ファッション

アパレル広報とベリーダンサー オンワードの若手女性社員が歩むパラレルキャリア

働き方に“正解”はない時代。アパレル業界でも一つのキャリアに縛られず、自分らしく働くことを望む若者が増えている。大手アパレルのオンワードホールディングスで働く髙橋和佳子さん(27)もその一人だ。

某日、都内のレストランでベリーダンスショーが開かれた。客の視線を一身に浴びるのは、きらびやかな衣装に身を包んだ髙橋さん。ムーディーな音楽に乗せた流麗なダンスに、会場は拍手喝采に包まれた。

ショーがフィナーレを迎えると、時計はすでに夜の22時を回っていた。髙橋さんは手早く着替えを済ませ、足早に会場を後にする。明日は朝から、日本橋のオンワードグループ本社に出勤しなくてはならない。

自由でその人らしさが表現できる
フュージョンベリーダンスの魅力

プロのベリーダンサーとしての顔を持つ髙橋さんは、オンワードホールディングスに新卒入社して現在5年目。婦人服ブランド「ICB」を経て広報部に配属された。「(広報は)私のような若手が配属される事があまりないポジションなので、辞令を聞いて驚きました。広報業務は、グループ全体の方向性や子会社の状況、業界全体の動向まで理解していないと務まりません。今も勉強の毎日です」。現在は「アンフィーロ(UNFILO)」「ステッピ(STEPPI)」「ネイヴ(NAVE)」といった成長フェーズのD2Cブランドを担当し、プレスリリースの作成やメディアの取材対応が主な仕事だ。

ベリーダンスとの出合いは、東京外国語大学在学中に友人に誘われ、部活に入ったのがきっかけ。東京外大のベリーダンス部は、日本初のプロベリーダンサーが指導する名門。手を引かれて飛び込んだ世界だが、「気がついたら部長になっていた」と笑う。

髙橋さんがのめり込んだのは、ベリーダンスにさまざまな音楽やカルチャーを融合した「フュージョンベリーダンス」。ベリーダンスの伝統を重んじながらも、音楽や衣装、踊りのスタイルなどは自由。踊り手それぞれの個性を出せるのが魅力だ。「サンバを踊るならお尻が大きい方がいいとか、K-POPは肌が白くて細いのが正義とか、そういう“美しさの基準”がない。どんな体形の人が踊っても、その人の女性らしさがちゃんと見える、インクルーシブなダンスなんです」と目を輝かせる。

社内の新制度を活用
出演やレッスンの日は早め退勤

大学を1年間休学し、米国にダンス留学もした。帰国後はプロも視野に入れ、一層打ち込んだ。ただダンスだけで食べていくのは難しいとも感じていたという。「ベリーダンスを続けていきたいからこそ、一般企業への就職を選ぶべきだと思っていました」。服が好きで、「就職するならアパレル」と考えていた髙橋さんは、数社の採用面接を受けてオンワードを選んだ。

入社以降も仕事の傍ら、夜はベリーダンスの練習を続け、休日はイベントに参加するなど腕前を磨いてきた。22年の7月にグループとして副業が正式に解禁され、入社4年目以降の社員が対象となった。髙橋さんは昨年4月にプロダンサーとしての活動が社内で承認され、同年6月にフュージョンベリーダンスの全国大会で優勝。「社内でも、プロダンサーですと胸を張って言えるようになりました」。

現在はイベント出演やレッスン講師業でも報酬を得ている。オンワードは社員の柔軟な働き方を推奨する目的で、朝8〜10時の間から10分刻みで出勤時間を自由に決められる新制度もスタートした。髙橋さんは夕方にレッスンやイベントがある日は早めに出勤し、仕事を切り上げてダンススタジオや会場に直行する。

社内では今年3月から、広報業務に加えてサステナビリティ推進担当を兼任し、新たなインプットに追われている。へとへとになって帰った日も、ダンスの振り付けの作成やパフォーマンス練習は欠かさない。

「ダンスで誰かの背中を押したい」
社内では新しいロールモデルに

プロを名乗るようになって、ダンスに向き合う意識が変わったという髙橋さん。「多くの人がイメージするベリーダンスは、長い髪を靡かせて、キラキラの衣装で、セクシーな動きで男性を喜ばせるダンス。でも私がやりたい表現は少し違う。誰もがコンプレックスを抱えているけれど、私はダンスを通じて自分を思い切り表現できるようになった。完璧じゃなくていいし、どこか欠けていたり、傷がついている方がきれいかもしれない。そんなことをダンスで伝えられたらと思います」。

誰かを勇気づけたいという思いが原動力だ。ショーは髙橋さん自ら企画し、集客までする。インスタのストーリーにダンス動画を載せたり、チラシを配ったり。一人でも多くの人にベリーダンスに興味を持ってもらおうと考えてきた。

「伝える」ための地道な努力は、オンワードの広報の仕事にも生きている。髙橋さんは社内用動画コンテンツの取材・制作も担当する。「グループの中には、すごく価値があるけれど、他の社員にすら知られていない仕事がある。私はそれを発掘して光を当てたい」と話す。「普段、自分で撮ったダンスの動画を編集してインスタに投稿していますが、これが(オンワードの)業務にも結構役に立っているんですよ」。

今後もオンワードで働きながら、プロのベリーダンサー業を続け、「新しい働き方のロールモデルになりたい」との思いを強くする。「後輩社員や、アパレル業界を目指す学生さんが、こんな働き方もアリなんだ!と思ってくれたら。それだけでも、やっていてよかったなと感じられますね」。

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