼクティブ・チェアマンに就任した。これに伴い、持株会社としてのHBCは解散。年商100億ドル(約1兆4700億円)規模と見込まれる新会社は、サックス・フィフス・アベニュー、そのオフプライスストアであるサックス・オフ・フィフス(SAKS OFF 5TH)、ニーマン・マーカス、バーグドルフ・グッドマンを運営しているが、ハドソンズ・ベイは含まれていない。