ファッション

セシリー・バンセンが語る「アシックス」コラボとブランドの成長 “一瞬のロマンス”のために

PROFILE: セシリー・バンセン/「セシリー バンセン」デザイナー

セシリー・バンセン/「セシリー バンセン」デザイナー
PROFILE: デンマーク出身。2007年にデンマークのデザイン学校を卒業。衣装デザイナーのアニャ・ヴァン・クラーウのアシスタントとしてデンマーク王立劇場のオペラ衣装の制作や、フリーランスとしてクリスチャン ディオールのプロジェクトに携わる。ジョン・ガリアーノの下でインターンシップを行なった後、第一線のアシスタントおよびプリントデザイナーを務める。10年、イギリスのロイヤル・カレッジ・ オブ・アートでウィメンズウエアの修士号を獲得。「アーデム」でデザインアシスタントとして経験を積み、15年にコペンハーゲンへ戻り「セシリー バンセン」を立ち上げる。17年には「LVMHプライズ」のファイナリストに選出され、22-23年秋冬からパリ・ファッション・ウイークでコレクションを発表する PHOTO:ASUKA ITO

デンマーク発のブランド「セシリー バンセン(CECILIE BAHNSEN)」は11月22日、「アシックス(ASICS)」とのコラボレーションスニーカー第2弾(全2種、各2万7500円)を発売する。7月に発売した第1弾は日本でもすぐに完売するほどの人気で、第2弾の新作は抽選販売の申し込みを「アシックス」公式サイトで19日まで受け付けている。一般販売に先駆けて開催した東京・表参道での先行発売を兼ねたイベントに合わせて、デザイナーのセシリー・バンセンが来日した。当日は、自身のブランドのガーリーなドレスに、「アシックス」のランニングバックパックを合わせて会場に姿を見せた。5回目の来日を果たしたバンセンに、コラボに込めた思いやブランドの成長について聞いた。

コラボ第2弾は色使いに挑戦

WWDJAPAN(以下、WWD):「アシックス」との協業に至った経緯は?

セシリー・バンセン(以下、バンセン):「セシリー バンセン」のコレクションでは着心地を重視したフラットシューズを作っており、快適で機能性に優れたシューズの「アシックス」とはいつか協業してみたいと思っていたんです。幸いなことに「アシックス」も私たちのブランド理念に共鳴してくれて、コラボが実現しました。

WWD:「アシックス」に抱くイメージは?

バンセン:もともとは、“ゲルカヤノ 14(GEL-KAYANO 14)”などのスポーティーなランニングシューズのイメージが強かったです。コラボ前から、コペンハーゲンの女の子たちは「セシリー バンセン」のドレスに「アシックス」のスニーカーを合わせていて、新たな可能性を感じていました。そういったストリートスタイルは、コラボレーションモデル制作のインスピレーションになっています。

WWD:「アシックス」とのコラボでこだわったポイントは?

バンセン:第1弾は黒と白の2色で、透け感と花のモチーフにこだわりました。第2弾では、「セシリー バンセン」の色使いを見てほしくて、2023-24年秋冬コレクションともなじむように、同じトーンのピンクとブルーを採用しました。濃淡の異なるピンクをレイヤリングしたり、立体的な花のプリントを施したりし、「アシックス」の世界観の中でもブランドらしさを表現できたと思います。色の重ね方や新たな素材使いに挑戦したため制作は第1弾より難航しましたが、とても満足のいく仕上がりになりました。第3弾の機会があれば、これまでの経験を生かしたいですね。

WWD:第1弾に続き、ホンマタカシとビジュアルを協業したのはなぜ?

バンセン:10代の頃からホンマタカシさんの書籍を集めていたので、また今回も協業できてとてもうれしかったです。コラボシューズのビジュアルは、同じく10代の頃に夢中になっていた97年創刊の原宿ストリートスタイル誌「フルーツ(FRUITS)」から着想を得て、東京の夜の街で撮影しました。あえてピントを合わせないソフトなタッチが気に入っています。

WWD:コラボによって認知度が広がった実感は?

バンセン:グローバルで認知度が広がったと感じます。「アシックス」とのシューズはインラインより手頃な価格帯なので、新たな客層を獲得できました。また、特に日本や韓国でECの売り上げが伸びましたね。個人的には、購入者がそれぞれのスタイルに落とし込んだ着用画像をインスタグラムなどで見られてうれしかったです。

着想源は街中の女の子たち

WWD:「アシックス」や「マッキントッシュ(MACKINTOSH)」との協業が、自身のブランドのモノ作りにどう影響している?

バンセン:コラボを通して、クラフツマンシップや技術面など多くの学びを得ています。インラインでは素材選びをはじめ、協業前にはできなかった表現に挑戦できています。「セシリー バンセン」はドリーミーなドレスなどで知られるフェミニンなブランドですが、そのフェミニンさが、「アシックス」や「マッキントッシュ」のマスキュリンかつユーティリティーなスタイルとのコントラストで際立つのだなという発見もありました。

WWD:ブランド立ち上げから変わらないことは?

バンセン:特別なオケージョンだけでなく、日常で着られるフェミニンな世界観ですね。時代にとらわれないスタイルにもこだわっています。着心地の良さを追求するのは「アシックス」とも共通していること。ただ、コペンハーゲンはとても小さな街なので、作ったコレクションを持って世界中を旅することが重要です。東京でのポップアップのために来日したばかりですが、2週間後にはニューヨークへ行きます。腰を据えて制作し、その後はエキサイティングな旅に出る、というバランスをとっています。

WWD:デザインにおけるこだわりは?

バンセン:テキスタイルやファブリックにこだわっています。スタジオで独自のテキスタイルを作り、着た時のボリュームや動き、着心地の良さを重視しています。ユーザーのスタイリングからインスピレーションを得ることも多く、「セシリー バンセン」のドレスとTシャツやジーンズを組み合わせた街中の女の子たちの着こなしから着想を得て、24年春夏コレクションはデニムやジャージーを取り入れました。

WWD:ブランドの転機は?

バンセン: 17年に「LVMHヤング ファッション デザイナー プライズ(LVMH YOUNG FASHION DESIGNER PRIZE)」のファイナリストに選ばれたことで、知名度が一気に広がりました。フィービー・ファイロ(Phoebe Philo)やカール・ラガーフェルド(Karl Lagerfeld)といった巨匠たちが私たちのコレクションを見て、触って、評価してくれたことが感慨深いです。また、21年春夏シーズンからパリ・ファッション・ウイークに参加したことも大きな転機でした。パリコレに参加することは長年の夢だったんです。

WWD:パリコレに参加して変化したことは?

バンセン:発表の場をコペンハーゲンからパリに移したことで、ブランドの見られ方も変わってきました。パリコレのモチベーションは何より、クチュールやクラフツマンシップへの憧れです。たくさん準備を重ね、完成する一瞬にロマンスを感じるんです。

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